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任意整理と個人再生は、いずれも借金の支払条件を決める手続きですが、任意整理が業者と任意で交渉を行う手続きを行うのに対し、個人再生は、裁判所を通す手続きです。

この記事では、任意整理と個人再生の違いや手続きの切り替えの可否について見ていきたいと思います。

1 任意整理と個人再生の違い

任意整理と個人再生は、いずれも債務整理の一つの方法ですが、両者には以下のような違いがあります。

(1)借金を減額できる金額の差

任意整理では、主に、将来利息をカットしてもらえるだけで、元金までカットしてもらうことは原則としてできません。そのため、借金の大幅な減額は見込めません。

しかし、個人再生では、大幅に借金を減額することができる手続きで、残っている借金を概ね5分の1にまで減額することが可能です。このように、任意整理と個人再生とでは、借金を減額できる金額に差があります。

(2)必要となる費用

任意整理は、債権者との交渉が必要となり、また、個人再生は、裁判所を通す手続きであるため、いずれも弁護士などの専門家に依頼することが一般的になっています。

弁護士などの専門家に依頼する場合の弁護士費用についても、任意整理と個人再生とでは以下のように大きな違いがあります。

任意整理の場合、弁護士費用の相場は、債権者1社あたり、着手金が30,000円(税別)~50,000円(税別)、報酬金が10,000円(税別)~50,000円(税別)、過払金があって元金を減額できた場合には、減額報酬が減額に成功した金額の10%程度となっています。このほか、郵便切手代等の実費がかかる事務所もあります。

一方で、個人再生の場合、弁護士費用の相場は、着手金は300,000円(税別)~500,000円(税別)、報酬金が0円~200,000円(税別)となっています。いずれの金額にも幅がありますが、これは、住宅資金特別条項を利用するかどうか、また、再生計画が認可されたかどうかによって、金額が変わる事務所があるからです。

さらに、東京地裁のように、個人再生委員を選任する運用がとられている場合には、個人再生委員への報酬として、上記のほか150,000円~が必要になります。

このように、任意整理と個人再生とでは、弁護士に依頼する場合の費用に大きな差があります。

(3)手続きができる条件

任意整理では3年~5年、個人再生では原則3年という期間で、借金を支払っていくことになります。そのため、いずれの手続きも継続して安定した収入を得られる見込みのあることが条件になりますが、個人再生は裁判所を通す分、この条件を満たすかどうかは、任意整理よりも厳しく判断されます。

また、個人再生では、このほかにも、借金の総額が住宅ローンを除き5,000万円以下であることが条件になっています。

このように、任意整理と個人再生とでは、手続きを行うための条件に違いがあります。

(4)手続きの流れと返済の期間

任意整理と個人再生では、手続きの流れや返済期間にも違いがあります。いずれの手続きも弁護士などの専門家に依頼することが一般的であるため、以下では、弁護士に依頼した場合の手続きの流れと返済期間について見ていきます。

任意整理では、正式に依頼を受けた弁護士は、債権者に対し、受任通知(債務者の代理人として債務整理業務を開始する旨の通知)を送付します。その後、債権者から開示された取引履歴に基づき、引き直し計算を行い、債務額が確定した段階で、債権者と交渉を開始します。

支払条件について、債権者と合意が成立すれば、和解書を締結したうえで、債務者は支払いを開始することになります。返済期間は、3年~5年であることが多いといえますが、債務者の経済的事情などにより、5年を超えることもあります。

一方で、個人再生についても、依頼を受けた弁護士が、各債権者に対し、受任通知を送付しするとともに、申立書をはじめとした必要書類を準備して、裁判所に個人再生を申立てます。問題がなければ、裁判所より再生手続開始決定が出され、その後、個人再生の手続きでもっとも重要とされる「再生計画案(返済計画)」を作成します。

再生計画案について裁判所から認可が下りれば、債務者は再生計画案に沿って支払いを開始します。
返済期間は、3年~5年とされていますが、原則3年ということになります。

このように、任意整理と個人再生とでは、手続きの流れや返済期間にも違いがあります。

(5)デメリットの大きさ

任意整理をすると、ブラックリストに載るため、経済的な信用を失い、一定の期間、新たに借り入れをしたり、クレジットカードを新しく作ることができなくなるというデメリットがあります。

一方で、個人再生についても、ブラックリストに載るというデメリットがあることは任意整理と同じです。ですが、個人再生の場合は、ブラックリストだけでなく、官報といって国の発行する新聞のようなものにも、その旨が掲載されることになります。官報により、個人再生をしたことがバレる可能性は低いといえますが、可能性がゼロではないという意味では、デメリットといえるかもしれません。

また、任意整理のように、整理する対象を自由に選ぶことができないため、保証人がついている借金があると、保証人に迷惑をかけることになるというデメリットがあります。

さらに、直接的なデメリットとはいえませんが、弁護士費用が高額であることや手続き自体が複雑であることも広い意味でデメリットといえるでしょう。

このように、比較的デメリットの少ない任意整理に比べ、個人再生は、裁判所を通す手続きということもあり、デメリットが大きいといえます。

2 どちらの手続きがオススメ?

任意整理と個人再生には、これまで見てきたような違いがありますが、実際にどちらかの手続きを行う場合には、自身が置かれている状況等に照らし合わせて、手続きを選択する必要があります。

(1)任意整理に向いている人

先に見たように、任意整理では、借金を大幅に減額することは基本的にできません。そのため、借金が比較的多い場合には、その借金を支払っていけるだけの収入がないかぎり、任意整理には向いていないといえます。

反対に、借金が比較的少ない場合には、任意整理に向いているということがいえます。

また、保証人がついている借金があり、保証人に迷惑をかけたくないという方には、任意整理が適しているといえます。任意整理では、整理する債権者を自由に選ぶことができるため、保証人がついている借金を整理の対象から外すことで、保証人に迷惑をかけずに済みます。

(2)個人再生に向いている人

個人再生は、任意整理とは違い、借金を大幅に減額することが可能です。そのため、借金が比較的多いものの、収入が安定している場合には、個人再生に向いているといえます。

また、住宅を所有している場合は、個人再生に向いているといえます。個人再生では、住宅資金特別条項を利用することにより、住宅を残したまま、借金を整理することができます。

(3)分からない場合は弁護士へ相談を

任意整理と個人再生は、いずれも借金を支払っていくことを前提とした手続きですが、私的に解決を図る任意整理に比べ、個人再生は裁判所を通す必要があります。そのため、手続きの流れやメリット・デメリットにも大きな違いがあります。

どちらの手続きを選ぶべきかは、手続きの違いやメリット・デメリット、そして、自身の状況等を総合的に考慮して判断する必要があります。比較的簡単に判断できる場合もある反面、難しい判断を強いられるケースもあります。

判断が難しい場合は、誤った選択をしないためにも、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

3 任意整理から個人再生に切り替えはできる?

任意整理において、債権調査をした結果、予想以上に借金が残っていることが判明した場合や減給や失職などにより和解後の支払いが困難になった場合、任意整理から個人再生に手続きを切り替えることはできるのでしょうか?

この点、任意整理から個人再生に手続きを切り替えることは可能です。

具体的には、継続的に安定した収入を得られる見込みがあること、そして、借金が住宅ローンを除いて5000万円以下である場合には、個人再生に手続きを切り替えることができます。もっとも、手続きの切り替えを検討する場合には、注意しなければならない点があります。

(1)切り替える場合の注意点

 個人再生では、借金を大幅に減額することが可能ですが、借金の総額が100万円未満である場合には、減額することはできません。

たとえば、借金総額が90万円である場合には、90万円全額を支払っていかなければなりません。そのため、借金の総額が100万円未満である場合には、個人再生に切り替えたところで、借金が減額されるわけではないため、意味がありません。

また、個人再生に切り替える場合には、きちんと借金を支払っていくことができるかをシミュレーションすることをお勧めします。支払っていけることに確証を持てなければ、自己破産も併せて検討する必要があります。

仮に、再生計画案に沿った支払いが途中でできなくなった場合、任意整理から個人再生への切り替えのように簡単に自己破産に切り替えることはできません。

そのため、個人再生に切り替える際には、自己破産も視野に入れて、慎重に判断する必要があります。

(2)債務整理ははじめの手続き選びが大切

債務整理には、主に、任意整理、個人再生、そして、自己破産という3つの手続きがありますが、他の手続きに切り替えるような事態は可能なかぎり避けたいところです。

そのためには、最初にどの手続きを選ぶかということが非常に重要になってきます。自身の借金や財産、そして、収支状況などを総合的に考慮したうえで、もっとも適した手続きを選ぶことが大切です。

とはいえ、適した手続きを選択するためには、自身の状況を正確に見極めるだけでなく、債務整理の各手続きの特徴等を十分に理解していることが求められます。最初の選択を誤らないためにも、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

4 まとめ

今回見てきたように、任意整理により解決を図ることが困難になった場合は、個人再生に切り替えることが可能です。とはいえ、手続きを切り替えるためには、そこに一定の時間と手間がかかりますので、あまりお勧めできることではありません。

債務整理をする場合には、はじめにどの手続きを選ぶかということが非常に大切です。そのためには、各手続きの違いやメリット・デメリットなどを自身の状況と照らし合わせたうえで、結論を出す必要があります。

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