個人再生(個人民事再生)を行うための条件とは?

個人再生を行うためにはいくつか条件がありますが、裁判所によって再生計画を認可してもらう必要があります。
個人再生の条件を満たし、裁判所から認可を得ることができれば、借金を概ね1/5程度まで圧縮することができます。

個人再生を行うにあたって条件となる部分を詳しく解説していきます。

個人再生の簡単な説明

個人再生とは、返済不能状態の借金を概ね1/5程度に圧縮し、原則3年で返済していく手続きです。残りの借金については返済を免除してもらうことになります。
ただし、裁判所に再生計画を提出して、認めてもらう必要があります。

個人再生の種類

個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類の手続きがあります。
小規模個人再生は、将来に渡り継続的に収入を得られる見込みがある方が対象です。パートやアルバイトの方であっても利用することができる場合もあります。
なお、債権者の半数以上が同意しない場合は利用できません。

給与所得者等再生は、主に安定した収入が得られる会社員が対象です。
小規模再生と異なり債権者の同意を得る必要はありませんが、返済額が高額になる可能性があります。

このように、個人再生には2種類の手続きがありますが、実際に個人再生をした約9割の方は小規模個人再生を利用しています。
理由として、小規模個人再生では、一定の決まりによって算出される最低弁済額と基本的にはお持ちの財産の総額を比較して、高い方が個人再生後の圧縮された金額となります。
給与所得者等再生はさらに可処分所得というものを計算して3つの金額中で一番高い金額を返済することになるのですが、可処分所得が高額になり、返済額が高額になる場合が多いからです。

個人再生は2種類あり、まずは小規模個人再生を目指します。
給与所得者等再生は返済額が高くなる可能性があることがポイントです。

個人再生のメリット

個人再生を行う目的は、借金を減額することです。例えば、3000万円以上の債務を負担している人は、10分の1まで減らすことができます。
また、住宅ローン特則を利用することでマイホームを手元に残すことができる可能性があります。そして、個人再生は借金の理由が問われず、資格や職業の制限もありません。

自己破産と異なり、返済は残りますが、家などの一部財産を残せる可能性があります。

個人再生のデメリット

これは債務整理全般に言えることですが、一定期間ブラックリストに掲載されることで借入やクレジットカードの利用ができなくなります。
個人再生と自己破産は裁判所を介する手続きとなっており、書類の準備等に手間がかかるほか、行政機関が発行する官報という情報誌に住所や氏名が掲載されます。
個人再生の条件として、債務の返済を継続しなければならないので、安定した収入がなければ利用できません。

個人再生での弁済額

個人再生での弁済額は3つの計算方法から算出されます。
小規模個人再生では最低弁済額と清算価値保障原則で出された返済額を比較して高い方を返済額とします。
まずは、最低弁済額と清算価値保障原則の計算方法から見ていきましょう。

最低弁済額

借金総額最低弁済額
100万円未満全額
100万円以上500万円未満100万円
500万円以上1500万円未満借金総額の5分の1
1500万円以上3000万円未満300万円
3000万円以上5000万円未満借金総額の10分の1

最低弁済額では債務総額によって弁済額が異なります。100万円未満では借金の圧縮がされません。
なお、住宅ローンを除く債務総額が5000万円の場合、個人再生の手続きはできません。
元金だけでなく、利息や遅延損害金を含めた債務総額が5000万円以下でなければいけません。

清算価値保障原則

清算価値保障原則とは、自分が所有する財産をすべて換金した場合の金額を出し、それを基準として清算価値を上回るように弁済額を算出する方法です。

清算価値に含まれるもの
・現金
・預貯金
・生命保険の解約返戻金
・社内預金、財形貯蓄
・有価証券
・退職金の見込額
・ローンの残っていない自動車、バイク
・貸付金、過払い金
・20万円以上の高価な品物(貴金属など)
・評価額からローン残高を差し引いた不動産

なお、裁判所ごとに異なる点もありますので、清算価値保障原則にあてはまりそうな場合は、弁護士に依頼しておくほうが準備をスムーズにできるでしょう。

給与所得者等再生で利用する可処分所得基準

給与所得者等再生では、上記2つの算出方法に加え、可処分所得基準が加わります。

可処分所得基準は、可処分所得の2年分となります。
可処分所得は、給料などの収入から、税金と社会保険料、最低限の生活費を差し引いた額です。最低限の生活費は、その人の住んでいる場所や家族構成等を考慮するため、変動します。

個人再生(個人民事再生)の条件とは?

個人再生の申立ては無条件に行えるわけではなく、一定の条件を満たしている必要があります。特に、個人再生を行うには、継続的、または、反復的な収入があるかが重要ですので、現状で個人再生の手続きを行えるか不明な方は確認してください。

再生手続開始要件があること

個人再生を申し立てるためには、債務者に再生手続開始要件があることが必要です。
再生手続開始要件は、破産手続開始の原因となる事実の生じるおそれがあるとき、又は債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済できないときに認められます(民事再生法21条第1項)。

破産手続開始の原因となる事実とは、支払不能と債務超過を指します。すなわち、再生手続開始原因である「破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれ」とは、支払不能又は債務超過になってしまうおそれがあることを意味します。
では、支払不能や債務超過となる「おそれ」がある場合ではなく、実際に支払不能や債務超過に陥ってしまった場合は、再生手続の申し立てはできないのでしょうか。
この点、「破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれ」には、実際に支払不能や債務超過に陥った場合も当てはまると解釈されています。
なお、個人破産の場合、債務超過は破産手続開始の原因には当てはまりません。個人破産では、支払不能に陥った場合のみ、破産手続開始の原因に該当します。

「事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済できないとき」とは、弁済を続けていくと事業の継続が困難となることを意味します。例えば、事業で利用している土地や建物、設備などを売却して弁済資金を調達した場合、債務の弁済をすることは可能ですが、今後事業を継続することは不可能になります。このように、事業の継続が困難になるほど債務を弁済できないときに、債務者に再生手続開始原因が認められます。

再生手続開始要件についてわからない場合は、無料相談で分かりやすく説明させてください。

将来的に継続又は反復した収入があること

個人再生を申し立てるには、再生計画に基づいた弁済をしなければならないので、将来的に継続又は反復した収入があることが必要です。
では、どのような場合に、「将来的に継続又は反復した収入がある」という条件が満たされるのでしょうか。個別の事例を具体的に見ていきましょう。

個人事業主の場合は、毎月安定した収入が得られない場合でも、3ヶ月に1回の割合で弁済を行えるならば、「将来的に継続又は反復した収入がある」と認められます。
アルバイトとして雇用されている人の場合は、相当期間の雇用が継続している実績がある場合は、「将来的に継続又は反復した収入」があると認められます。
しかし、短期間のアルバイトを転々としている場合は、「将来的に継続又は反復した収入」があるとは認められず、個人再生を申し立てられない可能性があります。

年金受給者の場合は、終身年金の受給者であれば「将来的に継続又は反復した収入がある」と認められます。しかし、障害年金の受給者は、将来障害がなくなったときに障害年金が受給されなくなるので、「将来的に継続又は反復した収入がある」とは認められない可能性があります。
ただし、障害の内容及び程度について個別判断した結果、個人再生の申し立てが認められる場合もあります。

継続又は反復した収入という条件を満たすかは、その人の状況によるところも大きいため、詳細をお聞かせください。

債務総額が5000万円以下であること

個人再生を申し立てるには、住宅ローンを除く債務総額が5000万円以下でなければなりません。
利息と遅延損害金を含めた債務総額が5000万円以下でなければならないので、債務の弁済期が過ぎてから、弁済することなく長期間放置した結果、債務総額が5000万円を超えてしまった場合は、個人再生を申し立てられないので注意しましょう。

債権者の半数以上の不同意がないこと(小規模個人再生のみ)

個人再生によって債務者の債務がカットされると、その分債権者は損してしまいます。債務者にまだ支払い能力があると判断した場合、債権者が個人再生に不同意をすることが可能です。
そして、不同意をする債権者の数又はその再生債権額が半数を超えてしまうと、債務者は個人再生をすることができません。
なお、給与所得者等再生の場合は、債権者が不同意をした場合でも、問題なく再生手続を行えます。

給与変動の幅が年間約20%以下であること(給与所得者等再生のみ)

給与所得者等再生を申し出る場合は、安定した収入を得られる会社員などの職業に就いていなければなりません。そして、給与額の変動の幅が年間約20%以下の必要があります。
なお、小規模個人再生の場合は、給与額の変動の幅が年間約20%以下の必要はありません。

不同意とする債権者の数又はその再生債権額が債権者の頭数又は再生債権の総額の半数を超えてしまうと、小規模個人再生の場合は再生手続の申し出ができなくなります。一方で、給与所得者等再生の場合は、弁済額が多い代わりに、債権者の反対意見が再生手続の続行に影響を与えることはありません。しかし、債権者が不同意しているにもかかわらず再生計画が認められてしまうと、債権者が不利益を負ってしまうおそれがあります。債権者が不測の損害を被らないために、以下の場合は給与所得者等再生を利用できません。

・過去に給与所得者等再生における再生が遂行され、再生計画認可決定が確定してから7年を経過していない場合(民事再生法239条5項2号イ)。

・民事再生法235条1項の免責(ハードシップ免責)の決定を受けたことがあり、ハードシップ免責許可決定が確定してから7年を経過していない場合(民事再生法239条5項2号ロ)。

・過去に破産手続における免責許可決定を受けたことがあり、当該免責の決定が確定してから7年を経過していない場合(民事再生法239条5項2号ハ)。

これらに該当する場合には、給与所得者等再生の手続を申し出ることはできません。また、再生手続が開始していた場合は、途中段階であっても再生計画は廃止になります。

>小規模個人再生と給与所得者等再生で条件の違いは知っておきたいポイントとなりますので、抑えておきましょう。

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