オープンワークとは
オープンワーク(OpenWork)は、社員クチコミや年収データを紹介している転職・就職のためのジョブマーケット・プラットフォームです。国内最大規模のクチコミ数と評価スコア(1170万件超)を保有しており、会員数は約435万人(2021年8月時点)となっています。
以前はVorkers(ヴォーカーズ)という名前で運営されていましたが、労働環境をよりオープンにし、透明性のあるジョブマーケットを実現したいという想いから名称が変更されました。
オープンワークは、実際に働いている社員が自社の社風・給与額など「生の声」を投稿しています。就職活動などでサイトを利用するユーザーにとって、就職を希望する企業の良い面と悪い面の両方を知る事が出来るので、職場選びするための重要な情報になります。
企業の評価ページでは、8つの評価項目のスコアを反映した「会社評価スコア」が図で表示されています。8つの評価項目は以下の通りです。
- 待遇面の満足度
- 社員の士気
- 風通しの良さ
- 社員の相互尊重
- 20代の成長環境
- 人材の長期育成
- 法令順守意識
- 人事評価の適正感
さらに、オープンワークに無料登録すると、カテゴリ別の社員口コミを閲覧できます。口コミのカテゴリは以下の通りです。
- 企業文化
- 入社理由と入社後ギャップ
- 働きがい・成長
- 女性の働きやすさ
- ワーク・ライフ・バランス
- 退職検討理由
- 企業分析[強み・弱み・展望]
- 経営者への提言
口コミ投稿者の名前は非公開ですが、在籍期間や年齢、性別、役職などが表示されるため、投稿者の属性がより細かく分かる仕様になっています。
また、投稿する際には最低文字数が設けられているため、企業の実情について細かく記載していることが多く、信ぴょう性の高い口コミが多くあります。
一方で、たくさんの人が使用しているサイトですので、ネガティブな口コミがあると企業側のイメージ低下に繋がります。
オープンワークの投稿のルール
オープンワークは投稿のルールを定めたガイドラインがあり、口コミ投稿者に対してガイドラインの順守を呼びかけています。
ここでは、オープンワークにおける投稿のルールを一部紹介します。
口コミを投稿できる者
口コミを投稿するには過去に企業へ在籍していたときの情報を入力する必要があります。従って、口コミを投稿できるのは該当の企業で勤務経験がある者のみになります。
また、入社日から退職日までの期間が1年未満の人はレポートに回答することができません。企業の実情を正確にサイトに反映させるため、このような勤務経験の制限がされています。
禁止されている投稿
サイトを見る人にネガティブな印象を極力与えないために、ガイドラインでは不適切なレビューの投稿を禁止しています。審査によって不適切と判断されたレビューはサイト内に掲載されず、審査結果や非公開になった理由も教えてもらえません。
ここからは、禁止されている投稿を一部紹介します。
「営業経験がない人は昇進できないと言われている」など、事実確認ができていない噂話は風評被害に繋がるおそれがあるため禁止されています。また、「有給休暇は全く取れない」など、誇張された表現も禁止です。
「加藤部長が頭ごなしに叱ってくる」など、個人名が記載された書き込みは個人の名誉毀損に繋がるおそれがあるため禁止されています。
「場をうまくまとめていた人がいたが、その方が家庭の事情で退職したため、職場の空気が悪くなって退職した」など、特定の個人を示唆する書き込みも避けましょう。
丁寧で節度ある投稿をしましょう。誤字脱字や口語的表現での投稿は信憑性が薄くなり、サイトを見た人の参考になりにくいからです。また、感情的な表現や高圧的な発言は、サイトを見た人が不快な思いをするので控えましょう。
オープンワークは特定の企業や他者を非難するサービスではないため、誹謗中傷を含む発言は禁止されています。また、営業妨害にあたる行為も禁止です。
投稿した後のルール
オープンワークのガイドラインは、レポートの健全性維持のために、一度投稿したレポートは編集・削除できないというルールを設けています。また、投稿した者がオープンワークを退会した場合も、レポートが削除されることはありません。
オープンワークの口コミが与える影響
オープンワークで口コミを投稿する人は既にその会社を辞めた人がほとんどです。何かしらの不満を抱いていた人が、退職後に口コミを書き込むケースも多く、会社のイメージを損なうネガティブな投稿も多く見受けられます。
では、会社に対するネガティブな口コミが書かれることで、どのような影響やリスクがあるのでしょうか?口コミが与える影響について解説します。
求人数が減少する
求人票やエージェントからの紹介で応募を検討していた人も、オープンワークのネガティブな口コミがきっかけで志望の優先度を下げることが考えられます。場合によっては、応募を取り下げることもあるでしょう。
たとえ、口コミを見た企業側が業務改善に取り組んだとしても、オープンワーク上では過去に働いていた人による口コミが投稿されるため、求職者は過去の勤務状況しか知ることができないのです。
取引先との関係性が悪くなる
オープンワークは主に転職活動や就職活動で利用されますが、取引先が企業情報を知るために活用することも多くあります。オープンワークのレビューで、過去の不祥事やトラブルなどが記載されていると、取引先にマイナスイメージをもたれてしまい、既存の関係性にも悪影響が及ぶ可能性があります。
また、新規取引先が悪印象の口コミを見てしまうと、その企業を敬遠して取引が成立しない場合もあるでしょう。
従業員のモチベーションが低下する
悪印象の口コミが広まると、従業員の仕事に対するモチベーションが低下してしまいます。勤め先に関するネガティブな噂が原因となって、自社に対する信用やそこで働くことで得られる自信を失ってしまうからです。
オープンワークに悪質な口コミを書き込んだ人に問われる責任
元社員による「生の声」を反映するサイトである以上、適切な評価であれば、企業にとって不都合なレビューでも何ら責任は生じません。ただし、悪意を持ってその企業や特定の人物の社会的評価を失墜させる発言をした場合、法律上の責任を問われるおそれがあります。
民事上では、709条の不法行為責任を根拠にして損害賠償責任が問われる場合があります。刑事上では、名誉毀損罪や業務妨害罪が成立し、懲役刑や罰金刑を言い渡される場合があります。
オープンワークで削除対象となる口コミの基準とは
基本的にオープンワークはレビューを投稿した後は編集や削除できません。また、率直な意見を書き込む場ですので、信ぴょう性が高い書き込みによって会社のイメージが下がった場合でも、第三者による削除請求は認められない場合があります。
一方で、下記のような理由で書き込みが不適切と判断された場合にはレビューを非掲載とする対応を行ってもらえます。
- 申請内容から掲載情報が明らかに投稿時の「事実と異なる」と判断できる場合
- 申請内容から掲載情報が明らかに「誹謗中傷に該当する表現を含む」と判断できる場合
- その他掲載内容が公序良俗に反すると判断できる場合
削除申請しても不適切なレビューであるか明確に判断できない場合には、レビューを非公開にしてもらえない場合があります。
オープンワークの口コミを削除する方法
オープンワークでは「お問合せ(貴社に関する掲載情報の削除依頼)」というページに、不適切な口コミの削除申請をする方法が記載されています。
申請はメール、電話、対面では受け付けておらず、書面を郵送した場合にのみ対応してくれます。以下の書類を同封して郵送することで削除申請できます。
・発行後3ヶ月以内の印鑑登録証明書
・発行後3ヶ月以内の登記簿謄本
・第三者が代行する場合には、依頼主の登録印鑑(実印)が押された委任状が必要
・掲載内容が、口コミ投稿時の「事実と異なる」ことを明確に証明できるもの(掲載内容が「事実と異なる場合」)
郵送された書類は、運営事務局に到着した後に順次確認されますが、問い合わせの内容によっては返信されない場合もあります。もちろん、書類を送付したからといって、必ずしも口コミが削除されるわけではありません。また、進捗状況の確認等の対応についても受け付けていません。
オープンワークに掲載されている情報が事実であるにもかかわらず、不正な理由により削除依頼を申請した場合は、運営元への営業妨害となるケースもあります。
オープンワークの口コミを削除できない場合の対策
上記の方法で削除申請しても、必ずしも対応してくれるわけではありません。とはいっても、ネガティブなレビューを放置していると、企業に悪影響が生じるため何らかの対策が必要になります。ここからは、口コミが削除できないときにできる対策を解説します。
裁判所に仮処分を申立てる
オープンワークは、裁判所などの公的機関からの命令があれば、掲載情報を削除する場合があることを明記しています。
そのため、非公開や削除対応をしてくれない場合は、裁判所に仮処分命令の申立てを行い、裁判所からオープンワークに対して、対象の口コミを削除するように命令を出してもらいましょう。
仮処分とは、正式な裁判手続きを経ることなく、裁判に勝ったときの状態を確保する手続きです。通常の裁判では判決が出るまでに半年〜1年程度かかりますが、仮処分の申立ては2週間〜1ヵ月程度の短期間で結論がでます。
投稿者に対して法的措置をとる
悪質なレビューによって企業の社会的評価が下げられた場合は、投稿者を訴えて民事・刑事上の責任を追及することができます。ただし、オープンワークは実名を記載せずに投稿できるため、訴えるためには投稿者の身元を特定する必要があります。
投稿者の特定には、プロバイダ責任制限法に定められている「発信者情報開示請求」という手続きを利用します。
この手続きでは、まず、オープンワークの運営者に投稿者のIPアドレスを開示請求します。次に、KDDIやSoftbankなどの携帯キャリアであるインターネットサービスプロバイダ(ISP)に、入手したIPアドレスを利用している者の住所・氏名・電話番号などの個人情報を開示請求します。
開示請求は裁判上で行うのが原則になります。IPアドレスや住所、氏名などは重要な個人情報ですので、裁判外で開示してもらえることはめったにないからです。
なお、オープンワークスに対するIPアドレス開示請求と、ISPに対する住所・氏名などの開示請求は別々の裁判で行います。
最低でも2回の裁判手続きを経る必要があるので、個人で手続きを進めるのは簡単ではありません。悪質なレビューの投稿者を特定して訴えたい場合は、一度弁護士などの専門家に相談してアドバイスを受けるのがおすすめです。
自社の労働環境を改善する
いくら企業にとって不都合なレビューを削除しても、実際の職場環境が劣悪であれば再び低評価のレビューが書き込まれます。これ以上悪い口コミが入らないようにするには、自社の労働環境を改善することが何より重要です。
まとめ
オープンワークは企業の良い面と悪い面をリサーチできるため、就活生の必需品ともいえる便利なサイトです。ただし、中には会社のイメージを失墜させるような投稿が書き込まれている場合もあります。ネガティブなレビューが書かれたままの状態を放置していると、就活生が敬遠してしまうなど、企業にとって悪影響が生じます。
企業のイメージを損なう投稿を見た時は、まずはサイト側に削除申請して対策しましょう。削除申請が断られた場合は、裁判手続きを利用することで対処できる場合があります。不明な点も多いと思いますので、困った時は一度弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。