ネットの掲示板やSNSなどで誹謗中傷を受けた場合、どこに相談すればよいか分からない方が多いと思います。
誹謗中傷を受けたのに、そのまま放置してしまうことは精神的に良いことではありません。信頼のおける機関で相談することが問題解決につながります。
誹謗中傷を受けた場合の相談先
ネットの掲示板やSNSなどで誹謗中傷を受けた際の相談先として、下記の3つが挙げられます。
- 国の相談窓口
- 民間の相談窓口
- 法律事務所や弁護士の相談窓口
それぞれの特徴、利用に際してのメリット・デメリットについて詳細を確認していきましょう。
国の相談窓口
まず代表的な相談場所として「国の窓口」が挙げられます。官公庁や警察、地方自治体、公共団体など、国や公共団体が設けている窓口で誹謗中傷被害の相談を行うことが可能です。
国の相談窓口を利用するメリットとして「無料で相談できる」点が挙げられます。相談に際して料金を支払う必要がないので、経済的な心配をせずに利用できる点が強みです。
誹謗中傷が悪質であったり、ストーカーや傷害事件に発展する可能性が高い場合は、警察に相談することをおすすめします。官公庁や地方自治体、公共団体の場合は、誹謗中傷で相手を訴えるというよりも、自身の精神をケアしてもらう色が強いです。
実際に誹謗中傷で相手を訴えるとなると、刑事性や犯罪性を証明していくことになるので、官公庁・地方自治体では対応してもらえないケースが大半です。最終的に警察への相談に移ったり、後述する弁護士事務所への相談に至ることが多いですね。
民間の相談窓口
企業や法人など、民間の相談窓口を利用するの一つの手です。利用している掲示板やSNSの運営会社に直接相談することで、相手方のアカウントを凍結してくれたり、各種調査を請け負ってくれることがあります。相手のアカウントが無くなれば、誹謗中傷に悩まされることなくサービスを継続して利用できますね。
ただし、国の相談窓口と同様に法的手続きに移って相手を訴える場合は、法律事務所や弁護士に相談する必要があります。民間企業が被害者に代わって相手方を訴えるのは極めて稀なケースです。
法律事務所や弁護士の相談窓口
誹謗中傷をした相手を訴えたい場合は、法律事務所・弁護士に依頼するのがおすすめです。
法律事務所・弁護士は誹謗中傷の訴訟手続きや内容に関して熟知しています。相手を訴えるに値する誹謗中傷なのかも判断してくれるので、現実味のある対応を進めていくことが可能です。
誹謗中傷で訴えることが前提の場合は、国や民間の窓口を利用せずに初めから法律事務所・弁護士に相談することをおすすめします。国・民間の窓口に相談したとしても、実際に訴訟に入る場合は法律事務所・弁護士に依頼し直すことになります。
訴訟に移るまで余計な時間をかけてしまうので、初めらから誹謗中傷で訴えたい場合は法律事務所・弁護士を利用するようにしましょう。
誹謗中傷の相談のみの場合は、法律事務所・弁護士も無料としているところが多いですが、中には相談料を設けているところもあります。
匿名の加害者を訴えるために準備すること
ネット上の誹謗中傷は、大半が「匿名」で行われています。匿名であるがために、ユーザーが容易に他の人へ誹謗中傷を加えてしまうと考えられますね。
匿名だと相手を訴えられないと考えてしまっている方が多いですが、実は匿名の誹謗中傷でも相手を訴えることは可能です。
最近では、芸能人やYouTuberの方が実際に誹謗中傷を行った加害者に対して訴訟を起こしているケースが見られます。「匿名だからバレはしない」と考えている人たちが、誹謗中傷で訴えられることはもはや珍しいことではありません。もちろん、有名人でなくても誹謗中傷をしてきた相手を訴えることが可能です。
匿名の相手を誹謗中傷で訴える際は、大まかに下記の流れに従って手続きをとっていきます。
- 誹謗中傷コメントなどの削除依頼
- 裁判所を通じた発信者の情報開示請求
- 損害賠償請求
それぞれ詳細を確認していきましょう。
①誹謗中傷コメントなどの削除依頼
最初にとる手続きは、掲示板やSNSに投稿された誹謗中傷コメントの削除依頼です。
コンテンツプロバイダ(インターネット掲示板などのサイト運営者等)に要求することで、誹謗中傷コメントを削除してもらうことができる場合があります。
誹謗中傷コメントが悪質であると判断された場合、サイト運営者が誹謗中傷コメントを行った加害者の特定情報(IPアドレス)を開示してくれることがあります。IPアドレスは、ネット上の住所のようなものです。IPアドレスからプロバイダを特定することで、プロバイダ会社に個人情報の開示請求を行うことができます。
また、訴訟では誹謗中傷を受けた証拠を提示する必要があります。誹謗中傷のコメントが表示された画面の保存を忘れずに行うようにしましょう。
②裁判所を通じた発信者の情報開示請求
サイト運営者が加害者のIPアドレスの開示に応じてくれない場合は、サイト運営者に対し、発信者情報の開示の仮処分を裁判所へ申し立てます。
サイト運営者も、ユーザーの個人情報を守る義務があるため、開示請求者の要望に100%応じてくれるとは限りません。
③損害賠償請求
誹謗中傷の加害者の身元が特定できたら、内容証明や裁判を通じて加害者に損害賠償請求を行っていきます。損害賠償請求(慰謝料)の相場は、誹謗中傷の内容によって異なってきます。大まかな相場は下記の通りです。
- 名誉棄損(個人):10~50万円
- 名誉棄損(企業):50~100万円
- 侮辱:10万円程度
- プライバシー侵害:10~50万円
- 名誉棄損罪:「事実を適示して」第三者の評判を落とす誹謗中傷
- 侮辱罪:「事実を適示しないで」第三者の評判を落とす誹謗中傷
- プライバシー侵害:「公共の場で公開を望んでいない」個人情報・私生活の情報の暴露
プライバシー侵害に当たるかは、以下の3つの要件で判断されます。
- 私生活上の事実、または事実であると認識される可能性があること
- 一般の人の感受性を基準にして、その本人の立場に立った場合に公開して欲しくないであろうと認められること
- 一般の人々に未だ知られていない事柄であること
加害者が損賠賠償請求に対して素直に応じてくれた場合は、訴訟手続きには進まず示談で済むこともあります。ただ、加害者が誹謗中傷を否定したり、賠償金額に不服な態度を示した場合は、裁判を通じて損害賠償の有無・金額が決定されます。
また、損害賠償請求に加えて、加害者への刑事罰も望む場合は警察への告訴も合わせて行うことになります。
誹謗中傷を行った加害者に対して科される刑事罰は下記の通りです。
- 名誉棄損罪:3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金
- 侮辱罪:拘留(1日以上30日未満刑事施設拘置)または科料(1,000円以上1万円未満の罰金)
- プライバシー侵害:プライバシー侵害としては処罰されず ※ただし、他の法令に触れた場合にはそれによって処罰される可能性はあります
例えば、プライバシー侵害であるとともに、名誉棄損罪にも当たり得るのであれば、名誉棄損罪で処罰される可能性はあります.
発信者情報開示請求や訴訟のために必要な費用
誹謗中傷で訴える際には、発信者情報開示請求を行ったり、訴訟の準備を行わなくてはいけません。弁護士など専門家に依頼する際の費用もかかってきます。誹謗中傷の訴訟手続きで発生するおおまか費用の内訳は下記の通りです。
加害者の情報を特定するために、合計60万円~100万円ほどの費用が発生していきます。
損害賠償請求を行うまで、費用は被害者側の自己負担です。決して安い金額ではないため、損害賠償請求をしたくても経済的に行うのが難しいこともしばしばです。
まとめ
ネット上で誹謗中傷を受けた場合、匿名の相手でも訴えることが可能です。サイト運営者に情報開示をしてもらうことで、加害者の情報を特定することができます。サイト運営者が情報開示に応じてくれない場合でも、裁判所を通して命令を出してもらうことで確実に加害者の情報を手に入れることができます。
誹謗中傷の加害者を訴える際は、弁護士など法律のプロに依頼することをおすすめします。自分で情報開示請求や裁判の手続きを行うとなると、書類作成や手続きに時間がかかってしまい、実際に訴訟を行うまでたどり着けないこともあります。迅速に損害賠償請求を進めるためにも、法律のプロの力を借りるようにしましょう。
弁護士費用を一括で支払えない場合は、分割払いに応じてくれる弁護士・法律事務所に依頼することをおすすめします。都心部には分割払いに応じてくれる事務所が多数ありますので、ぜひ活用してみてください。