死亡交通事故では、被害者本人と遺族分の死亡慰謝料を加害者に請求できます。また、葬儀代や逸失利益といった賠償金の請求も可能です。

執筆・監修:豊川祐行
2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。 あまた法律事務所へのお問い合わせはこちら
- 死亡交通事故で受け取れる慰謝料の種類
- 死亡慰謝料以外に請求できるお金
- 死亡慰謝料の計算方法と相場金額
- 死亡慰謝料の請求方法
- 死亡慰謝料を請求する流れ
- 死亡慰謝料の分配について
この記事の目次
死亡交通事故で受け取れる慰謝料の種類

被害者が死亡した交通事故では、遺族は加害者に対し2種類の死亡慰謝料を請求できます。
慰謝料は民法で定められた不法行為に対する損害賠償の一種で、精神的な苦痛を補償するお金です。交通事故で被害者が死亡すると、残された遺族は計り知れない悲しみや苦しみを背負います。
このような、精神的苦痛に対する補償として請求できるのが死亡慰謝料です。本来、精神的な苦痛は客観的に測れるものではありませんが、法律上は、受けた苦痛の程度によって金銭で支払うこととされています。
死亡慰謝料には、
- 被害者本人の慰謝料
- 遺族の慰謝料
上記の2種類があります。
事故によって死亡してしまった精神的苦痛への慰謝料です。
ただ、すでに死亡している本人は受け取ることはできませんので、通常は父や母、子どもなど相続人になる親族が代わりに受け取ります。
死亡慰謝料は本人だけでなく遺族にも支払われます。近親者が亡くなれば、遺族は大きな精神的苦痛を受けるため、被害者本人とは別に慰謝料を請求できます。
民法711条では「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が直接侵害されなかった場合においても、損害を賠償しなければならない。」と定めています。つまり、被害者の父母や配偶者、子どもといった遺族は、その者固有の慰謝料請求が認められているわけです。
法律上に明記されているのは、父母と配偶者、子どもだけです。しかし、被害者に父母や配偶者、子と実質的に同視し得る身分関係が存在し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けたものは、民法711条の類推適用により加害者に対し直接損害賠償請求できるという最高裁判所の判例があります。よって、被害者と長く一緒に暮らしていたなど特定の事情があれば、祖父母や孫、兄弟姉妹などに慰謝料請求権が認められる余地があります。

死亡慰謝料以外に請求できるお金
死亡交通事故では亡くなった慰謝料のほかにも、入院慰謝料や葬儀の費用、被害者が将来働いて得るはずだった収入などの補償を請求できます。
被害者が生きていたら将来に得られたはずの収入を逸失利益として請求できます。逸失利益は以下の式で計算され、基本的に被害にあった人の年齢が若く収入が高いほど高額になります。
基礎収入額は会社員なら事故時の給与額、事業主なら確定申告の金額が適用されます。収入がない専業主婦は女性の全年齢平均賃金、幼児や児童は性別による全年齢平均賃金、高齢者は受給している年金や就業上などを基に計算されます。また、現在無職でも就業の可能性といった事情により平均を基にして請求できる余地があります。
被害者が死亡したことで収入が失われる反面、生存していれば必要だった生活費がかからなくなる面があります。その分の金額は生活費控除率として計算します。
ライプニッツ係数は将来的な損失の額を現在の価値として算出するための係数です。被害者の年齢から事故後どれくらいの期間働けたかが計算され、それにあわせ係数は変わります。
例えば、被害者が35歳男性で、妻と子ども1人を扶養しており、一家の生活を支える年収400万円のサラリーマンだったケースでは以下のように相場を計算できます。(令和2年4月1日以降に発生した事故)
- 基礎収入額:400万円
- 生活費控除:40% (一家の支柱となる人の場合、被扶養者が1人なら40%、2人なら30%)
- 就労可能期間:32年(一般的に67歳まで働くものとして計算される)
- ライプニッツ係数:20.3888(就労期間32年の場合)
結果、逸失利益は400万×(1-40%)×20.3888=4893万3120円です。ただ、一般的な計算式に当てはめた相場ですので、実際の金額は事例ごとに異なると思っておきましょう。
被害者の葬儀にかかる費用で、通夜・葬儀代、火葬・埋葬費、花代、墓石代、四十九日までの法要費、遺族の交通費などを実費として請求できます。ただし、香典返しは認められていません。

請求金額は原則として150万円です。しかし、あくまでも「実際に生じた損害の賠償」が民事の損害賠償請求です。そのため、認められるのは実際に支払った額かつ、内容が相当と判断された分のみで葬儀の費用がすべて戻ってくるとは限らないのは注意点です。
入通院慰謝料は傷害慰謝料とも呼ばれています。交通事故により必要になった医療機関への通院・入院の肉体的・精神的苦痛に対する慰謝料です。死亡事故では事故直後は生存し病院に入院したけれど、後に亡くなったケースで請求できます。
入通院慰謝料は原則として治療期間で計算され、1日でも対象です。入院期間が長いほどもらえる慰謝料の金額は多くなると言えます。
交通事故で弁護士を立て裁判をしたケースで支払われ、判決で認められた金額の10%程度が弁護士費用相当額として賠償金に上乗せされます。
示談交渉を弁護士に任せるケースはありますが、裁判にならないと弁護士費用相当額の請求は困難なのが現状です。弁護士費用の一部を相手に負担させられるのは、裁判に発展したときと思っておきましょう。
債務の履行が遅れると支払われ、交通事故の当日から付加されます。
事故の日から損害は発生していると見なされますが、実際のところ慰謝料の支払いは事故からしばらく期間をおいて行われます。事故発生日から慰謝料支払日までの間が遅延損害金の対象です。
遅延損害金は2020年4月1日以前の事故に対しては年5%、以降の事故は年3%(3年ごとに率を見直し)で付加されます。
交通事故の慰謝料を計算する3種類の基準

交通事故の慰謝料には3つの計算基準が存在し、それぞれでもらえる金額に大きな違いがあります。実際に受け取れる死亡慰謝料の相場を比較すると、高額なのは弁護士基準です。
交通事故の慰謝料には自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準3つの算定方法があります。
自賠責基準は自動車を運転するうえで加入を義務付けられている自賠責保険に基づいた算定基準です。自賠責保険は全ての自動車が加入しており、どの事故でも受け取ることが可能です。
反面、受け取れる慰謝料を比較すると、3つの計算方法のなかでは低額です。自賠責保険は限度額があり、死亡事故で受け取れる上限は3000万円です。

任意保険基準は加害者が加入している任意保険会社で決められている算定基準です。金額は保険会社が自由に決めて良いとされています。
計算方法は各社で異なり外部には非公開が原則で詳細は不明です。ただ、一般的には自賠責基準より少し高い程度と言われています。
弁護士基準は3つの計算基準のなかでは、高額の慰謝料を受け取れる算定基準です。弁護士に依頼したときや裁判を起こすと適用され裁判所基準とも呼ばれます。
弁護士基準では公益社団法人「日弁連交通事故相談センター」発刊の「交通事故損害額算定基準」(通称:青本)や「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)などを参考に慰謝料が算定されます。実際に訴訟を起こさなくても、弁護士に依頼し示談交渉を行えば弁護士基準での慰謝料請求が可能になります。
弁護士に依頼することで慰謝料の金額が大きく変わり、自賠責基準と比べて2倍以上の金額を受け取れるような事例もあります。
死亡慰謝料の相場を3つの基準で算出
死亡慰謝料の金額はどのようなケースでも自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準が基本です。被害者の年齢や収入などに関わらず、弁護士基準での慰謝料請求が望ましいといえます。
生計を支えている者の場合
3つの算定基準で請求できる慰謝料の相場を、働き盛りの男性(妻1人子1人)が事故に遭って亡くなったケースを想定しそれぞれ算出していきます。
自賠責基準は本人への慰謝料は400万円と決められています。遺族への慰謝料は請求する人数によって変わり、被扶養者がいると1人につき200万円がプラスされます。
| 請求権者 | 遺族への慰謝料 |
|---|---|
| 1人 | 550万円 |
| 2人 | 650万円 |
| 3人 | 750万円 |
| 被扶養者 | 1人につき+200万円 |
今回のケースでは男性(本人)に請求権者は妻と子の2人であり、被扶養者は子ども1人だけとして計算します。
本人への慰謝料400万円+遺族への慰謝料650万円+被扶養者200万円=1250万円
以上が自賠責基準でもらえる慰謝料になります。
任意保険基準の算定方法は保険会社によって異なり、どの保険会社も外部へは非公開が基本のためはっきりとした金額は不明です。
ただ、一家の支柱になる人物(一家の生計を支えている人物)が死亡した事故の慰謝料は、1500万~2000万円が相場とされています。
弁護士基準で一家の支柱となる人物が死亡した事故の慰謝料相場は2800万~3600万円程度が相場とされています。

一家の支柱に準ずる者の場合
一家の支柱に準ずる者は主に被害者の配偶者や主婦(主夫)などを指します。ほかにも、教育が必要な子どもの母親、高齢者の父母や幼い兄弟姉妹と同居している独身者、子どもを扶養または子どもに仕送りをしている人が含まれます。
自賠責基準では被害者の立場に関係なく本人に対する400万円と、遺族や被扶養者が何人いるかで算定されます。
任意保険基準は一家の支柱となる人物より金額は少々下がり、1300万~1600万円程度が相場になります。弁護士基準では、2000万~3200万円程度です。
子どもや高齢者の場合
子どもや高齢者が交通事故で死亡した際の慰謝料相場です。
自賠責基準は被害者の立場に関係なく本人に対する400万円と、遺族や被扶養者が何人いるかで算定されます。
任意保険基準の相場
子ども:1200万~1500万円
高齢者:1100万~1400万円
弁護士基準の相場
子ども:1800万~2600万円
高齢者:1800万~2400万円
交通事故の死亡慰謝料が増額されるケース
交通事故では被害者の精神的苦痛が大きいと判断されると、慰謝料は増額されるケースがあります。事故は1件1件状況が異なるため、慰謝料はケースにより増減するのが普通です。
・加害者に重大な過失がある……スピード違反や信号無視、無免許運転、飲酒運転、ひき逃げ、無免許、過積載など法律違反に当たる重大な過失がある加害者が起こした悪質な事故。
・事故後の態度が悪い……事故を起こした本人やその親族が被害者側に謝罪しない、警察の取り調べに虚偽の供述をするなど真面目さがない、証拠隠滅、無理な主張で自己弁護するなど著しく不誠実な態度を取る。
・遺族の健康や生活に対する影響……事故のショックで遺族が精神疾患を患うなど健康に影響が生じた場合、被害者が死亡したことで会社の業務や業績、学業などに悪影響を及ぼした場合など。また、幼い子どもを亡くした親への配慮も含まれる。

交通事故の死亡慰謝料を請求する方法

死亡慰謝料を含めた慰謝料や賠償金は、基本的に事故の相手方との示談交渉にて請求します。示談が成立すると、加害者はお互いが合意した示談金を被害者に支払う必要が生じます。もし、どうしても話し合いで折り合いがつかないときは、訴訟を提起し裁判による請求を行います。
死亡慰謝料は自賠責保険会社と任意保険会社の双方に請求でき、一括請求と被害者請求2通りの方法があります。
一括請求
一括請求(任意一括対応)は任意保険会社が自賠責保険の分も含めて被害者に一括で慰謝料を支払い、その後、自賠責保険会社に請求を行う方式です。
手続きは保険会社が行いますので、被害者側の負担を減らせるのが特徴です。また、裁判になれば遅延損害金の額が大きくなるため、受け取れる賠償金が増額されるメリットがあります。
被害者請求
被害者請求は被害者が自賠責保険会社に直接、慰謝料を請求する方法です。
被害者が手続きしなければなりませんので、一括払いよりも被害者の手間が増えるのがデメリットです。また、自賠責分の慰謝料を先に受け取っているため、裁判になると遅延損害金が受け取れないため賠償金は低い金額になってしまいます。
多く使われている請求方法は一括請求ですが、被害者請求は事故後、早い時期に自賠責からまとまったお金を受け取れるメリットがあります。

死亡慰謝料を請求する流れ

死亡事故で被害者が加害者に死亡慰謝料を請求するまでの具体的な流れを解説します。
被害者の死亡後はすぐに葬儀の準備にとりかかりるのが一般的です。
四十九日法要が終わると加害者との交渉が始まりますので、病院で死亡診断書を書いてもらい、役場に死亡届を提出し火葬証明書を受け取っておく必要があります。
慰謝料を請求するため、相手方の保険会社に提出する書類を準備しておくことが大切です。
・交通事故証明書(自動車安全運転センターで発行してもらう)
・事故発生状況報告書
・死亡診断書(または死体検案書)
・被害者の収入を証明できる書類(源泉徴収票や確定申告書など)
・印鑑証明
・戸籍謄本
・委任状、委任者の印鑑証明書(第三者に委任する場合)
複数の遺族がいる場合は誰か一人が代表者になり、他の遺族から委任状と印鑑証明書を提出してもらいます。
示談交渉は相手方の加入している任意保険会社と行います。
はじまる時期は一般的に四十九日法要が済んでからのことが多いですが、決まってはおらず遅らせることは可能です。遺族の精神的なショックが大きく話し合いができない状態であれば、無理に相手方の要望に開始時期を合わせる必要はありません。
加害者は刑事裁判で有罪判決を受けたとき、示談が成立していると執行猶予がつき刑務所に入らなくて良くなるケースが多く見られます。そのため、加害者はなるべく早く示談交渉を開始し示談を成立させようとする傾向があります。しかし、被害者は加害者の提示に応じる必要はなく、もし条件に納得できなければ合意を拒否することもできます。
双方が合意し示談が成立すると、保険会社から示談書が届きます。書類に署名・捺印して返送すれば、2週間程度で慰謝料・損害賠償金が支払われます。
もし、示談が成立しなければ、裁判所で行う調停に入ります。

示談交渉は弁護士へ相談を
相手方との示談交渉は、交通事故の案件に強く実績のある弁護士に依頼するのがおすすめです。
死亡事故は遺族の精神的なショックが大きく、さらに葬儀など様々な手続きが発生し大きな負担がかかります。そのうえ加害者との示談交渉を進めるのは、大きな心労を抱えると思われます。スムーズに慰謝料などの賠償金を獲得するためには、法律に詳しい弁護士の力を借りるのが良いでしょう。
弁護士に依頼すれば慰謝料算定で有利になります。
死亡慰謝料に相場はありますが、交通事故は1つ1つのケースで状況や過失割合などが違い交渉次第で慰謝料の金額が増減してしまいます。また、弁護士基準での慰謝料算出が可能になり、増額できる可能性が高くなります。慰謝料が減額するリスクを回避するため、交通事故を得意分野にしている弁護士事務所を探してください。
弁護士を利用すると費用が心配ですが、初回無料や着手金無料のサービスを行っている弁護士事務所なら気軽に相談できます。また、自身が加入している自動車保険や生命保険などに弁護士特約があれば、弁護士費用を保険会社が負担してくれます。家族の加入する保険に特約が付帯しているケースもありますので、確認してみましょう。
死亡慰謝料は分配される
死亡慰謝料を受け取る権利があるのは被害者の相続人です。死亡交通事故では複数の遺族が慰謝料を受け取る権利を有しているため、死亡慰謝料は法律に決められた割合で分配されます。
分配は被害者の遺言があればその内容に従いますが、なければ民法で定められた法定相続分により分配されます。法定相続分では配偶者は常に相続人になり、次いで、子ども、親、兄弟姉妹の順にもらえる割合が高くなります。
| 相続人 | 相続割合 |
|---|---|
| 子ども | 2分の1(子どもが複数いるときは均等に分配) |
| 両親 | 3分の1(父と母がいるときは均等に分配) |
| 兄弟姉妹 | 4分の1(兄弟姉妹が複数いるときは均等に分配) |
「夫が亡くなり死亡慰謝料が1500万円だったケース」の分配例をシミュレーションします。
それぞれ2分の1ずつ受け取る。
妻:750万円 子ども:750万円
妻が2分の1を受け取り、子どもは残り2分の1を2人で均等に分ける(4分の1ずつ)。
妻:750万円 子ども1:375万円 子ども2:375万円
妻が3分の2を受け取り、残り3分の1を両親が均等に分ける(6分の1ずつ)。
妻:1000万円 夫の父:250万円 夫の母:250万円
妻が4分の3を受け取り、残り4分の1を2人で均等に分ける(8分の1ずつ)。
妻:1125万円 兄弟1:187万5000円 兄弟2:187万5000円
算出は基本的に遺産相続で用いられる方法と同じです。
まとめ
被害者が死亡してしまった交通事故では、本人および遺族に対する死亡慰謝料等の請求が可能です。
慰謝料は相手方の保険会社との示談交渉で決まりますが、高額な賠償金を獲得するには弁護士基準での算出するのがおすすめです。また、受け取った慰謝料は相続人で分配する必要があります。
複雑な交渉や手続きは法律の知識がないとスムーズに進めるのは難しいのが現状ですので、弁護士に相談するのが良いでしょう。弁護士は被害者側の主張に沿った条件になるような交渉ができますし、弁護士基準での算出が可能になり慰謝料を増額できます。死亡交通事故の加害者に慰謝料を請求したい、加害者との示談交渉を有利に進めたいのであれば、弁護士のアドバイスを受けてください。
あまた法律事務所でも電話やメールでのご相談を受けてつけております。

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。
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