Twitterは匿名で手軽に投稿できる分、トラブルが起こりやすくなっています。もしTwitterで誹謗中傷の被害に遭ってしまった場合、どうすればいいのでしょうか。
ツイッターでの誹謗中傷の特徴
ネット上での誹謗中傷のなかでは、他のSNSと比べてTwitterでのトラブルがよく目にされやすい傾向にあります。理由には、以下のものが上げられます。
1、気軽に発言できるので誹謗中傷が起こりやすい
Twitterにおける誹謗中傷は、匿名で利用できるため発言もしやすく、それだけに気軽に他人を傷つける書き込みをしてしまう傾向があります。
一人でいくつもアカウントを作れるため、複数アカウントをもっているユーザーもいて、なかには、自分が普段使うアカウントの他に、捨てアカウントを作り他人を攻撃するために使用する人もいます。
2、リツイートで投稿が拡散しやすい
Twitterはユーザー数が多く、投稿を拡散できる機能もあるため、ツイートが広まりやすく、一度広まったツイートが消しにくくなっています。
日本のSNS普及率は年々増加しており、2020年度末で約8000万人となっています。Twitter利用者はその中で38.5%を占めており、約3080万人のユーザーがいる計算になります。約4割と聞くと少なく感じるかもしれませんが、10代・20代では利用率が7割となっていて、SNS利用率の高い世代で多く利用されています。
ユーザー総数が多いことに加え、Twitterにはリツイート機能があるため、投稿が拡散しやすく、悪意あるツイートに第三者が便乗して悪口が連鎖していくこともあります。
3、一度ツイートすると削除が難しい
Twitterにおける誹謗中傷は、元のツイートを削除しても拡散されたものが残ってしまうため、一度ツイートしてしまうと完全に消去するのが難しくなります。
twitterで誹謗中傷された例と問われた罪
ここでは、実際にTwitterであった誹謗中傷の実例と加害者がどのような罪に問われたかを紹介します。
女子プロレスラー誹謗中傷事件 侮辱罪
女子プロレスラーの木村花さんがテレビ番組での発言をきっかけにSNS上で誹謗中傷を受け、自殺に追い込まれた事件です。
この事件では、遺族からの告訴により、Twitterに「死ね」や「きもい」「性格悪い」といった投稿を行った複数人が侮辱罪で書類送検されています。
なかには、「同じような誹謗中傷が多く投稿されていたので自分も投稿した」と話している容疑者もおり、Twitterでは軽い気持ちの投稿が重大な事件に結びつくケースがあることがわかります。
女性ライター誹謗中傷事件 名誉毀損罪
女性ライターが政治問題に関してツイートしたのをきっかけにTwitter上で「淫売」「研究費を着服している」「旦那は強姦魔」など誹謗中傷のツイートを受けるようになった事件です。
被害者は情報開示請求によって本人を特定し、名誉棄損事件として裁判を起こしました。判決では、被害者側の主張が全面的に認められ、投稿者に対して約264万円の支払いが命じられています。
リツイートによる名誉毀損事件 名誉毀損罪
元大阪府知事の橋下徹氏がフリージャーナリスト岩上安身氏のリツイートで名誉を傷つけられたとする裁判で、2020年6月、大阪高裁は名誉毀損を認め33万円の支払いを命じた大阪地裁の判決を支持し、公訴を棄却しました。
ツイッターの運用ポリシー
Twitter社では、ユーザーが安心して利用できるようにツイートに関するルールを設けており、投稿だけでなくDMやプロフィール欄に関しても適用されます。
Twitterが定めている禁止事項には以下のものがあります。
・個人情報の公開: 他のユーザーの個人情報(自宅の電話番号や住所など)を許可なく公開する投稿。 ・著作権侵害: 著作権および商標権、知的財産権などを侵害する投稿。 ・なりすまし: 他のユーザーになりすましてツイートを行うこと。 ・合成または操作されたメディア(ディープフェイクやチープフェイクなど): 他のユーザーを欺くことを目的に、意図的な改竄・捏造などの操作が行われた情報の投稿。 ・暴力: 特定の個人や集団に対して暴力や脅迫をほのめかすものや暴力を賛美するツイート。 ・テロ行為: テロ行為を助長したり、ほのめかす投稿。 ・ヘイト行為: 特定の人種や民族、性別などに対して差別や暴力を助長するツイート。 ・自殺、自傷行為: 自殺や自傷行為の助長や扇動。 ・成人向けコンテンツや暴力描写: アダルトコンテンツや暴力描写、過度にグロテスクな内容は、見たくない人の目に触れることをなくすため、ツイートだけでなくプロフィール画像やライブ放送でも投稿が禁じられています。ツイッターで安易な拡散を防ぐための取り組み
Twitterは悪意ある投稿が簡単に拡散される状況を問題視しており、安易なリツイートを防ぐ仕組みを取り入れています。
2020年からの仕様変更で、URLが付いたツイートをリツイートする場合に「まずは記事を読んでみませんか?」という警告文が出てくるようになりました。この警告文は、一度目は大きく表示され、二度目以降も小さく表示されるようになっています。
2016年に行われたコロンビア大学とフランス国立研究所による調査では、Twitterユーザーの実に59%がURL付きのツイートをリツイートするとき、もとの記事をクリックしていないという結果が出ており、新機能はこれを防止するためのものです。
2020年9月から一部のユーザーを対象にテストが行われ、警告文をみた後で実際に元記事を確認するユーザーは40%増加し、リツイートする前に元記事を見るユーザーも33%増加する結果が出ています。今後は追加機能が本格的に全ユーザーに導入される予定です。
2020年8月からはツイートに対する返信(リプライ)の範囲を制限する新機能も公開され、悪意あるユーザーから寄せられる、いわゆる「クソリプ」を防止できるようになりました。
Twitterでは今後もこうした悪意あるツイートを防止する機能が実装されていくと考えられます。
ツイッターでの誹謗中傷を削除するには?
Twitterで誹謗中傷を受けた場合に、Twitter公式ホームページのヘルプセンターから削除依頼を行う方法を解説します。
なお、投稿者に直接削除を依頼するのは、ツイートの削除に結びつかないだけでなく、トラブルをさらに大きくする可能性があるため避けたほうがよいでしょう。
1、ヘルプページのお問い合わせから「すべてのサポートトピックを表示」を選択し、違反報告の項目にある「嫌がらせ」を選びます。報告したい投稿が個人情報に関わるものである場合は「個人情報」を選びます。
2、より詳しい報告をするページに移動するので、何についての報告か、誰が迷惑行為を受けているか回答します。
3、違反報告フォームが出てくるので、自分のアカウントと相手のアカウント、依頼するツイートを記入します。ツイートが複数の場合は「別のリンクを追加」をクリックすると新しい記入欄が出てきます。
4、記入を終えたら、メールアドレスと電子署名を記入のうえ送信します。違反報告はTwitter社のサポートデスクへと送られ、Twitterの運用ポリシーに反するものかどうか判断されます。
削除依頼が通った場合
削除依頼がTwitter社に認められると、ツイートの削除や表示制限、違反したツイートを非表示にするといった措置がとられます。
該当のツイートは「このツイートはTwitterルールに違反したため表示できません」といった警告文が表示され、一般のユーザーからは見られなくなります。
削除依頼が通らなかった場合
Twitterが問題のツイートをルール違反ではないと判断した場合は、削除依頼は通らず、ツイートは削除も表示制限もされることなく、今まで通り公開されます。
また、認められるか否かに関わらず、依頼を出してから実際の措置がとられるまでに時間がかかることもあります。
こうした場合、法的手段による削除を検討する必要があります。該当の投稿が法律に違反していれば、裁判手続きにより削除が可能です。
削除依頼は、被害者本人または被害者が代理を依頼した弁護士のみが行えます。裁判手続きは、自分で行うこともできますが、法律の知識に乏しいと難しいことも出てきますし、本当に問題のツイートが法律に違反しているかの線引きは個人で判断できないこともあります。
もし投稿が法律違反でない場合、裁判所に訴えても削除することはできません。
ツイッターでの誹謗中傷の加害者を特定するには?
Twitterでの誹謗中傷に対しては、発信者情報開示請求によって加害者を特定したうえで、民事訴訟により慰謝料・損害賠償請求を行うことができます。
発信者情報開示請求とは、個人の権利が侵害された場合に、プロバイダ責任制限法第4条に基づき、プロバイダに対して投稿者の氏名・住所といった個人情報の開示を請求する手続きです。
請求を行うと、投稿者にプロバイダより情報を開示していいかを問う通知が送られます。投稿者が了承すれば情報が開示されますが、拒否した場合は裁判手続きにより開示を行うことになります。
開示請求を行うには、プロバイダを特定するためにTwitterに投稿者のIPアドレスを開示してもらう必要がありますし、プロバイダのアクセス記録にも保存期間があるため、こちらも削除されないよう仮処分を申請する必要があります。
開示請求は仕組みや手続きが複雑で、個人では判断できないことや、法的な知識や経験がないと難しいことが多いため、こちらについても、検討される場合は事前に弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
Twitterでの誹謗中傷はTwitterのルールに反するものなら、削除依頼で削除してもらうことができます。しかし、時間がかかったり、削除が認められないケースもあるため、法的手続きが必要になるケースもあります。
情報開示や裁判は専門的な知識・ノウハウが必要なため、個人で行うのが難しいと感じたら、弁護士の力を借りるようにしましょう。
ネットでの誹謗中傷問題に詳しい弁護士なら、経験も豊富ですので、強い味方になってくれるはずです。