名誉毀損罪と侮辱罪はどちらも誹謗中傷した犯人に適用される犯罪です。混同されいやすい罪ですが、実際は違いがあります。


2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。
▶︎柔軟な料金設定
・初回相談【無料】
・ご相談内容によっては【着手金無料】
▶︎いつでもご相談いただけます
・【土日・祝日】ご相談OK
・【夜間】ご相談OK
・【即日】ご相談OK
1.交通事故の無料相談窓口
tel:0120-651-316
2.債務整理の無料相談窓口
tel:0120-783-748
3.総合お問い合わせページはこちら
この記事の目次
名誉毀損罪が成立する要件
名誉毀損罪は刑法230条に定められた犯罪です。他人の名誉を貶める発言や適用され、インターネット上の書き込みが名誉毀損罪に当たるケースが増加しています。
成立する要件
名誉毀損には3つの要件が存在しており、全てあてはまると成立します。
1つ目の成立要件は「大勢の人の前で具体的な内容を提示して相手の評価を落とすような発言をすること」です。
「公然」は特定又は不特定多数の人が見たり聞いたりできる状況です。
名誉毀損の成立には大勢の人の前で相手の悪口を言う、誰でも閲覧できるネットの匿名掲示板やSNSに誹謗中傷の書き込みをするといった行為は公然性に該当します。密室で相手にだけ聞こえる状態で発言したケースや相手のみが確認できるSNSのDMなどは公然とはみなされず、名誉毀損罪は成立しない可能性が高いです。
会員制のネット掲示板や特定のユーザーを対象にした鍵アカウントは閲覧できる人数が少ないと思われますが、複数の誰かが見聞きできる状態での誹謗中傷であれば成立すると考えられます。
「事実の摘示」は具体的な事柄を述べることです。事実は通常、実際にあった出来事を指しますが、ここでは具体的な事柄という意味で使われます。日常生活で使用する事実と少し意味が異なるのは注意点と言えるでしょう。

名誉毀損が成立する2つ目の要件は他人の名誉を毀損しているかです。
「名誉」は外部的名誉を指し、周囲からの社会的な評価を意味しています。名誉感情ではないため、相手がプライドや自尊心がないと思われる子どもや赤ちゃん、感情をもたない商店や企業などの法人であっても対象になります。
また、「人」は特定の誰かであり、日本人や○○県民のような大きなくくりは特定の人とは見なされず適用されません。
名誉毀損罪の成立要件3つ目は摘示される事実の有無にかかわらないとされています。
名誉毀損罪が適用される「事実」は具体的な事柄であり、実際にあった出来事とは限りません。真実ではない嘘でも具体的な内容なら事実と判断されます。
例えば、「○○は過去に犯罪者として刑務所に入っていたことがある」と言ったとき、本当に犯罪者の場合はもちろんですが、真実ではなくても相手の評価を侵害につながれば「事実」になります。
成立しない要件
名誉毀損は成立要件を満たしていても、罪に問われない例外が存在しています。以下3つのうち、いずれかを満たすケースです。
摘示した事実が「公共の利害」に関する事柄は、真実であれば罪にはなりません。公共の利害は一般の人々が関心を寄せるのが妥当と考えられる事柄です。
例えば、新聞やテレビのニュースが犯罪の容疑者を実名で報道しても名誉毀損で訴えられないのは、多くの人が注目する事件であり公共の利害に関するとみなされるからです。

2つ目は「公益」を目的としていることです。公益は社会全般や公共の利益を意味します。
たとえば、過去にオーナーが掲載されたのは名誉毀損に当たるとして、インターネット上にある事故物件の公示サイトを訴えたことがありました。しかし、この訴えは裁判所に棄却され、慰謝料の支払いといったオーナー側の主張は認められませんでした。
ネット上のサイトは不特定多数の人が閲覧でき、事故物件と知られれば物件の価値が低下し名誉毀損に該当するように思われます。しかし、事故物件の購入や賃貸を避けたいと考えている人は多いと考えられます。正しい情報をもとにした不動産取引に繋がり、社会全体の利益、すなわち公益を守ると判断されたのです。
同様に、公共の利害にあてはまるマスコミの報道や口コミサイトへの投稿などは、公益の追求にも該当していると言えます。
3つ目は名誉毀損の相手がすでに亡くなっている場合です。名誉毀損罪が該当するのは、虚偽の事実を摘示したのみです。摘示した事実が真実であれば、名誉毀損罪にはなりません。
亡くなっている人は自ら名誉毀損罪だと訴えることはできませんので、親族が告訴することになります。
名誉毀損罪の責任
名誉毀損罪は刑事と民事の2種類があり、それぞれ別々に責任を問われることになります。
刑事裁判で有罪が確定すると3年以下の懲役もしくは禁錮(労務作業のない拘留)または50万円以下の罰金に処せられます。
名誉毀損罪は「親告罪」に分類される罪に当たります。親告罪は被害者の告訴がなければ公訴できない犯罪です。そのため、被害者が訴え出ない限り警察の捜査や犯人を起訴は行われません。名誉毀損で加害者に刑事上の責任をとらせるためには、警察に告訴状を提出し相手を告訴する必要があります。
親告罪に分類されるのは被害者の訴えがなければわざわざ処罰する必要がないと考えられる軽微な犯罪や、名誉毀損罪や侮辱罪のように捜査すると被害者のプライバシーが侵害され被害者が不利益を被るリスクがある犯罪などです。よって、名誉毀損が行われても被害者の訴えがなければ加害者は罪に問われることはないことになります。
民事上では被害者は加害者に対し不法行為での慰謝料など損害賠償を請求できます。慰謝料の相場は被害者が個人なら10万~50万円、商店や企業などの場合は50万~100万円程度です。
ただし、発言や書き込みの内容が卑劣である、何度も行為を繰り返すなど悪質性が高いと判断されれば、慰謝料は高額になる可能性があります。被害者が個人でも100万円を超える賠償金の支払い命令が下された判決はあります。
名誉毀損罪が成立した事例
実際に名誉毀損罪が成立した事件の事例を紹介します。
福島県郡山市のあるラーメン店に客の男性がSNSで「自家製スープと言いながら業務用スープを使っている」といった書き込みを繰り返した事件です。
2019年7月、店側は男性の投稿を誹謗中傷として裁判に訴えました。郡山簡易裁判所は名誉毀損に当たるとして、男性に11万円の損害賠償支払いを命じる判決を出しました。
2017年、インターネット掲示板で他人の名前や画像を無断で使用したプロフィールを作り別人になりすましていたとして、長野県在住の被害者が大阪府在住の加害者男性を訴えた事件です。
加害者はなりすましアカウントを使い匿名の掲示板に「お前の性格の醜さは、みなが知った事だろう」など他のユーザーを侮辱する書き込みを行っていました。
大阪地裁は加害者が被害者の肖像権や名誉権を侵害したとして、損害賠償130万円の支払いを求める判決を出しています。
2017年、神奈川県内の東名高速道路で起きたあおり運転による事故に関し、北九州市にあるまったく無関係の会社を容疑者の勤務先と思わせるような書き込みをしたとして埼玉県の男性が名誉毀損に問われた事件です。この書き込みがもとで、被害に遭った会社では苦情や無言電話が相次ぎ一時休業に追い込まれました。
加害者男性の書き込みはネットの掲示板で犯人の親が建設会社の社長をしているという話題になった際、「これ?違うかな」と関係のない会社の住所などが載ったURLを投稿しています。裁判で加害者側は「疑問符をつけており確認を求めるための投稿で名誉毀損には当たらない」と主張しましたが認められませんでした。
裁判では加害者に対し罰金30万円の判決が出されています。
侮辱罪が成立する要件
侮辱罪は刑法231条に定められた罪で、他人を侮辱する発言やインターネット上での書き込みに適用されます。
成立する要件
侮辱罪が成立する要件は公然と人を侮辱した場合と定められています。
侮辱は相手を馬鹿にする辱めるといった意味があり、具体的には「バカ」「死ね」「きもい」「ブス」などの悪口が該当します。

成立しない要件
侮辱罪は1対1など他人に聞かれる恐れがない場所での発言は公然性がないため該当しません。また、内容に具体性があれば侮辱罪ではなく、名誉毀損など別の罪に該当する場合もあります。
侮辱罪の責任
侮辱罪は刑事上・民事上2種類の責任が発生します。
侮辱罪の罰則は1年以下の懲役もしくは禁錮、30万円以下の罰金もしくは30日未満の拘留もしくは1万円未満の科料です。
親告罪のため犯人の罪を問いたいなら被害者の告訴が必要です。
・参考:法務省「侮辱罪の法定刑の引上げ」
侮辱罪の被害を受けた人は加害者を民事裁判で訴えられます。損害賠償・慰謝料の相場は10万円程度です。
実際の事例
実際に侮辱罪が成立した事件の事例を紹介します。
2020年、女子プロレスラーの木村花さんがテレビ番組での発言によりネット上で誹謗中傷の被害に遭い、自殺に追い込まれた事件です。誹謗中傷が社会的な関心を集めるきっかけになった事件でもあります。
Twitterに「いつ死ぬの?」「性格悪いし、生きてる価値あるの」などの書き込みを行った大阪府の男性が起訴され、侮辱罪で科料9000円の判決が出されました。「死ね」「性格悪い」「生きている価値がない」といった具体性のない悪口に当たる言葉だったため、侮辱罪が適用されたとみられます。
名誉毀損罪と侮辱罪の違い
名誉毀損罪と侮辱罪は厳密には違いがあります。
「事実を摘示」しているか
名誉毀損罪と侮辱罪の大きな違いは「事実を摘示」しているかです。
名誉毀損の成立には「○○は以前に犯罪をおかして刑務所に入っていたことがある」「○○は上司と不倫している」「あのラーメン店は自家製スープと言いながら業務用スープを使っている」など必ず具体的な事実が必要になります。
「バカ」「ブス」「死ね」といった単なる悪口は侮辱罪に該当します。悪口は具体的な判断基準がない抽象的な言葉のため、事実を摘示しているとはいえません。

慰謝料の相場の違い
名誉毀損と侮辱罪の違いとして、民事事件として請求できる慰謝料の金額があります。
名誉毀損の慰謝料相場は数十万円から高いと100万円以上になるケースがありますが、侮辱罪だと10万円程度になってしまいます。侮辱罪は名誉毀損のような高額請求が認められた判例はほとんどありません。侮辱罪は事実を摘示しないため、名誉毀損罪に比べると比較的軽い罪と判断できるためです。
名誉毀損罪や侮辱罪として訴えられたときの対処法
過去の発言やネット上の書き込みで傷つけられた被害者から訴えられた時の対処法を解説します。
逮捕される可能性がある
被害者が犯人を告訴すれば警察の捜査が始まり、犯人が誰なのか特定され逮捕される可能性があります。
起訴され刑事裁判で有罪になると、懲役や罰金など刑罰に処せられます。有罪判決を受けると犯罪者として前科が付いてしまいますので、就職など今後の生活に影響を与えるリスクが生じるでしょう。また、民事上で損害賠償金を請求され裁判に負けると、慰謝料などの支払い義務が発生します。
示談交渉する
誹謗中傷が原因で相手方に訴えられた際、有効なのは示談です。
裁判で相手と争うこともできますが、実際に悪口を言っていれば負ける可能性が高くおすすめではありません。和解とも言われる示談は当事者同士の話し合いで紛争を解決する方法です。
相手に誠心誠意謝罪し示談金を支払うことで「民事での裁判を起こさない」「告訴を取り下げる」「事件を家族や職場の人など第三者に話さない」といった条件を付けることができます。
2つの罪はどちらも親告罪のため、早期に示談交渉で和解できれば警察の逮捕を免れます。
弁護士に相談する
相手方との示談交渉は弁護士に一任するのがおすすめです。法律の知識を持たない一般の人が示談交渉を進めるのは難しく、自分1人では上手く行かないと思われます。
また、民事や刑事で訴えられたり、警察に逮捕されたる恐れがあるときは、弁護士は適正な対処法を指南してくれます。ケースごとに合わせたアドバイスをもらえますので、精神的な負担を減らせるのもメリットです。

まとめ
名誉毀損罪と侮辱罪は誹謗中傷に適用されることが多く、「事実を摘示している内容か」でどちらの罪になるかが判断されます。罪が成立すると、刑事上では刑罰の対象、民事上では慰謝料を含む損害賠償金の請求対象になります。
双方の示談により裁判を回避することはできますが、法律上の知識が必要になり個人で対処するのは難しいのが現状です。自分が誹謗中傷した覚えがある、または誰かに誹謗中傷されているのであれば、名誉毀損罪や侮辱罪になるか弁護士に判断してもらいましょう。そして適切な対処をしてください。
初回の相談や着手金無料サービスを実施している弁護士事務所なら、費用を気にせずに相談できます。

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。
▶︎柔軟な料金設定
・初回相談【無料】
・ご相談内容によっては【着手金無料】
▶︎いつでもご相談いただけます
・【土日・祝日】ご相談OK
・【夜間】ご相談OK
・【即日】ご相談OK
1.交通事故の無料相談窓口
tel:0120-651-316
2.債務整理の無料相談窓口
tel:0120-783-748
3.総合お問い合わせページはこちら