学校裏サイトとは
学校裏サイトとは、学校の公式サイトとは別に、同じ学校に通う生徒たちが立ち上げている非公式のコミュニティサイトです。別名を学校非公式サイトともいいます。
主な目的は、同じ学校に通う生徒同士の交流やテストなどの情報交換ですが、ネットリテラシーが低い生徒も利用しているため無責任な誹謗中傷も多く見受けられます。
また、そもそも愚痴や悪口を書き込むために作成される裏サイトも多く、誹謗中傷やいじめの温床となるケースが後を絶ちません。
学校裏サイトがからんだ事件
学校裏サイトに書き込まれた誹謗中傷が原因で、被害者の生徒が自殺を選択するといった悲しい出来事も起こっています。ここでは、学校裏サイトが関わった事例を一部紹介します。
滝川高校いじめ自殺事件
2007年、兵庫県神戸市の私立滝川高校で、当時3年の男子生徒がいじめを受けたことで自殺した事件です。この事件では、学校裏サイトでの誹謗中傷も関わっており、被害者の人権を侵害するような画像の投稿がされていました。
2007年7月3日、滝川高校3年生であった男子生徒は授業中に「トイレに行く」と申し出て、その直後に校舎から飛び降り自殺しました。その際に、加害者5人を名指しし、金品の恐喝などのいじめを受けたと訴える遺書が残されていました。
学校側は事件発覚後、同級生に聞き取り調査をおこないましたが、金銭の要求や使い走りなどの証言を得たにもかかわらず、「いじめはない」と認定して兵庫県に報告しました。
2007年9月17日、兵庫県警少年捜査課と須磨署は、遺書で名指しされたいじめ加害者の男子生徒1人を恐喝容疑で逮捕しました。学校側は1人目の生徒逮捕を受け、いじめがあったことを一転して認めました。
いじめの内容として、金銭数十万円の要求のほか、被害生徒の裸の写真が「学校裏サイト」に掲載されたこと、髪の毛を無理やりモヒカンにされたことなどが指摘されました。さらに、学校側が生徒の自殺の約1年前からいじめに気づいていたことも明かされました。
茨城県の女子生徒が裏サイトで誹謗中傷された事例
茨城県の高校に入学した女性が、全校生徒の大半が閲覧するという学校裏サイトに中傷を書き込まれ、退学を余儀なくされた事例です。
この女性は2005年に高校へ進学し、入学後間もない頃から学校裏サイトに「消えろよ、虫けら」「調子に乗りすぎ」「めざわり」「やめるの楽しみにしているよ」などの誹謗中傷を書き込まれていました。
また「いい子ぶってると殺すぞ」といった脅迫めいた書き込みまでされるようになり、その恐怖から学校に通うことができなくなったことを明かしています。
女性は学校や警察にも相談するなどの対策を取りましたが、問題の解決に進展はなく、結局は入学した年の6月に、学校を退学することを余儀なくされてしまいました。
学校裏サイトの見つけ方
学校裏サイトは、裏のサイトというだけあってwebで検索しても簡単に見つけることができません。
ほとんどの裏サイトは、部外者が入れないようにパスワードが設定されていたり、携帯電話(フィーチャーホン)からしかアクセスできなかったり(PCからのアクセスはIPアドレスで判断されて拒否される)しているため、Googleなどの一般的なインターネット検索では引っかからないように細工されています。
学校裏サイトチェッカーを使う
学校裏サイトチェッカーとは、株式会社サイブリッジが運営する学校裏サイトの情報ポータルです。有志による情報提供によって学校裏サイトの情報を提供しています。
公立・私立を問わず、ほとんどの小中高学校が掲載対象となっています。調べたい学校が高校であれば、トップページの「高等学校」のタブをクリック。その後、都道府県を選択し、市町村単位にまでエリアを絞って学校を検索します。
もしその学校に裏サイトがあれば、URLとサイト名が表示されます。また、裏サイトチェッカーからのアクセス件数、パスワード認証などの閲覧制限の有無、PC/携帯端末からのアクセスの可否などの情報も合わせて確認できます。
表示画面の下部にある「学校裏サイトを申請する」からは、ユーザーが見つけた裏サイトを申請することもできます。
TwitterなどのSNSで検索
Twitterを学校裏サイトとして悪用しているケースや、裏サイトの入り口としているケースも少なくありません。ハッシュタグをつけて検索すると該当の学校に関するアカウントを発見できる場合があります。
学校裏サイトに書き込みした人に問える責任
学校裏サイトで誹謗中傷された場合、発言の内容によっては書き込みをした人に民事・刑事上の責任が問うことができます。特に、「殺すぞ」といった脅迫文などは犯罪性が高く、警察に捜査を依頼して犯人を逮捕してもらうこともできます。
ここでは、学校裏サイトに書き込みした人に問える責任を解説します。
民事上の責任
学校裏サイトでは実名や住所などの個人情報が晒される事例が多く発生しています。このような発言はプライバシーの侵害に当たるため民事上の責任を問うことができます。
民事でトラブルになった場合は、警察が犯人を逮捕したり、犯人に刑罰を与えることはできませんが、金銭での損害賠償を求めることができます。
刑事上の責任
刑法に規定されている罪の成立要件を満たした場合は刑法上の犯罪が成立します。罪の疑いをかけられた者は警察に逮捕されるおそれがあり、行動の自由が制限されます。
そして、刑事裁判にて有罪判決を受けると、懲役刑や罰金刑などが言い渡されます。さらに、有罪判決を受けた事実は前科として記録されるため、就職活動で不利になるなど、今後の人生に大きな影響が生じます。
ここからは、誹謗中傷で成立する犯罪類型の具体例を見てみていきます。
生命、身体、自由、名誉又は財産に対して、害を加えることを相手に告知し、脅迫した場合に成立します。
例えば、「殺すぞ」や「カツアゲするぞ」などの発言で脅迫し、相手を恐怖させると脅迫罪に問われます。相手を恐怖させたかどうかは客観的にみて判断されます。実際に脅迫された人が恐怖したかは問われません。法定刑は、2年以下の懲役又は30万円以下になります。
公然と事実を摘示し、名誉を傷つけることで他人の社会的評価を下げた場合に成立します。「公然と事実を摘示」とは、特定又は不特定多数の人が認識できる状態で具体性のある事実について言いふらすことです。
例えば、「3年1組の〇〇さんはコンビニで万引きしたことがある」といった発言を学校裏サイトで発言した場合、学校裏サイトを利用している不特定多数のユーザーが見ることができるため、公然と事実を摘示したことになります。また、ここでいう具体的な事実は、真実か嘘かは問われません。
法定刑は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下になります。
具体的な事実を摘示することなく公然と他人を侮辱した場合に成立します。「バカ」、「アホ」などの抽象的な暴言や、「チビ」「デブ」などの身体的特徴に関する暴言を書き込むと侮辱罪に問われます。法定刑は、拘留又は科料です。
名誉毀損罪と侮辱罪の違いは「事実の摘示があるかどうか」です。しかし、どちらも「公然と」との規定があり、不特定多数の人が認識しうる状態で加害者の行為が行われる必要があります。
学校裏サイトの書き込みを削除する方法
学校裏サイトに権利侵害にあたる書き込みをされた場合、それを見た人が情報を拡散するおそれがあります。そのため、不適切な発言があった場合は、被害が拡大しないように書き込みを削除してもらう必要があります。
削除を申し立てる手順は以下の通りです。
該当の書き込みの証拠を保存する
まずはサイトの発言内容をスクリーンショットやプリントアウトして保存しましょう。SNSや掲示板における誹謗中傷は後に訴訟に発展することも多く、その際に証拠があると有利に裁判を進めることができます。
サイトの管理者に削除依頼する
書き込みの証拠を控えたら、次にサイトの管理者に削除依頼しましょう。学校裏サイトに問い合わせフォームが設けられているなら、所定のフォームから削除申請することができます。
削除依頼する際は、手続きがスムーズにできるように、
- 掲示板のURL
- 該当する投稿の文面やスクリーンショット
- 削除を求める理由
などを記載しておきましょう。
連絡先が記載されていない場合は、「whoisドメイン調査ツール」を利用して管理者の情報を調べることができます。サイトのURLやドメインを入力することで、ドメイン所有者の所有者名や所在地、連絡方法等の情報が表示されます。管理者の連絡先を知ることができれば、直接メールすることで削除依頼ができます。
日本国内で「whoisドメイン調査ツール」を提供している会社には、「アグスネット株式会社」、「合資会社アスカネットワークサービス」、「株式会社日本レジストリサービス」の3社があります。
プロバイダに削除を依頼する
運営者に削除依頼しても対応してもらえない場合は、プロバイダ(サイト管理者にインターネット接続サービスを提供している事業者)に削除を求める方法があります。プロバイダに削除依頼するには、はじめに学校裏サイトのプロバイダを検索します。
まず、「Whois Lookup」というサイトで学校裏サイトのドメインを入力し、IPアドレスを入手しましょう。
次に、「IP SEARCH」というサイトで入手したIPアドレスを入力し、プロバイダを検索します。
プロバイダを割り出すことができれば、問い合わせフォームから削除依頼を送信します。その後、プロバイダから「送信防止措置依頼書」が郵送されますので、必要事項を記載して返信しましょう。
裁判所に削除の仮処分を申し立てる
プロバイダが削除に応じない場合は、裁判所に「仮処分」という手続きを申し立てることで削除命令を出してもらうことができます。仮処分とは、正式な裁判をする前に、勝訴したときと同じ状態を確保する手続きです。
誹謗中傷の対処は迅速にする必要があるため、正式な裁判ではすぐに対処することができません。そのため、2週間〜2ヶ月程度の短期間で結論が出る仮処分手続きを利用するのが一般的です。
仮処分の申し立ては個人で行うこともできますが、裁判手続きをするには専門的な知識が必要ですので、大変と感じた場合は弁護士に依頼しましょう。
学校裏サイトの誹謗中傷に対する発信者特定や訴訟について
誹謗中傷を含む書き込みをされたときは、投稿者を訴えることができます。ただし、学校裏サイトは匿名で発言できるため、まずは犯人の身元を特定する必要があります。
犯人を特定するには、プロバイダ責任制限法に規定されている「発信者情報開示請求」という制度を利用します。
開示請求の手順としては、まず、学校裏サイトに対して投稿者のIPアドレス・タイムスタンプ開示請求します。次に、プロバイダに対してIPアドレスを利用している投稿者の氏名や住所などの個人情報を開示請求します。
これらの開示請求は裁判外ですることもできますが、個人情報を取り扱っているため基本的に開示請求は断られます。そのため、開示請求の手続きは原則として裁判上で行います。
また、学校裏サイトに対する開示請求と、プロバイダに対する開示請求は別々に行いますので、最低でも2回の裁判手続きをしなければなりません。
発信者情報開示請求によって投稿者を特定できれば、今まで匿名であった投稿者に対して法的措置を取ることができます。
学校裏サイトへの対策
学校裏サイトは、匿名で書き込みができる上に外部の人に見つかりにくいため、いじめや誹謗中傷の温床になりがちです。放置しておくと深刻な事態に発展するおそれがあるため、未然に対策を講じておきましょう。
具体的な学校裏サイトへの対策方法は以下の通りです。
ITリテラシー教育を行う
学校側や親御さんは、まずは生徒や自分の子どもにSNSや掲示板に関する正しい利用方法を伝えましょう。学校裏サイトを悪用し、同じ学校の生徒を傷つけることで犯罪や大事件に発展するリスクを理解させて、生徒のITリテラシーを養うことが大切です。
誹謗中傷トラブルの被害者になるだけでなく、自分が加害者になる可能性があることや、内容や真偽に関わらず不適切な発言はすぐに拡散されることを伝えておきましょう。
また、生徒が学校裏サイトを見つけたときは、自発的にサイトの情報を教えてほしいことを伝えておきます。教師や親が学校裏サイトの存在を知っているだけで、何かトラブルが起こったときにスムーズに対処することができます。
ペアレンタルコントロールを使う
ペアレンタルコントロールとは、自分の子どもがスマホやパソコンなどの情報通信機器を利用したときに、親が利用状況を監視する取り組みやツールを指します。
ペアレンタルコントロールを導入することで、不適切なWebサイトのアクセスをブロックしたり、利用時間を制限したりすることが可能です。
第三者に相談する
ネット中傷などのトラブルは根本から問題を解決しないと、再度同じような形でトラブルが発生する可能性があります。まずは学校の教師などの第三者に相談し、今後の対応について共に検討しましょう。
また、個人情報が晒されているなどのケースでは、弁護士のような専門家に相談することで法的な対処をすることができます。
さらに悪質な誹謗中傷に関しては警察に相談するのがおすすめです。名誉棄損に当たる場合や、脅迫などの書き込みで身の危険を感じるような場合は、警察署で被害届を出して書き込みの犯人を捜査してもらいましょう。法的措置をするとトラブルの根本を解決できますので、事件の最初を防ぐことができます。
まとめ
学校裏サイトでは、生徒にとって有益な情報が投稿されている反面、不適切な情報も交換されています。また、部外者がweb上で裏サイトを探し当てることは難しく、秘匿性が高いなどの特徴もあります。
しかし、裏サイトを見つけることができれば、管理人に削除依頼することができます。さらに、書き込みをした人物には、民事・刑事責任を問うこともできます。いずれの場合でも弁護士など専門家に相談してすすめるとスムーズに解決できるでしょう。