後遺障害12級で障がい者手帳はもらえる?認定までの流れや注意点

後遺障害12級で障がい者手帳はもらえる?認定までの流れや注意点

後遺障害12級が認められるためには、加害者側の自賠責保険に等級認定を申請する必要があります。

この記事では、後遺障害12級が認定されるまでの流れや、申請結果に納得できないときの対処法について解説します。

交通事故による後遺障害とは

交通事故の被害にあうと、症状が完治せずに「後遺症」が残ることがあります。後遺症とは、怪我や病気などの治療を受けたにもかかわらず、完治することなく残り続けた機能障害や神経症状のことを指します。

後遺症が残ると、加害者に対して慰謝料請求が認められると思われるかも知れません。しかし、後遺症が残ったことに対する慰謝料を請求するためには、「後遺障害」として認められる必要があります。

では、後遺障害の定義はどのようなものでしょうか。以下の要件を全て満たす症状を後遺障害といいます。

後遺障害の定義
・交通事故によって受けた肉体的・精神的な傷害が治ったときに残存するもの
・交通事故によって受けた傷害との間に相当因果関係があること
・将来においても回復困難であると見込まれること
・その存在が医学的に認められること
・労働能力の喪失を伴うものであること
・自賠法施行令に定める後遺障害等級に該当すること

したがって、事故後に神経症状などの後遺症が現れたとしても、上記の要件を満たさないものは後遺障害には当たりません。

後遺障害として認められなければ、加害者に対して後遺障害に関する損害賠償請求も認められなくなります。

後遺障害の等級について

後遺障害は、その症状の重さによって1級〜14級の等級に分類されます。それぞれの等級の認定基準は「交通事故損害賠償法施行令」によって規定されており、1級に近づくほど重度の後遺障害とみなされます。

後遺障害の等級認定を受けなければ、後遺障害慰謝料や逸失利益などの賠償金を請求できません。また、認定された等級によって、請求できる慰謝料の金額も変わります。

このように、加害者に対して適切な賠償金を請求するためには、自分の症状にあった後遺障害等級の認定を受ける必要があります。

等級認定を受ける方法について

等級認定を受けるためには、所定の審査機関(損害保険料率算出機構など)に対して申請する必要があります。担当の医師が認定するわけではない点に注意しましょう。

申請方法には、「事前認定」と「被害者請求」の2種類があります。それぞれの方法について見ていきましょう。

事前認定

加害者側の任意保険会社を経由して自賠責保険に申請する方法です。被害者の方は、医師に後遺障害診断書を作成してもらい、それを相手方の任意保険会社に送付することになります。それ以降の手続きは任意保険会社が全て行ってくれるため、手続きが楽というメリットがあります。

 一方で、任意保険会社が自賠責保険にどのような書類を提出したかについて、被害者は把握することができません。そのため、申請手続きに透明性がなく、思っていた等級が認定されないおそれがあります。

被害者請求

被害者本人が直接自賠責保険に申請する方法です。この方法では、被害者自身が必要書類を揃えなければならないため、事前認定と比べて準備の手間がかかります。また、後遺障害を証明するための書類を送付する必要があることから、後遺障害に関する知識も備えていなければなりません。

その分、事前認定とは違って送付書類の内容を把握できるため、納得のいく申請ができます。適切な書類を集めることができれば、適切な等級が認定されやすくなるでしょう。

後遺障害等級12級とは

後遺障害12級には、交通事故がきっかけで発症しやすいむち打ち症が含まれます。むち打ち症は12級と14級に該当する後遺障害ですが、12級が認められた方が高額の慰謝料を請求できます。

交通事故における後遺障害12級の症状

後遺障害等級12級には、以下の14種類の症状が該当します。

号数後遺障害の症状
12級1号一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
12級2号一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
12級3号七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
12級4号一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
12級5号鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
12級6号一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
12級7号一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
12級8号長管骨に変形を残すもの
12級9号一手の小指を失ったもの
12級10号一手の人差し指、中指、または薬指の用を廃したもの
12級11号一足の第二の足指を失ったもの、第二の足指を含み二の足指を失ったもの又は第三の足指以下の三の足指を失ったもの
12級12号一足の第一の足指、または他の四の足指の用を廃したもの
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
12級14号外貌に醜状を残すもの

なお、これらの症状に該当しなくとも、後遺障害等級12級となることがあります。例えば、13級の後遺障害が2つ以上残っていると、併合12級として扱われます。

上記の表の中で、交通事故でよく見られる症状は「6号・7号・13号・14号」になります。これらの症状については個別に解説していきます。

12級6号「一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」

片方の上肢の3大関節(肩・肘・手首)のうち、1つの関節に機能障害が残ってしまった状態を指します。

なお、機能障害とは、関節の可動域が4分の3以下になってしまった状態や、手のひらの回内・回外運動(上に向けたり下に向けたりする運動)の可動域が2分の1になってしまった状態のことを意味します。

12級7号「一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」

片方の下肢の3大関節(股関節・膝・足首)のうち、1つの関節に機能障害が残ってしまった状態を指します。

12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」

交通事故では、主に「むち打ち症」と呼ばれる症状です。体の一部に痺れが残ったり、頭痛、めまい、耳鳴りが起こることを医学的に証明できる状態を指します。

 本人の自覚症状だけではむち打ち症は認められず、画像所見(MRI画像など)や神経学的検査の結果から症状を証明しなければなりません。

12級14号「外貌に醜状を残すもの」

頭・顔・首など日常的に露出して人目に付く部分に、怪我や火傷の跡が残ってしまった状態です。

賠償金について

後遺障害等級が認められると「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」といった賠償金を加害者に請求できます。それぞれの内容については以下の通りです。

後遺障害慰謝料

慰謝料とは、被害者が受けた精神的苦痛に対する賠償金です。後遺障害が残ると今後の生活に大きな支障をきたすため、被害者は不安やストレスを抱えて日々を過ごすことになります。これらの不安やストレスが精神的苦痛とみなされるため、加害者に後遺障害慰謝料を請求することができます。

12級で認められる後遺障害慰謝料の相場は94万円〜290万円になります。同じむち打ち症でも、14級の相場は32万円〜110万円なので、慰謝料の金額に大きく差が生じます。

逸失利益

後遺障害がなければ得られるはずの将来収入のことを「逸失利益」といいます。後遺障害は「労働能力の喪失を伴う症状」のことなので、必然的に将来の労働収入が減ることになります。そして、この将来収入の減少分については、加害者に対して損害賠償請求できます。

後遺障害等級12級で障がい者手帳はもらえる?

後遺障害12級が認定された場合、障がい者手帳はもらえるのでしょうか。その是非について解説していきます。

障がい者手帳とは

障がい者手帳とは、「身体障がい者手帳」「療育手帳」「精神障がい者保健福祉手帳」の3種の手帳を総称した一般的な呼称です。交通事故で後遺症を負うと、身体障がい者手帳を受け取れる場合があります。

障がい者手帳が交付されると、各種福祉サービスを利用できたり、企業に就職するときに「障がい者求人枠」での応募ができたりします。

障がい者手帳が交付される条件

交通事故で後遺症が残ったからといって、必ずしも身体障害者手帳がもらえるわけではありません。身体障害者手帳を受け取るためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 疾病によって障害が永続し、生活動作が不自由であること
  2. 「身体障害者障害程度等級」のうち、6級以上に該当すること
POINT
身体障害者障害程度等級とは、厚生労働省が定めたものであり、症状の重さによって1級〜7級に分類されています。障がい者手帳が交付されるためには6級以上が認められなければなりません。

後遺障害12級で障がい者手帳を受け取るのは困難

結論としては、後遺障害12級で障がい者手帳を受け取るのは困難になります。では、なぜ後遺障害12級では障がい者手帳が交付されないのでしょうか。具体的な例をあげて解説します。

12級6号「一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」

後遺障害12級6号にあたる場合、身体障がい者障害程度等級の5級に該当し、障がい者手帳を受け取れるようにも思えます。

具体的には、

  • 肩関節の関節可動域60度以下のもの
  • 肘、手首関節の関節可動域30度以下のもの
  • 各関節のいずれかが徒手筋力テストで3に相当するもの

といった症状が必要です。

ただし、上肢の障害で身体障がい者障害程度等級の5級に達するのは後遺障害等級8級6号が目安になります。12級の基準では、肩関節の可動域は135度、肘は110度、手首で125度となるため、5級に該当するのは困難になります。

12級7号「一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」

後遺障害12級7号にあたる場合、身体障がい者障害程度等級の5級などに該当し、障がい者手帳を受け取れるようにも思えます。

具体的には、

  • 股関節、膝関節の関節可動域30度以下のもの
  • 足首の関節可動域10度以下のもの
  • 膝関節、足首関節に中等度の動揺関節が認められるもの

といった症状が必要です。こちらも、後遺障害等級12級の症状では、上記の基準を満たさないため、身体障がい者障害程度等級5級に該当するのは困難になります。以上のように、一見すると6級以上の身体障がい者障害程度等級に該当すると思えても、実際に等級認定を受けるのはほぼ不可能です。

後遺障害12級で障がい者手帳を取得するのは難しいため、慰謝料の増額などを目指すようにしましょう。

後遺障害等級12級の認定までの流れ

後遺障害等級認定はどのような流れで行われているのでしょうか。等級認定までの手順を詳しくみていきましょう。

1、症状固定まで治療を受ける

後遺障害認定の前提として「症状固定」するまで治療を継続することが必要です。症状固定とは、疾患の治療を継続しても、症状の改善がこれ以上見込めない状態のことを指します。症状固定時期は、担当医が医学的知見に基づいて判断します。

 時折、相手方の保険会社から症状固定を打診されることがありますが、医師の指示があるまでは断るようにしましょう。

2、医師に後遺障害診断書を作成してもらう

症状固定するまで治療を続けたら、医師に「後遺障害診断書」の作成を依頼しましょう。後遺障害診断書には、後遺障害の内容が事細かく記載され、等級認定の判断材料になります。診断書に記載された内容にミスや漏れがあった場合、等級が認定されなかったり、適切でない等級が認定されたりします。

後遺障害診断書は等級認定において非常に重要な書類になるため、記入内容に誤りや不足があるときは、担当医に追記を依頼しましょう。

3、加害者側の自賠責保険に必要書類を提出する

後遺障害診断書を入手したあとは、加害者側の自賠責保険に必要書類を提出します。このとき、事前認定か被害者請求かによって申請手続きが異なります。

事前認定では、加害者側の任意保険会社に後遺障害診断書を提出し、後の対応は任意保険会社に一任することになります。被害者請求では、被害者が他の必要書類を揃えた上で、直接加害者側の自賠責保険に書類を提出します。

4、結果の通知を受ける

必要書類を揃えて申請をすると、自賠責保険が損害保険料率算出機構に資料を回し、調査事務所が後遺障害についての調査を開始します。後遺障害認定の調査が終了すると、自賠責保険から被害者に対して直接結果が通知されます。

後遺障害等級12級の認定を受ける際の注意点

等級認定は厳格な審査のもとで行われるため、申請をする際には注意点をいくつか押さえておく必要があります。ここからは、後遺障害等級12級の認定を受けるためのポイントを解説します。

症状を客観的に証明できる診断書を提出する

後遺障害等級の申請においては、医師に作成してもらう後遺障害診断書の記載内容が重要になります。事故後に残った症状について、できるだけ正確に医師に伝えるようにしてください。交通事故がきっかけで発症したという因果関係を証明することも必要です。

記載漏れを防ぐためには、日頃から担当の医師と綿密なコミュニケーションを取ることを心がけましょう。

被害者請求を利用する

等級認定の申請方法は、事前認定と被害者請求の2種類があります。一般的には、被害者請求で行った方が適切な等級が認められやすくなります。事前認定では、申請手続きを加害者側の任意保険会社に一任することになります。

しかし、相手方の任意保険会社が、後遺障害の存在を証明するに足りる書類を過不足なく提出してくれるとは限りません一方で、被害者請求では、被害者自らが提出書類を収集するため、後遺障害の認定に有利になる資料を提出できます。

必要書類を準備するのは大変ですが、被害者請求の方が適切な等級認定を受けやすくなります。

弁護士に依頼する

後遺障害診断書を作成してもらった後は、弁護士に内容を確認してもらうのがおすすめです。後遺障害診断書は、医学的な書類であると同時に、後遺障害を証明するための法的な書類でもあります。

等級認定に必要な内容を後遺障害診断書に記載するためには、法的な知識が必要になります。そのため、いくら医師が医学に詳しかったとしても、法的に見て内容が不十分である場合があります。このとき、弁護士に依頼すれば、後遺障害診断書の内容をチェックしてもらえます。記載内容が不十分であった場合、弁護士から医師に診断書の加筆を直接依頼してくれます。

また、被害者請求する際には、弁護士が必要書類を代わりに収集してくれます。どのような書類が等級認定に有利になるかをしっかりと把握しているので、適切な等級認定を受けられる確率を大きく上げられます。

認定された後遺障害等級に納得できないときはどうする?

加害者側の自賠責保険に後遺障害の等級申請をしても、必ずしも申請が認められるわけではありません。では、後遺障害12級が認定される確率はどのくらいでしょうか。また、思っていた等級が認められなかったときはどうすれば良いでしょうか。

ここからは、12級の認定率と、認定結果に納得できない場合の対処法を解説します。

後遺障害12級の認定率は1%未満

交通事故による後遺障害の認定率は、全体のうち約5%とされています。また、損害保険料算出機構が発行する「自動車保険の概況2021年度版」によると、等級認定を受けた者のうち、12級が認定されたのは約16.21%となっています。

そのため、後遺障害の等級を申請した場合に、12級が認定される確率は1%未満ということになります。

認定結果に対しては異議申し立てができる

等級非該当の結果に納得いかないときは、自賠責保険に異議申立てができます。異議申立ての方法についても、事前認定と被害者請求の2通りがあります。こちらもやはり、事前認定では書類の不備が生じやすいため、被害者請求での異議申立てがおすすめになります。

異議申立てを成功させるためには、前回の申請で上手くいかなかった原因を分析することが重要です。等級非該当になった理由は必ず通知されますので、その内容を精査してみましょう。

等級認定を受けられなかった原因には、以下のものがあげられます。

  • 後遺障害診断書の記載内容が不十分
  • 提出資料が不足している
  • 必要な検査が実施されていない

これらの要因を分析し、当初の申請で不足していた資料を追加で提出するようにしましょう。

困ったときは弁護士に相談するのが大切

等級の変更が認められる確率は高くありません。そのため、異議申立ての際には入念な準備が不可欠です。このとき、交通事故に詳しい弁護士に相談すれば、等級が変更される見込みはどのくらいあるか、どのような書類を準備して異議申立てをすればいいかなどのアドバイスを受けられます。

POINT
実際に弁護士に依頼することで、被害者請求の手続きを一任できます。弁護士は後遺障害の証明に必要な書類や、後遺障害診断書の書き方を熟知しているため、適切な等級が認定される確率を大きく上げてくれるでしょう。

まとめ

後遺障害12級が認定されると、加害者に対して後遺障害慰謝料以外にも逸失利益を請求できます。ただし、後遺障害12級でも障がい者手帳を受け取るのは困難となります。また、後遺障害等級の申請は、必ずしも納得のいく結果になるとは限りません。そのときは、異議申立てを利用して、当初の申請で不足していた資料を追加提出しましょう。

後遺障害の分野は専門知識が必要なことが多いため、困ったときは弁護士に依頼するようにしてください。

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