発信者情報開示請求は自分でできる?方法と流れを解説

発信者情報開示請求は自分でできる?方法と流れを解説

発信者情報開示請求をめぐっては、宝塚歌劇団がSNS上の誹謗中傷に対して、発信者情報開示請求を実施すると発表しました。

先生
このようなケースが増える中、発信者情報開示請求を自分で行うには、大きく分けて、任意の開示請求と裁判上の開示請求を行う方法があります。

執筆・監修者

執筆・監修:豊川祐行

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。 あまた法律事務所へのお問い合わせはこちら

発信者情報開示請求は自分で行うには?

権利侵害を行った発信者を特定するためには、プロバイダ責任制限法(特定電子通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)に基づく、発信者情報開示請求を行う必要があります。

発信者情報開示請求とは?
プロバイダ責任制限法4条に基づき、インターネット上の悪口や事実でない悪質な投稿を行った者に対して、インターネットのプロバイダやサイト運営者、サイト掲示板などに開示を求めることをいいます。

一般的には法律に詳しい弁護士等に依頼して、発信者情報開示請求を行うことが多いですが、費用負担などの経済的な理由で依頼できないような状況であれば、自分で行う必要があります。

そのためには、開示される条件が満たされていることを主張すること(特定電気通信による情報流通、権利侵害の明白性、開示を受けるべき正当理由など)、発信者情報開示請求書の書き方を自分で調べることや発信者情報開示仮処分命令申立など、提出書類を揃えたり裁判所への申立手続きをしたりすることを、すべて自分で行わないといけません

先生
しかし、発信者情報開示請求を行えば、確実に相手を特定できるとは限りません。権利侵害に明確な理由がなければ開示されないこともあります。

発信者情報開示請求を自分で行う簡単な流れ

発信者情報開示請求は、任意の開示請求裁判上の開示請求に分けられます。一般的に任意の開示請求に応じることは少なく、裁判上の開示請求が行われることがほとんどです。

発信者情報開示請求は、サイト管理者等へ開示請求を行ってから、経由プロバイダに開示請求を行います。

サイト管理者等への開示請求

発信者が使用したIPアドレスを通じて経由プロバイダを特定する

経由プロバイダへの開示請求

経由プロバイダから発信者の情報(住所・氏名・電子メールアドレス・IPアドレス、タイムスタンプ、SIMカード識別番号等)を特定する

発信者情報開示仮処分命令申立て

発信者情報開示仮処分命令申立てとは、訴訟手続では時間がかかり、暫定的に一定の行為を実現させるための処分として、民事保全法に規定されています。これにより、簡易・迅速な対応が期待できます。

アクセスログの保存期間が3~6ヶ月であることが多いために仮処分命令申立てをする必要があります。この期間を過ぎると、発信者を特定することが難しくなります。アクセスログの保存期限には、法律上の規定はありません。

民事保全手続きの種類

民事保全手続きは「仮差押え」、「係争物に関する仮処分」、「仮の地位に関する仮処分」に分けられます。

「仮差押え」とは
金銭債権を回収するために、あらかじめ相手の財産処分をすることを防ぐためにする手続きです。
「係争物に関する仮処分」とは
金銭債権以外(動産・不動産)について、あらかじめ処分をすることを防ぐためにする手続きです。処分禁止の仮処分、占有移転禁止の仮処分の2つに分けられます。
「仮の地位を定める仮処分」とは
仮差押と係争物に関する仮処分以外で、債権者に仮の法的な地位を認める手続きです。
発信者情報開示請求仮処分命令申立は、仮の地位を定める仮処分にあたります。

発信者情報開示仮処分命令申立ての流れ

ここからは、発信者情報開示仮処分命令申立ての具体的な流れについて、必要書類や裁判所での手続きの進め方などを詳しく解説します。

発信者情報開示仮処分命令申立てに必要な書類

  • 仮処分命令申立書

 

  • 証拠説明書

 

  • 疎明書類を添付

 

  • 管轄上申書(外国法人がサイト管理者となっている場合)

 

  • 陳述書(外国法人がサイト管理者となっている場合)

 

管轄裁判所に申立書等を提出します。管轄裁判所は、相手方の普通裁判籍(原則として住所地)です。相手方が海外の事業者であった場合は、東京地方裁判所が管轄となっています。不法行為地(問題の投稿を見られる場所)にも認められます。

審理:保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を調べるため、仮の地位を定める仮処分事件では「債権者面接」と「双方審尋」が行われます。

発信者情報開示仮処分命令申立てが認められるためには、被保全権利の存在や、保全の必要性が要件となります。(民事保全法13条1項)

担保:裁判所が仮処分を認めると、担保決定がなされます。申立人は裁判所によって定められた金額の担保金を供託することが求められます(民事保全法14条1項目)。削除請求は30万~50万円、開示請求は10万円~30万円が一般的です。供託金は、基本的に返ってくるお金です。

その後、仮処分命令が発令されると決定正本が交付されます。この仮処分命令の段階で正式な裁判を経なくても開示に応じる場合が多いとされています。

女性
一方、仮処分命令が発令されたことに不服のある者は、保全異議の申立てを行うことができます。

発信者情報開示請求書の書き方

発信者情報開示請求書を作成する際には、以下の項目を記載する必要があります。それぞれの項目について、具体的な記載内容と注意点を解説します。

  • 権利侵害の書き込みがあったとされるURL情報
    発信者情報開示請求では、問題となる書き込みが掲載されているURLを正確に特定する必要があります。ブログやSNSの投稿、掲示板などのURLを記載し、いつどこで投稿されたものなのかを明確にしましょう。
  • どのような権利侵害があったかについての内容
    侵害された権利の種類を明記します。例えば、名誉毀損やプライバシー権侵害、著作権侵害など、具体的にどのような被害を受けたのかを詳細に記述してください。
  • 権利が明らかに侵害されたとする理由
    どのような点が事実と異なるのか、または社会的評価を低下させるものなのかを説明します。例えば、「投稿内容が虚偽であり、読者に誤解を与えている」や「誹謗中傷の言葉が使われており、社会的評価が著しく損なわれた」など、具体的な理由を記載します。
  • 発信者情報の開示を受けるべき正当理由
    発信者情報の開示が必要である理由を説明します。たとえば、「損害賠償請求を行うため」「投稿の削除を求めるため」など、法的な対応を取る目的を明確にします。
  • 開示を請求する発信者情報
    開示を求める情報を具体的に記載します。通常、発信者の氏名、住所、電子メールアドレス、IPアドレス、投稿時のタイムスタンプ、SIMカード識別番号などが対象になります。必要に応じて、どの情報が特に重要なのかを補足するとよいでしょう。
  • 証拠
    発信者情報開示請求を裁判所やプロバイダに認めてもらうためには、証拠が不可欠です。問題となる投稿のスクリーンショット、印刷物、PDFファイル、動画などを添付し、証拠として提出できるよう準備しておきましょう。投稿日時やURLが確認できる形で保存しておくことが重要です。

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テンプレートは「プロバイダ責任制限法 関連情報WEBサイト」からダウンロードが可能です。

発信者情報開示請求を行った後にやること

経由プロバイダに対して発信者情報開示請求訴訟を提起して、発信者の情報(氏名・住所、携帯電話番号など)を特定します。
訴訟では、発信者情報の開示要件が満たされていることを証明する必要があり、証拠資料の提出や主張の整理が求められます。訴訟を進めるには、裁判所からの指示に従い適切な対応を行いながら、必要に応じて追加の書類提出や証人尋問が行われる場合もあります。

書き込みを行った人に届く「発信者情報開示に係る意見照会書」とは?

一方で、書き込みを行った人には、「発信者情報開示に係る意見照会書」というものが届きます。インターネットのプロバイダ(サイト管理者、経由プロバイダなど)から届くことが多いです。

この意見照会書は、プロバイダ責任制限法4条2項に規定され、権利を侵害された方が発信者の個人情報を開示することを希望しており、発信者へ開示をして良いかどうかを確認する書類です。

権利侵害など、身に覚えがない場合には「発信者情報開示に同意しません」の欄に○をつけることもできます。さらに「同意しない理由」の項目も設けられています。

一般的には、到着後2週間以内に提出するように求められることが多いです。期間内に提出できなかった場合でも罰則はありません。

先生
また、権利侵害で開示請求をした者が捜査機関に刑事告訴を行った場合、警察から連絡がくるケースもあります(名誉毀損罪や侮辱罪など)。

発信者情報開示請求の流れまとめ

このように発信者情報開示請求の流れや自分で行う方法について解説しました。自分で開示請求を行うことについては、多大な労力を要し、どのような権利侵害を受けているのかを適切に訴えるには法的知識が必要です。

発信者情報開示請求がスムーズに進まない場合は、インターネットに詳しい弁護士に一度相談するのもひとつの方法です。

執筆・監修者、豊川祐行弁護士

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。

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