関係のない第三者からの誹謗中傷はなぜ起こるのか
インターネットやSNSの世界では、直接関係のない第三者から突然、誹謗中傷の書き込みをされて攻撃を受けるといったことが起こりやすくなっています。
これには以下のようなインターネット特有の理由があります。
- 誰でも見ることができて書き込みができる
- ネットのもつ匿名性
ネット上の掲示板やSNSは基本的に不特定多数の人が制限なく閲覧することができ、自由に書き込みできるようになっています。
なかには、限られた人しか見ることができない会員制のSNSや鍵アカなどもありますが、それでもある程度の人の目に触れることには変わりありません。
簡単に情報アクセスや投稿の手軽さから、ネットでは自分が気に入らない相手に対して、歪んだ正義感をぶつけたり、日頃の不満やコンプレックスを解消するために攻撃しようとしたりする人がいます。
もう1つ、ネットで誹謗中傷が起こりやすい理由として、匿名で投稿できる点が上げられます。
なにを書いても自分が誰か特定されることはないと思っているため、心理的なブレーキが緩くなり、リアルでは言わないようなことでも平気で書き込んでしまう人が出てきます。
誹謗中傷にあたる書き込みの例
どのような投稿をされた場合に誹謗中傷といえるのか、具体的な書き込みの例をみていきます。
・ネット上で関係ない第三者から「バカ」「うざい」「死ね」などの暴言を受けた→ こうした抽象的な悪口はすべて誹謗中傷に当てはまり、法律上、侮辱罪と呼ばれる犯罪に該当する場合があります。 ・「○○は犯罪者」「○○は職場で不倫している」など事実無根の書き込みをされた→ デマや相手の信用を害する情報を書き込むのも誹謗中傷にあたり、法律では名誉毀損に該当する場合があります。なお、投稿内容が仮に真実であっても相手の信用を損なうものであれば誹謗中傷となる可能性があります。 ・「〇〇さんは××マンションの△号室に住んでいる」「〇〇さんの年収は××万円」など知られたくないプライバシーを勝手に書き込まれた→ これらの書き込みはプライバシーの侵害にあたると考えられ、法律で刑罰などは定められていないものの、民事で慰謝料請求の対象になる場合があります。第三者から誹謗中傷されたらするべきこと
ネットで突然、関係のない第三者から誹謗中傷を受けてしまったら、どうすればいいのでしょうか。
こういうとき、相手と直接交渉して個人で解決しようとしても、上手くいかなかったり、かえって問題を悪化させてしまったりすることがあります。
誹謗中傷を受けた際の相談窓口には、国の窓口、民間の窓口、法律事務所の3つがあります。
国の相談窓口
官公庁や地方自治体、警察、公共団体などが運営している窓口で、行政の運営している窓口のため、基本的に無料で相談が行えますし、なかにはプロバイダに削除要請を行ってくれるところもあります。
ただ、多くの場合は相談に乗ってくれてアドバイスは貰えるものの、書き込みの削除など具体的な行動は自分で行わなければならず、不安を感じる人もいるかもしれません。
民間の相談窓口
法人が運営する窓口やIT企業による逆SEO対策サービスなどがあります。SEOを利用し、誹謗中傷の書き込みを上位表示させないようにする逆SEOは、専門的な知識とノウハウをもつネット企業でなければできないサービスです。
民間の窓口は無料で相談できるものもありますが、逆SEOのように専門的なサービスだと有料でそれなりの金額が必要になるのがデメリットといえます。
法律事務所や弁護士の相談窓口
3つ目の相談窓口として、法律事務所や弁護士など、法律の専門家に相談することもできます。
直接事務所に足を運んで相談するほか、電話やメールによる相談、ホームページに相談フォームを設けている事務所もあります。初回無料相談の事務所もあるので、いろいろと調べてみるといいでしょう。
法律の専門家である弁護士に相談に乗ってもらえて、個別の案件ごとに細やかなアドバイスをもらうことができ、削除請求や加害者への訴訟などにも対応してもらえます。
デメリットとしては、こちらも民間企業同様、費用がかかることで、特に書き込みの削除や相手を訴える場合などは報酬が高額になることもあります。
悪質な誹謗中傷は通報も検討を
特に悪質な誹謗中傷の被害に遭ったときは、警察に通報することも検討してください。各都道府県の警察本部にはネット上の犯罪を専門とするサイバー犯罪相談窓口も設けられています。
また、警察へ直接通報する方法の他にも、以下の相談窓口を通じても通報が可能です。
インターネット・ホットラインセンター
近年のネット上でのトラブルや違法情報の増加を受け、設立された団体による窓口で、警察から委託を受けた民間企業によって運営されています。
誹謗中傷だけでなく、出会い系サイトや殺人予告、自殺の勧誘など幅広い書き込みや違法な情報に対応しており、相談内容に応じて警察への通報やプロバイダへの削除要請、フィルタリング会社への情報提供などの対応を行ってもらえます。
一般社団法人セーファーインターネット協会
有志のネット企業によって運営されている一般社団法人で、「誹謗中傷ホットライン」という名前で民間の相談窓口を運営しています。
第三者からの誹謗中傷の書き込みを削除する方法や特定の手順
ネットでの誹謗中傷の問題点の1つが、一度投稿されると、書き込みがいつまでもネット上に残り続けるところです。
こうした書き込みは、なるべく速やかに消してしまいたいところですが、削除するためには手続を踏む必要があります。具体的に方法や手順を解説します。
書き込みを削除する手順
書き込みの削除の方法には以下の2つがあります。
- サイトやSNSの管理者に依頼。
- 裁判所に削除仮処分を申し立て。
最初にやるべきは連絡フォームなどからのサイト管理者への削除依頼ですが、きちんと対応してもらえないことも多く、その場合は仮処分が必要になります。
仮処分は通常の裁判よりも結果が早く出るのが特徴ですが、それでも2週間~2か月ほどかかりますし、専門的な法律の知識なども必要とされます。
仮処分が必要になったときは、弁護士など法律の専門家に依頼するのもひとつの方法です。
誹謗中傷の犯人を特定する方法や手順
書き込みをした相手を訴える場合、犯人を特定するために発信者情報開示請求をすれば、プロバイダに投稿者の個人情報を開示させることができます。
犯人の特定までの手順は以下のようになります。
書き込みがあったサイトの運営に投稿者のIPアドレスやタイムスタンプなどの開示を請求します。
サイト運営が開示を拒否した場合は、削除のときと同様、裁判所に仮処分を申し立てます。
開示されたIPから犯人のプロバイダを特定し、氏名・住所など個人情報の開示を求めます。
プロバイダが開示を断った場合、今度は仮処分ではなく本物の訴訟を起こす必要があります。ここであなたの主張が認められれば相手の個人情報が開示され、犯人の特定に至ります。
上記のように、現在、誹謗中傷の犯人を特定しようとすると、最低2回の裁判を行わなければなりません。
プロバイダやサイト運営者が任意での開示に応じてくれれば裁判は要りませんが、そういったケースは稀です。
仮処分や訴訟には専門的な法律の知識が必要になりますし、一般の方が個人で対応するのは難しいといえるため、誹謗中傷の犯人を特定したいとお考えの場合は、弁護士など法律の専門家に相談して対処してもらうのも方法のひとつといえます。
損害賠償の請求や刑事告訴も視野に
ネットでの誹謗中傷は名誉毀損や侮辱罪といった犯罪に該当する可能性が高く、刑事事件として告訴するのはもちろん、民事で慰謝料や損害賠償を請求することも可能です。
開示請求同様、専門的な法律知識が必要になるため、弁護士など専門家の力を借りるようにしてください。
できれば、誹謗中傷に遭った際は、最初から弁護士に相談し、削除依頼や開示請求、刑事・民事での訴訟など一貫して対応してもらうことをおすすめします。
まとめ
インターネットは誰でも書き込める手軽さと匿名性が魅力ですが、それが原因で関係ない第三者からの誹謗中傷などの被害に遭ってしまうこともあります。
こうした書き込みに対しては、国や民間の窓口、弁護士などに相談して、削除依頼や犯人の特定、刑事告訴や訴訟による損害賠償の請求といった対応をとることができます。
できれば、相談から削除、開示請求、訴訟と一貫して力になってもらえる弁護士への相談されることをおすすめします。