全ての労働者に関わる身近な問題が労働問題です。
不当解雇や未払い残業などの問題に加えて、パワハラやセクハラなどの問題が急激に増えています。この記事では相談件数が多い労働問題と主な実例などを挙げて解説したものです。
労働問題の種類と実例
ここでは、相談件数の多い労働問題の種類と実例を紹介します。
不当解雇
労働者を解雇するためには、解雇される理由と条件そして正当な手続きが必要になります。不当解雇というのは、正当な理由がないのに一方的に経営側から解雇を言い渡されるケースです。
不当解雇の実例
Aさんは中小企業に勤める勤続30年のベテラン社員でした。5年前に社長と仲のいい社員BさんがAさんと同じ部署に配属されたのですが、Aさんとはそりが合わないタイプの人物でした。
BさんからAさんの悪い噂などを流されて、会社にいずらくなったAさんですが、なんとか我慢して仕事を続けていました。
嫌がらせに屈しないAさんに対して、BさんはAさんの素行不良をでっちあげて社長に報告したところBさんの言い分を信じた社長はAさんを突然、懲戒解雇処分にしてしまいました。
中小企業などでは、社長の一存で解雇を言い渡される事例が少なくありませんが、正式な解雇の手続きを踏んでいない場合や解雇の理由が正当でない場合は解雇を撤回させたり、慰謝料を請求することも可能です。解雇無効となれば、働けなかった期間の賃金を請求することもできます。
残業代未払い問題
労働時間を超えて仕事をしたり、休日出勤をしたにも関わらず残業代が支払われない残業代未払い問題も相談件数の多い事例になります。
残業代未払いの実例
Cさんの会社は人員不足のため、普段から毎日3時間程度の残業が当然のような状態になっていました。年末の繁忙期は普段よりも仕事量が多く、毎日5時間を超える残業に加え休日も出勤しなければ仕事が回らない状態になっていました。
さすがに度を超えた残業時間に対して残業代を請求したのですが、会社から残業を指令したわけではなく自分の判断で行っていたものなので支払うことができないと言われてしまいました。
労基署に相談を考えましたが、タイムカードなどが無いため証拠を提示することができず残業代を請求するのは諦めようかと思っていました。
会社は労働者側(労働者代表者または労働組合)が36協定を結んでいる場合は、協定で定められた時間について労働者に残業を命令することができます。ただし、36協定は残業をさせることが適法になるだけで残業代は支払わなければなりません。
会社側は、従業員が勝手に残業しているという主張をしてくることがあります。
しかしながら、会社が残業を命じていなくても、会社が、労働者の就業実態や残業をしていることを認識していれば黙示の指示があったとされて、残業代請求が認められるケースがあります(最高裁判所平成19年10月19日判決)
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パワハラ問題
最近、急増しているのがパワハラについての相談です。
パワハラ自体が急激に増えているのではなく、企業のコンプライアンス意識が上がったことで、労働者個人もパワハラに対しての見識が変わってきたことが大きな原因となっています。
パワハラの実例
営業部に配属された新入社員のAさん。本人は技術職が希望だったのですが、入社してから数年間営業を経験する必要があるということで得意ではない営業でも頑張ろうという気持ちで日々仕事に励んでいました。会話が得意ではない営業成績は課内でも最下位。配属されて半年経ちましたが、一度もノルマを達成できずにいました。
Aさんが辛かったのは月末の営業成績の発表の際、ノルマ未達成の社員は全員の前で反省の言葉を述べること、そして全員の見ている前で上司から暴言や激しい叱責を受けることでした。
Aさんは半年間我慢しましたが耐えることができずに会社を退社。軽い鬱病にかかっていると診断されてしまいました。退社に追い込まれたこと、鬱病になってしまったことは上司からのパワハラが原因ということで会社側に対して訴訟を考えています。
自分ではパワハラと思っていなくても、相手に対して精神的、肉体的に大きなダメージを与えてしまうのがパワハラ行為です。肉体的なダメージであればパワハラかどうか判断することができますが、精神的なダメージになると、どこからがパワハラなのか?自分では判断できないこともあります。
パワハラ問題については、労基署が対応してくれることがほとんどないため、損害賠償や慰謝料の請求などで弁護士に依頼するケースが多いです。
また、パワハラは上司から部下に対してのものだと思われている方も多いですが、役職上だけではなく、同僚からの行為も同様にパワハラと認定されることもあります。
セクハラ
パワハラと同様、相談件数が増えているのがセクハラ問題です。
セクハラは男性から女性に対してのハラスメントだけではなく、女性上司から男性へのセクハラ行為や、同性同士でのハラスメントなど、最近では様々なケースが生まれています。
セクハラの実例
Aさんは営業員で得意先を何件も抱える女性。営業員にとって得意先との信頼関係はとても重要なものでした。
ある日得意先の顧客から、Aさんの悪い噂が流れいることを教えてもらいました。噂の内容は性的なもので、Aさんと同じ会社に勤める別の社員が流していることを知りました。
全く根も葉もない噂なので、最初は否定していましたが、噂が広まるのは早く、得意先だけではなく自社でも同じような噂が広まってしまい、精神的ダメージで仕事を休みがちになったAさんは退職を考えるようになりました。
パワハラの被害以上に、加害者にはそれほど罪の意識がないのがセクハラの特徴です。このくらいなら大丈夫と思っていても、相手にとって大きな精神的ダメージを与えてしまうケースが多々あります。
労働問題を相談できるのはどこ?
ここまで紹介した労働問題について、相談を受け付けているところはどこなんでしょうか?
労働基準監督署に相談する
労働問題を解決する機関として、労働基準監督署を思い浮かべる人も多いと思います。
確かに、労基署では「給与の未払い」「不当解雇」などの労働問題について企業側に違反があった場合は、是正勧告などを行ってくれるので、解決に至ることもあるでしょう。
しかし、あくまでも企業側が労基法に違反している事実がある時に動いてくれることになるので、労基法とは関係のない「パワハラ」「セクハラ」などの個人間の問題については解決に導いてくれる期待はできません。
実際に解決に動いてくれることはありませんが、労基署内にある『総合労働相談コーナー』で様々な労働問題の相談を受け付けしているので、解決方法などについてのアドバイスをしてもらうことはできるでしょう。
労働組合に相談
大手の企業などで労働組合があるならば、社内で起きた労働問題については相談することができるでしょう。中小企業などで社内に労働組合が存在しない場合は、全国労働組合連合などに個人で加入して相談を受けてもらうことも可能です。
fa-arrow-circle-right労働組合に相談したり、全国労働組合連合などに個人で加入して相談を受けることが可能
弁護士事務所の無料相談
弁護士に依頼するには高額な費用がかかってしまうと思い込んでいる人もいますが、増え続ける労働問題に対応するために、多くの弁護士事務所が無料相談を受け付けています。
事務所によって無料で相談できる時間は30~1時間と差がありますが、自分の状況を弁護士に伝えて解決方法のアドバイスをもらうためには十分な時間だと思います。
パワハラやセクハラなど、労働基準監督署の対応が難しい場合はやはり弁護士に解決するためのアドバイスをしてもらうのが良いでしょう。
そのまま同じ部署で仕事を続けるためにはどのような解決方法があるのか?退職を考えているのであれば、慰謝料や損害賠償を会社に対しても請求できるのか?など無料相談の時にアドバイスをもらい、弁護士費用と受け取る慰謝料のバランスを考えて依頼するかどうか決めることができます。
また、残業代の未払いについては、残業をしたという明確な証拠がない場合、労基署が動くことはまずありません。弁護士に依頼することで、自分がタイムカードの写しなどを持っていなくても、どのような証拠を準備すればいいのかアドバイスを行ってくれます。
まとめ
全ての労働者にとって身近な問題が労働問題です。
人員不足のために残業するのは仕方ないと思っている人もいますが、会社側は人員不足を補うことが必要であり、労働者に対して大きな負担を強いることは間違っています。
企業側に労働法違反があった場合、労基署が問題解決に動いてくれますが、明確な証拠を持っていなかった場合や、セクハラ、パワハラのような労働法違反ではない問題の場合は解決に導いてくれることはほぼありません。
また、退職を考えているのであれば、訴訟などの思い切った手段を選ぶことも可能ですが、今後も同じ会社で働いていきたいというのであれば、会社や上司、同僚との対立はなるべく避けた方がいいでしょう。