交通事故の後遺障害は頚椎症でも認定される?むち打ちの場合はどうなるか

交通事故の後遺障害は頚椎症でも認定される?むち打ちの場合はどうなるか

頸部の後遺障害では、12級13号と14級9号の等級が認定されることになります。ほとんどの事例は14級9号が認定されますが、頚椎症では12級13号の認定が見込めます。

本記事では、頸部の後遺障害における等級認定のポイントについて解説します。

交通事故による後遺障害の頚椎症とは?

頚椎症は加齢によって発生する症状であり、神経脊髄が圧迫されることで手足にしびれなどが生じます。一方で、交通事故でむち打ちにあった場合においても、神経脊髄がダメージを受けて痛みやしびれが生じることがあります。まずはじめに、頚椎症の概要を解説します。

頚椎症とは

頚椎症とは、加齢によって頚椎の椎間板や椎骨が変形し、脊髄神経が圧迫されることで起こるさまざまな症状を指します。

くび(頸部)は、7つの椎骨と椎間板(椎骨の間に存在するクッションのような組織)によって構成されています。加齢が進むと、頚椎のクッションである椎間板の水分が失われて弾力性がなくなります。その結果、椎間板が徐々に潰れたりするなどして変形が生じます。

椎間板の変形は、加齢に伴って誰にでも起こるため、これ自体は病気や疾患に当たりません。ですが、椎間板の変形によって骨棘(骨が変形してできるトゲ状の突起物)ができると、脊柱管(脊髄神経が通るトンネル)の中の脊髄が圧迫されたり、椎間孔(脊椎の左右外側にある神経の出口)が狭くなったりします。その結果、手足に痛みやしびれが残るようになります。

痛みやしびれが伴う頚椎症は、圧迫された部位・状態によって「頚椎症性脊髄症」と「頚椎症性神経根症」にわかれます。

頚椎症性脊髄症

頚椎部における脊柱管内の脊髄が圧迫される疾患です。手を使った細かい作業が不自由になり、字を書くことや、箸を使った食事が困難になります。

また、脊髄そのものが圧迫されるため、手だけではなく下半身にも症状が出ます。具体的には、階段を降りにくくなったり、尿や便が出にくくなったりします。

頚椎症性神経根症

椎間孔が狭くなることで神経根が圧迫される疾患です。頚部を後ろにそらしたときに痛みが出ることがあり、歯磨き時のうがいが不自由になる場合があります。

また、腕や手にしびれが伴い、何も触っていないのに痛みが生じることがあります。脊髄は圧迫されていないため、下半身に異常が出ることはありません。

交通事故におけるむち打ちとは

むち打ちとは、交通事故などで強い衝撃を受けた際に、頚椎に負担がかかることで起こる症状です。衝撃によって首がむちのようにしなることから、むち打ちと呼ばれていますが、正式には「頸椎捻挫」「外傷性頸部症候群」などの傷病名で診断されます。

また、交通事故以前に加齢で椎間板が変形していた場合、交通事故によるむち打ちがきっかけで、頚椎症(頚椎症性脊髄症または頚椎症性神経根症)が発生することがあります。

POINT
むち打ちの特徴として、事故から数日経過してから痛みやしびれが発生することが挙げられます。そのため、事故直後に自覚症状がなくても、まずは整形外科などで診断を受けるようにしましょう。

頸部の後遺障害等級認定はどの等級になる?

頸部の後遺障害の代表例はむち打ちになります。では、むち打ちでは後遺障害等級は何級になるのでしょうか。

むち打ちで認められる後遺障害等級は12級13号と14級9号の2つです。それぞれの等級の認定基準は以下の通りです。

12級13号の認定基準

自賠責保険は、12級13号を「局部に頑固な神経症状を残すもの」と定めています。これだけでは少し分かりにくいかもしれませんが、MRIなどの画像検査から、むち打ち症の存在を医学的かつ客観的に証明できた場合に12級13号が認定されます。

ただし、むち打ちは症状を裏付ける客観的な医学的所見が見つかりにくく、12級13号はほとんど認定されません。

POINT
MRIなどの画像検査の結果、椎間板の変性、骨棘形成、脊柱管狭窄などによって、脊髄もしくは神経根の圧迫が確認された場合に12級13号が認められます。

14級9号の認定基準

自賠責保険は、14級9号を「局部に神経症状を残すもの」と定めています。画像検査の結果ではむち打ち症の存在を証明できないものの、治療経過などから症状を説明できる場合は14級9号が認定されます。

一般的なむち打ちでは、14級9号の認定を受けるケースがほとんどになります。

頸部の後遺障害慰謝料の相場はいくらくらい?

交通事故による後遺障害で等級認定を受けた場合、加害者に対して慰謝料を請求できます。慰謝料の計算方法には「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つがあり、それぞれの基準によって慰謝料の金額が異なります。

ここからは、交通事故で頸部に後遺障害が残った場合に、加害者に対して請求できる慰謝料の相場を解説します。

自賠責基準での相場

相手方の自賠責保険が用いる慰謝料の算定基準です。車両を運転する者は、必ず自賠責保険に加入しなければならないため、被害者は確実に自賠責保険から保険金を受け取れます。ですが、自賠責保険は事故の被害者への最低限の補償を目的とするものであり、慰謝料の金額は非常に低額になっています。

頸部の後遺障害で12級と14級の等級認定を受けた場合、自賠責基準で支払われる慰謝料の相場は以下の通りです。

等級自賠責基準の慰謝料相場
12級94万円
14級32万円

任意保険基準での慰謝料相場

相手方の任意保険会社が用いる慰謝料の算定基準です。交通事故では、損害賠償の金額など取り決めるために「示談交渉」という話し合いがおこなわれます。このとき、相手方の任意保険会社は、任意保険基準で算出した慰謝料の金額を提示してきます。

任意保険基準は各保険会社が個別に設定している上に、詳しい計算方法は非公開となっています。そのため、外部の人が任意保険基準の具体的な金額を知ることはできません。

一般的には自賠責基準よりも若干高額の慰謝料が支払われますが、それでも本来補償されるべき金額を大きく下回るのが通常です。また、保険会社によっては自賠責基準とほぼ同程度の金額になります。

弁護士基準での慰謝料相場

弁護士や裁判所が用いる慰謝料の算定基準です。弁護士基準は、日弁連交通事故相談センターが発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」に算定方法が詳しく掲載されています。

過去の判例を基に作成されているため「裁判基準」とも呼ばれ、法的に正当な基準となります。そして、裁判基準は、被害者3つの算定基準の中で慰謝料の金額が最も高額になります。

頸部の後遺障害で12級と14級の等級認定を受けた場合、弁護士基準で請求できる慰謝料の相場は以下の通りです。

等級弁護士基準の慰謝料相場
12級290万円
14級110万円

自賠責基準と比較すると、12級では2倍以上、14級では3倍以上の慰謝料が支払われます。そのため、交通事故で後遺障害を負ったときは、示談交渉で弁護士基準の金額に近づけるように交渉することになります。

頸部の後遺障害等級認定を獲得するためのポイント

後遺障害等級は慰謝料の金額に直結するため、等級認定の審査は厳格になされます。適切な方法で申請しなければ、後遺障害が残っていたとしても審査には通らないので注意しましょう。

ここからは、交通事故で頸部の後遺障害が残ったときに、適切な等級認定を獲得するためのポイントを紹介します。

ポイント① 検査によって症状が残っていることを裏付ける

適切な等級認定を受けるためには、後遺障害の症状を客観的に説明しなければなりません。頸部の後遺障害の存在を裏付けるために、被害者ができることは以下の通りになります。

MRI画像を撮影する

頸部の後遺障害によって手足にしびれが出ているときは、病院でMRIを撮影してもらってください。事故の衝撃によって神経根が圧迫されている場合、MRIを撮影することで異常所見を確認できます。

特に、12級13号の認定がされるためには、画像による症状の説明が不可欠になります。レントゲンなどの画像検査では、神経根の圧迫を確認しにくいため、必ずMRI画像を撮るようにしてください。

 なお、病院によってはMRIを撮影しようとしないケースがあります。その場合は、こちらからMRIを撮影してもらうように頼みましょう。また、通院している病院にMRIが整備されていない場合は、MRIがある他院への招待状を書いてもらいましょう。

神経学的検査を受ける

MRI画像でも異常所見が見られない場合は、「神経学的検査」によって痛みやしびれなどの自覚症状を確かめます。神経学的検査とは、病変部に圧迫を加えることで症状があらわれるか確認するテストです。症状を誘発するテストなので、医師の指示のもとでおこなうようにしてください。

頸部の神経学的検査では、主に「ジャクソンテスト」と「スパークリングテスト」が用いられます。それぞれの検査方法は以下の通りです。

ジャクソンテスト
医師が患者の頭部を背屈させ、そのまま下方に抑え込みます。このときに、上肢にしびれなどの症状が出ると陽性と判断されます。
スパークリングテスト
医師が患者の頭部を症状が出る方向へ傾け、そのまま後ろに曲げて圧迫します。このときに、上肢にしびれなどの症状が出ると陽性と判断されます。

むち打ちでは画像検査でも異常所見を確認できない場合も多くありますが、自覚症状を的確に伝えることによって14級9号の等級認定を受けられる場合があります。そのためには、神経学的検査を受けることが有効になります。

ポイント② 後遺障害発生の原因が交通事故であることを証明する

後遺障害が残ったとしても、その原因が交通事故でない場合は等級が認定されません。

むち打ちは事故直後に症状が出にくく、しばらく時間が経過してから痛みやしびれが生じます。通院が遅れると、交通事故と後遺障害との因果関係を証明できなくなるので、症状を自覚した段階で医師の診断を受けることが大切になります。

また、頚椎症は本来、加齢による椎間板変性によって起こるものです。そのため、被害者の椎間板がもともと変形していた場合は、交通事故と後遺障害との因果関係を証明できないのではと思われるかもしれません。

 この点、椎間板の変性は誰にでも起こりうる現象であるため、事故前から変性がみられた場合についても、基本的に因果関係は否定されません。

ポイント③ 通院を怠らないようにする

等級認定されるためには、症状固定(これ以上治療を続けても症状の回復が見込めない状態)まで通院を継続していた実績が必要です。症状固定までに通院をやめてしまうと、等級を認定するほどの症状ではないと審査機関に判断されかねません。

また、一度通院をやめてから、再び症状がひどくなって通院を再開したケースにおいても、症状の一貫性・連続性が否定され、等級が認定されないおそれがあります。事故後の対応で忙しくなる時期でも、定期的な通院は欠かさないようにしましょう。

弁護士に相談すれば、正しい通院の仕方についてアドバイスがもらえます。困ったときは一度弁護士に相談してみてください。

ポイント④ 適切な後遺障害診断書を作成してもらう

等級認定は医師が作成する後遺障害診断書の内容によって決まります。したがって、診断書の内容に不備があると、等級が認定される確率は大きく減少します。

しかし、全ての医師が後遺障害の等級認定に詳しいわけではありません。医師によっては、あやふやな表現が多い診断書が作成されることもあります。

このとき、弁護士に依頼すれば、医師が書いた診断書の内容を確認してくれます。弁護士は等級が認定されやすい診断書の書き方を熟知しているため、記載内容が不正確であれば、医師に訂正してもらうように取り計らってくれます。

被害者の方だけで診断書の内容を精査するのは難しいため、一度弁護士に相談して確認してもらうのがおすすめです。

まとめ

交通事故にあって頸部の後遺障害が残った場合、加害者に後遺障害慰謝料を請求できます。ただし、慰謝料を請求するためには後遺障害の等級認定を受けなければなりません。

頸部の後遺障害で認定される等級は、主に12級13号と14級9号になります。一般的なむち打ちは14級9号が認定されるケースがほとんどですが、神経脊髄の圧迫がMRIで確認できた場合は、12級13号が認定されることもあります。当然、申請方法によっては等級が認定されないこともあります。

適切な等級認定を受けるためには、弁護士のサポートを受けることが非常に有効です。申請手続きに不安がある方は、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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