個人再生と相続放棄が重なったときの判断基準と注意点を解説

「個人再生の手続き中に親が亡くなって相続が発生した…相続放棄したほうが返済に有利なの?」

「相続した財産は、個人再生の審査に影響してしまうの?」

結論、相続放棄を選ぶべきかどうかは相続財産の内容・借金の額・個人再生の進捗状況によって結論が異なり、判断を誤ると再生計画が認可されないだけでなく、相続放棄の機会そのものを失うこともあります

個人再生の手続き中に相続が発生すると、債務整理と相続の両手続きが同時進行することになります。

相続放棄の3か月という期限と個人再生の手続き期間が競合するため、どちらをどう動かすかを早期に整理しておく必要があります。

本記事では、個人再生と相続放棄が重なった場合の基本的な関係整理・手続き中に相続が発生したときの影響・相続放棄を選ぶべきかの判断軸・自己破産との違いを詳しく解説します。

遺産分割協議で気をつけることや、両手続きが重なった場合の具体的な動き方も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

執筆・監修者、豊川祐行弁護士

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。

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この記事の目次

個人再生と相続放棄の関係:基本的な整理

借金の整理と相続の問題が同時に発生すると、どちらをどう扱えばよいか判断に迷うケースは少なくありません

「相続放棄すれば個人再生が有利に進むのでは」と考える方もいますが、状況によっては逆効果になる場合もあります。

たとえば、相続放棄によって本来受け取れたプラスの財産を手放した結果、返済計画の組み立てが難しくなるケースがその一例です。

両制度の基本を正確に理解することが、判断を誤らないための出発点です。

個人再生とは:借金を減額して返済する手続き

個人再生は、裁判所を通じて借金の元本を大幅に減額し、残額を原則3年かけて返済する法的手続きです。

自己破産と異なり、持ち家や財産を一定程度守りながら債務整理できる点が特徴です。

個人再生の主な特徴
  • 減額後の借金を原則3年(最長5年)で分割返済する
  • 住宅ローン特則を利用すれば、マイホームを手放さずに済む場合がある
  • 給与所得者等再生と小規模個人再生の2種類があり、対象者の状況によって選択が異なる

個人再生を利用するには、継続的な収入があること、借金総額が一定の範囲内であることなど、裁判所が定める要件を満たす必要があります。

手続き中は裁判所や再生委員への財産・収入の開示が求められるため、相続によって財産状況が変化した場合には、その内容が手続きに影響することがあります。

個人再生を「検討している段階」と「すでに申立て後の手続き中」では、相続発生時の影響の度合いが異なります。申立て前であれば相続財産の有無が返済計画の前提条件に組み込まれ、申立て後に相続が発生した場合は裁判所への報告義務が生じ、再生計画の内容を見直す必要が出てくることがあります。
まず「自分が申立て前か申立て後か」を意識しておくことが、判断の出発点になりますよ。

相続放棄とは:相続する権利を手放す手続き

相続放棄は、亡くなった方の財産も負債も一切引き継がないことを、家庭裁判所に申述する手続きです。

プラスの財産よりも負債が多い場合に利用されることが多く、相続開始を知った日から原則3か月以内に申述する必要があります。

相続放棄を選ぶ主な場面
  • 被相続人(亡くなった方)の負債がプラスの財産を上回る場合
  • 相続トラブルに巻き込まれたくない場合
  • 自分自身も債務整理中であり、財産取得が手続きに影響すると判断した場合

相続放棄は一度申述が受理されると原則として撤回できないため、「とりあえず放棄しておけば安心」という感覚で判断するのは危険です。

個人再生の手続き中に相続が発生した場合、相続財産を取得すると返済原資として裁判所に評価される可能性があり、これは返済計画で定める弁済額の引き上げを求められる方向に働く場合があります。

一方、相続放棄をすれば財産は増えないため再生計画への直接的な影響は生じにくい面がありますが、受け取れたはずのプラス財産まで失うことになるため、放棄が必ずしも有利とは限りません

相続放棄の3か月という期限と個人再生の手続き期間は重なることがあり、たとえば個人再生の申立て直後に相続が発生した場合、手続きの対応に追われながら3か月の期限内に放棄の判断を迫られるケースも起こりえます。

相続財産の種類・金額・個人再生の進捗状況によって判断の方向性は変わるため、自分の状況を専門家に伝えたうえで確認することが望ましいといえます。

相続放棄は撤回できません。「とりあえず放棄」ではなく、財産の中身を確認してから判断しましょうね。

個人再生の手続き中に相続が発生した場合の影響

個人再生の手続き中に相続が発生すると、再生計画の内容や審査に直接影響する可能性があります

相続は突然発生するため、「手続きが終わるまで待ってほしい」とはいかないのが実情で、タイミングによって対応の優先順位が変わるため自分がどの段階にいるかを把握しておくことが重要です。

申立て前と申立て後で相続財産の扱いは変わる

個人再生の手続きは大きく「申立て前(弁護士が受任してから申立てまで)」と「申立て後(裁判所に申立てをしてから認可まで)」に分かれ、相続が発生したタイミングがどちらに当たるかで、財産の扱い方と取るべき行動が変わります

タイミング相続財産の扱い取るべき行動
申立て前(弁護士受任後〜申立てまで)申立て時点の財産として計上される申立書類に正確に記載する。意図的な未記載は信頼性を損なう
申立て後(申立て〜認可まで)提出済みの財産目録・再生計画案に修正が必要になる場合がある速やかに担当弁護士へ連絡し、裁判所への報告・書類修正を行う

申立て後に相続が発生した場合は、すでに提出した財産目録や再生計画案に修正が必要になるケースがあり、裁判所はこの修正内容をもとに計画の妥当性を再度確認するため、審査のやり直しや認可時期の遅延といった形で手続きの進行に影響が出ることもあります。

なお、まだ弁護士に相談していない段階で相続が発生した場合は、相続放棄の3か月という期限が迫っている可能性があるため、借金問題と相続問題をあわせて相談できる弁護士への早期連絡が最初の行動として優先されます。

相続の事実を隠したり放置したりすることは手続き上のリスクになります。相続が発生したと分かった時点で、すぐに担当弁護士に連絡することが出発点です。
相続のタイミングで対応が変わります。発生に気づいたら、まず担当弁護士へ一報を入れましょうね。

プラスの財産を相続した場合:清算価値が上がり返済額が増える可能性

現金・不動産・有価証券などのプラスの財産を相続した場合、個人再生の返済額に影響する可能性があります

個人再生では「清算価値保障原則」という考え方が適用され、これは破産した場合に債権者が回収できるであろう金額(清算価値)を下回る返済額は認められないというルールです。

相続によって財産が増えると、この清算価値が上昇し、結果として最低返済額が引き上げられる可能性があります。

申立て後に不動産や預貯金を相続した場合、それらは財産として評価され、すでに認可された再生計画がある段階であれば計画の変更が必要になるケースも出てきます。

具体的には、相続した不動産の評価額や預貯金の残高が清算価値の計算に加算され、毎月の返済額や総返済額が増える方向に修正されることがあります。

一方で、相続財産を返済原資として活用することで再生計画を早期に完了させるという選択肢も生まれますが、この場合も裁判所への報告と計画変更の手続きが必要になるため担当弁護士を通じて進める必要があります。

プラスの財産を相続したこと自体が「悪いこと」ではなく、その財産をどう扱うかが問われる局面なので、担当弁護士と相談しながら返済計画への影響を正確に把握することが重要です。

プラス財産は清算価値を押し上げます。早期完済の原資にもなるので、扱い方を弁護士と相談しましょうね。

マイナスの財産(借金)を相続した場合:負債が増える可能性

被相続人が借金を抱えていた場合、その負債も相続の対象になり、個人再生の手続き中にこうした債務を相続すると再生計画に組み込まれる負債総額が変わるため手続きの見直しが必要になることがあります

このような場合に検討されるのが「相続放棄」ですが、相続放棄を行うとプラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄することになり、借金だけを選択的に放棄することはできない点に注意が必要です。

また、相続放棄には「相続の開始を知ったときから原則3か月以内」という期限があり、個人再生の手続きと並行して動く必要があるため時間的な余裕はほとんどありません。

相続放棄の期限と個人再生の手続き期間が重なった場合、実務上は弁護士が両方の手続きを同時に管理することになるため、相続発生を知った時点で担当弁護士にすぐ伝え、放棄するかどうかの判断を優先的に行うことが重要です。

相続放棄の判断目安
  • 有利になりやすいケース:相続財産のほとんどが借金などのマイナス財産で、プラスの財産がほとんどない場合。放棄によって負債の増加を防ぎ、個人再生の返済計画を維持しやすくなる
  • 不利になりやすいケース:プラスの財産(現金・不動産など)が相当程度ある場合。放棄によってその財産も失うため返済原資が減り、かえって再生計画の実現が難しくなることがある

どちらを選ぶかは、相続財産の内容と個人再生の進捗状況を合わせて判断する必要があります。

借金だけを選んで放棄はできません。プラスもマイナスも含めた全体で判断してくださいね。

相続が発生したら裁判所と担当弁護士への報告が必要

個人再生の手続き中に相続が発生した場合、速やかに担当弁護士と裁判所に報告することが求められます

報告が必要な主な理由
  • 財産目録や再生計画案に修正が必要になる場合がある
  • 相続放棄の3か月という期限を逃さないための判断が必要になる
  • 報告を怠ると、手続きの信頼性を損ない、認可が取り消されるリスクがある

個人再生の手続きは申立人が誠実に財産状況を開示することを前提に進むため、相続という重大な財産変動を報告しないまま手続きを進めることは、裁判所に対する不誠実な対応とみなされる可能性があります。

「手続きが複雑になるから黙っておこう」という判断は後から大きなリスクになるため、相続が発生したと気づいた時点でまず担当弁護士に連絡することが最優先の行動です。

隠すのが一番のリスク。相続に気づいた瞬間に担当弁護士へ連絡、これを徹底してくださいね。

個人再生中に相続放棄を選ぶべきかの判断軸

個人再生の手続き中に相続が発生した場合、相続放棄が手続きに有利に働くとは限りません

判断の前提として、自分が「個人再生を検討中(申立て前)」なのか「すでに申立て後・認可前の手続き中」なのかによって相続放棄の影響が異なる点にも注意が必要です。

申立て前であれば相続財産の有無が申立て内容そのものに影響し、申立て後であれば裁判所への報告義務や再生計画の変更が問題になります。

相続放棄が有利になるケース:負債が多い相続の場合

被相続人の借金が財産を上回る場合、相続放棄は個人再生の観点からも合理的な選択肢になります

相続で新たな債務を引き継ぐと、再生計画で返済しなければならない金額が増える方向に働きます。相続財産の大部分が負債であれば、放棄することで新たな債務の流入を防げます。債権者が増えたり返済計画の修正が必要になったりと、手続きが複雑になる事態も避けられます。

被相続人が多額の連帯保証債務を負っていたケースや、不動産に多数の抵当権が設定されており売却しても残債が残るようなケースでは、相続放棄によって新たな債務の流入を防ぐことができます。

個人再生の手続きでは申立て時点の債務総額と保有資産が審査の基準になり、相続によって負債が増加すると再生計画の内容に悪影響を及ぼす可能性があるため、相続放棄の検討は早期に行うことが求められます。

「負債が多そうに見える」という印象だけで判断するのは危険です。相続財産の調査(プラス・マイナス両方)を確認したうえで放棄の可否を判断することが前提になります。この調査は弁護士や司法書士に依頼することで一通り確認してもらえます。
借金が大半の相続なら放棄が合理的。ただし印象だけでなく財産調査の結果で判断してくださいね。

相続放棄が不利になるケース:プラスの財産がある場合

相続財産にプラスの価値がある場合、相続放棄は個人再生の手続きにとってむしろ不利になります

個人再生では「清算価値保障原則」により、保有資産に相当する額は最低限返済しなければなりません。相続で得た財産は保有資産として計上されるため、返済総額が増える方向に働きます。

かといってその財産を放棄してしまうと、今度は再生計画の返済原資が減ってしまいます。その結果、最低限の弁済額を確保できず、計画が認可されにくくなる可能性があります。

清算価値保障原則とは、個人再生において「もし破産した場合に債権者が受け取れる金額」以上を返済しなければならないというルールで、相続によって不動産や預貯金などのプラス財産を取得した場合その価値は清算価値の計算に算入されます。

ここで相続放棄をしてしまうと財産そのものは手元に残りませんが、放棄した時期や経緯・財産の規模などによっては「放棄した財産の価値が清算価値の算定に考慮される」と裁判所に判断されるケースがあり、放棄すれば必ず清算価値から外れるとは限りません

また、相続財産が返済原資として活用できる状況であればそれを活かして再生計画の弁済額を確保するほうが計画認可の可能性が高まるため、相続放棄は「借金から逃れる手段」として単純に使えるものではなく手続き全体への影響を踏まえた判断が必要です。

プラス財産があるなら放棄は不利になりがち。放棄しても清算価値に考慮される場合もあるんですよ。

相続放棄が「詐害行為」とみなされるリスク

相続放棄は、状況によっては詐害行為として扱われ、債権者から取消しを求められるリスクがあります。

最高裁判所の判例では、相続放棄は詐害行為取消権の対象にならないとする立場が示されています。相続放棄は「財産を積極的に処分する行為」ではなく、「相続を受けないという意思表示」だと考えられるためです。したがって、一般的な相続放棄であれば、詐害行為として取り消される可能性は低いといえます。

ただし、個人再生の手続き中に相続放棄を行う場合は裁判所への報告義務が生じることがあり、報告義務が生じる主な場面としては申立て後に新たな財産の変動があった場合や裁判所から財産目録の補正を求められた場合などが挙げられます。

相続放棄の事実を隠したまま手続きを進めると、裁判所からの信頼を損ない、再生計画の不認可や手続きの棄却といった重大な不利益につながるおそれがあるため、弁護士や司法書士を通じて適切なタイミングで裁判所に報告することが重要です。

相続放棄自体は原則詐害行為になりませんが、隠すのはNG。適切なタイミングで裁判所に報告を。

相続放棄の3ヶ月期限と、期限を過ぎてしまった場合の対処

相続放棄には、相続開始を知った日から3ヶ月以内という期限があり、個人再生の手続き中であっても延長されません

3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しなければ相続放棄はできなくなり、個人再生の手続きに追われているうちに期限が過ぎるケースもあります。

民法上、相続放棄の申述期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月とされており、個人再生の手続き中は弁護士や司法書士が代理人として動いているケースが多いため、相続の発生をすぐに代理人に伝えることが最優先です。

期限を過ぎた後でも、家庭裁判所に対して「熟慮期間の伸長申立て」を行うことで審査の期間を延ばせる場合があります。また、相続財産の存在を知らなかった等の事情がある場合には期限後でも相続放棄が認められるケースが判例上存在しますが、これは例外的な取扱いであり認められるかどうかは事情次第です。

期限を過ぎた場合は、速やかに専門家に相談して対応策を検討することが求められ、個人再生中の相続放棄は相続財産の内容・手続きの進捗・期限の残り日数という3つの要素を組み合わせて判断する必要があります。

3ヶ月は個人再生中でも延びません。過ぎても伸長申立て等の道はあるので、まず専門家に相談を。

個人再生中の遺産分割協議で気をつけること

個人再生の手続き中に相続が発生すると、遺産分割協議への対応を誤ることで手続き全体に悪影響が出るリスクがあります。

なお「相続放棄すれば個人再生に有利になるのか」という点について結論を先に述べると、相続放棄は状況によって有利にも不利にもなり得ます。

プラスの財産が多い相続であれば放棄することで返済能力の増加を避けられる一方、手続きの段階や放棄のタイミングによっては裁判所から問題視される場合もあります(詳細は前のセクション「個人再生中に相続放棄を選ぶべきかの判断軸」で整理しています)。

個人再生中でも遺産分割協議には参加できる

個人再生の手続き中であっても相続人としての権利は失われず、遺産分割協議に参加すること自体は法律上問題ありません

ただし、相続によって取得した財産は個人再生の手続きにおける財産状況の申告に影響します。

相続財産を取得した場合、その内容を裁判所に報告する義務が生じる可能性があり、手続きの進行段階によっては再生計画案の修正が必要になるケースもあります。

この「修正」は、相続財産の取得によって返済能力が上がったとみなされ、弁済額の引き上げが求められる方向での変更となることが多い点に注意が必要です。

手続きの段階による対応の違い
  • 申立て前:相続財産を財産目録に含めて申立てを行う
  • 申立て後・認可前:取得した相続財産を速やかに報告し、計画案の修正を検討する
  • 認可後:影響の出方がさらに異なる

自分がどの段階にいるかを担当の弁護士・司法書士に確認することが、対応の第一歩となります。

「手続き中だから受け取れない」は誤解。根拠のない放棄は問題視されるので、まず専門家に報告を。

自分に不利な分割内容にすると否認されるリスク

個人再生の手続き中に、意図的に自分の取得分を少なくした遺産分割協議を行うと、裁判所から「不当な財産隠し」とみなされる可能性があります。

個人再生では債権者への公平な弁済が原則であり、本来受け取れるはずの財産を意図的に放棄・減少させる行為は債権者を害する行為として否認される可能性があります。

否認されると、遺産分割協議の結果が無効とされ分割をやり直さなければならなくなるほか、場合によっては個人再生の手続き自体が棄却されることもあり、棄却された場合は再申立てが必要になるだけでなくその間に債権者からの強制執行が再開されるリスクも生じます。

否認リスクが高まる遺産分割の例
  • 法定相続分と比べて著しく少ない取得分を合意している
  • 特定の相続人に財産を集中させる内容になっている
  • 協議のタイミングが個人再生の申立ての直前・直後である(目安として数か月以内が特に注意を要するとされることが多いが、具体的な範囲は担当専門家に確認が必要)

これらに該当する場合、裁判所や再生委員から協議内容の合理的な説明を求められることがあり、「家族間の話し合いで決めた」という事情だけでは手続き上の説明として不十分とみなされるケースがあります。

また、個人再生の申立て時には財産目録の提出が必要で、相続発生のタイミングによっては協議中の相続財産についても目録への記載が求められるため、記載漏れや虚偽記載を避け、相続が発生した事実と協議の状況は速やかに担当の弁護士・司法書士に報告することが必要です。

「自分の取り分を減らす」協議は否認リスク大。家族間の合意でも合理的な説明が必要ですよ。

他の相続人との関係と、個人再生手続き中の立場

遺産分割協議は相続人全員で行うものですが、個人再生の手続き中という立場は他の相続人との関係にも影響を与えることがあります

個人再生の手続き中であることを他の相続人に開示するかどうかは法律上の義務ではありませんが、自分が取得できる財産の範囲や処分の自由度が通常と異なる場合があるため、協議が難航するケースもあります。

また、相続人の中に債権者がいる場合や相続財産に債務が含まれる場合は、さらに複雑な調整が必要になり、相続財産の中にプラスの財産だけでなくマイナスの財産(被相続人の借金など)が混在している場合、それをどう分割するかは個人再生の手続きとも密接に関わります。

専門家への相談前に自分でできる確認事項
  • 相続財産の内容(プラス・マイナス両方)をおおまかに把握しておく
  • 自分が個人再生のどの段階にいるかを整理しておく
  • 協議の期限(相続放棄の熟慮期間など)を確認しておく

他の相続人に迷惑をかけたくないという気持ちから自分の取得分を大幅に減らす合意をしてしまうと、手続き上の問題が生じるだけでなく後から協議のやり直しが必要になることもあります。

気遣いで取り分を減らすのは逆効果になることも。まず財産と段階を整理してから協議に臨みましょうね。

個人再生と相続放棄が重なった場合の動き方

個人再生の手続き中に相続が発生した場合、何をどの順番で動くかが結果を大きく左右します

相続と個人再生が重なるとどちらを優先すればいいか分からず動けなくなる方が少なくありませんが、判断が遅れるほど選択肢が狭まるのがこの状況の特徴です。

まだ担当の専門家がいない場合は相続の発生を契機に無料相談窓口へ連絡することが最初の行動の入口になり、すでに手続き中の場合は担当弁護士・司法書士への即時報告が最優先です。

まず相続財産の内容(プラス・マイナス)を確認する

相続が発生したら、最初にやるべきことは感情的な判断を保留して財産の全体像を把握することです。

プラスとマイナスの両方を確認しなければ、相続放棄が得か損かの判断ができません。

確認すべき主な項目
  • プラスの財産:不動産・預貯金・有価証券・生命保険の死亡保険金・自動車など
  • マイナスの財産:借入金・連帯保証債務・未払いの税金・医療費など
  • 手続き上の注意が必要なもの:農地・共有持分・事業用資産など

個人再生の手続き中にプラスの財産を相続すると財産目録や再生計画に影響が出る可能性があり、一方マイナスが多い遺産を相続してしまうと返済負担がさらに増えるリスクがあるため、どちらの方向に傾いているかを確認しないまま動くことは大きな判断ミスにつながります。

財産の調査は、金融機関への残高照会や法務局での不動産登記確認など複数の手段を組み合わせて行うのが一般的です。

マイナスの財産が多い遺産を相続放棄した場合は、財産状況が変動しないため、個人再生の手続きへの影響を最小限に抑えやすくなります。一方、プラスの財産が多い遺産を相続した場合は、その財産が個人再生の審査に反映され、返済額が増える可能性があります。このため、相続放棄が選択肢として検討されることがあります。

まずは財産の全体像から。プラスとマイナス両方を把握しないと、放棄の損得は判断できませんよ。

3ヶ月の期限を意識して早めに専門家に相談する

相続放棄ができる期間は原則として相続の開始を知った日から3ヶ月以内で、この期限は個人再生の手続き状況に関係なく進行します

期限内に動けなかった場合、原則として単純承認(すべての財産と負債を引き継ぐこと)とみなされ、マイナスの財産が多い遺産の場合これは致命的な結果を招くことがあります。

3ヶ月は一見余裕があるように感じます。しかし、財産調査・専門家への相談・家庭裁判所への申述という一連の手続きを考えると、実際にはかなり短い期間です。特に個人再生の手続き中は、すでに弁護士や司法書士とのやり取りが発生しています。そこに相続対応が加わると、時間的な余裕はさらに少なくなります。

「まず状況を整理してから相談しよう」と考えていると期限が近づいてから慌てることになりがちなので、相続の発生を知った時点でできる限り早く専門家に連絡することが重要です。

なお、相続財産の調査に時間がかかる場合は家庭裁判所に申立てをすることで熟慮期間を延長できる制度がありますが、これも自動的に認められるわけではないため早めに動いておくことが前提になります。

3ヶ月は調査・相談・申述を考えると意外と短いんです。知った時点ですぐ動き出しましょうね。

個人再生の担当弁護士・司法書士に相続発生を即座に報告する

個人再生の手続き中に相続が発生した場合、担当の弁護士または司法書士に即座に報告することが必要で、報告を後回しにすると手続き全体に支障が出る可能性があります。

報告が必要な理由
  • 相続によって財産状況が変化した場合、再生計画の内容や返済可能額の算定に影響が出ることがある
  • 相続放棄を選ぶかどうかの判断が、個人再生の方針と連動している場合がある

個人再生と相続放棄はそれぞれ法的には独立した別々の手続きですが、どちらの手続きも「申立人の財産状況」を基準として進むという点で実際には互いに影響し合います。

たとえばプラスの財産を相続した場合、個人再生では「清算価値」と呼ばれる基準額が上がることがあり、清算価値とは仮に自己破産した場合に債権者が回収できると想定される財産の総額のことで、個人再生ではこの金額を下回らない返済計画を立てる必要があります。

つまり相続によってプラスの財産が増えると毎月の返済額や総返済額が増える可能性があり、逆に相続放棄によって財産状況を変動させないことで既存の再生計画への影響を抑えられる場合もあります。

このような判断は個人再生の全体像を把握している担当者でなければ適切に行えないため、相続発生を「個人再生とは別の話」として自分だけで処理しようとするのは避けるべき行動です。

相続と個人再生は財産状況でつながっています。「別の話」と切り離さず、担当者に必ず報告を。

費用が不安な場合:無料相談窓口の活用方法

相続と個人再生が重なると専門家への相談費用も二重にかかるのではと心配する方がいますが、費用を理由に相談を先延ばしにすることは期限の観点から見てリスクが高い選択です。

利用できる主な無料相談窓口
  • 法テラス(日本司法支援センター):収入・資産が一定水準以下の方を対象に、弁護士・司法書士費用の立替制度や無料相談を提供
  • 弁護士会・司法書士会の無料相談:各都道府県の会が定期的に実施しており、予約制で利用できる
  • 個別事務所の初回無料相談:多くの法律事務所が初回相談を無料で受け付けている

まだ担当の専門家がいない段階であれば、法テラスや弁護士会の無料相談窓口に「個人再生と相続が重なっている」と伝えた上で連絡するのが最初の行動として現実的で、相続放棄の期限が迫っている場合はその旨を最初に伝えることで優先的に対応してもらいやすくなります。

すでに個人再生の依頼をしている事務所がある場合はまずそこに相続発生を伝えることが最優先で、追加費用が発生するかどうかは事務所によって異なるため報告の際に費用の扱いについても確認しておくと安心です。

法テラスの立替制度は個人再生の費用にも適用できる場合があるため、経済的に厳しい状況にある方は積極的に活用を検討してください。

費用が心配でも、無料相談や法テラスの立替制度があります。費用を理由に先延ばしは禁物ですよ。

相続が絡む場合の個人再生と自己破産の違い

相続財産がある状況では、個人再生と自己破産のどちらを選ぶかで手続きの結果が大きく変わります

相続が絡む場合の選択ポイント
  • 相続財産が多いほど、個人再生での返済額が増える可能性がある
  • 自己破産では相続財産が処分対象になるが、免責によって借金をゼロにできる
  • 相続放棄を組み合わせるかどうかで、どちらの手続きが有利かも変わってくる
  • 財産の種類・金額・借金の額によって、最適な選択肢は人それぞれ異なる
相続放棄には相続を知った日から原則3か月以内という期限があります。個人再生の手続き期間と重なる場合は時間的な余裕が限られるため、「どちらを先に動くべきか」は手続きの進行状況を踏まえて早期に確認することが重要です。

相続財産が多い場合に個人再生が難しくなるケース

個人再生では、相続財産が多いと返済額が増え、手続きの負担が重くなる場合があります

個人再生の返済額は「清算価値保障原則」によって下限が決まり、相続財産が増えるほど清算価値が上がり最低返済額も連動して増えるため、返済可能な金額を超える場合は個人再生の認可が難しくなることがあります。

「清算価値保障原則」とは、自己破産した場合に債権者が回収できるであろう金額(清算価値)を個人再生での返済額の下限として保障するルールで、相続によって不動産や預貯金などの資産を取得した場合その分だけ清算価値が上がり最低返済額も増えることになります。

相続財産の評価額が借金総額と同程度かそれを上回る水準になると返済計画の組み立てが難しくなりやすいとされ、相続財産の中に不動産が含まれる場合は評価額の算定が必要になり手続きが複雑化しやすい点にも注意が必要です。

こうした状況では相続放棄によって財産を受け取らない選択が個人再生をスムーズに進めるうえで有効な場合がありますが、相続放棄は一度行うと撤回できないため返済シミュレーションを行ったうえで慎重に判断することが重要です。

相続放棄が個人再生に与える影響
  • 有利に働くケース:プラスの財産を放棄することで清算価値が下がり、最低返済額を抑えられる
  • 不利に働くケース:相続財産を返済原資として活用できなくなり、返済能力の証明が難しくなる

どちらに当てはまるかは借金の総額と相続財産の内容によって異なるため一概には判断できず、個人再生の申立て後に相続が発生した場合は裁判所や担当の弁護士・司法書士への報告が必要で、財産状況の変化を適切に開示しないと手続きの進行に支障が生じる可能性があります。

相続財産が借金に近い規模だと個人再生は難しくなることも。放棄は撤回不可なので慎重に。

自己破産を選んだ場合の相続財産の扱い

自己破産では、相続財産は原則として破産財団に組み込まれ、債権者への配当に充てられます

自己破産における相続財産の扱い
  • 破産手続きの開始決定から原則として約3か月以内に取得した財産は破産財団に含まれる
  • 免責が認められれば借金はゼロになるが、相続財産は手元に残らないことが多い
  • 相続放棄をすれば財産は破産財団に入らないが、プラスの財産も受け取れなくなる

自己破産の手続き中に相続が発生した場合、取得した財産は「新得財産」として扱われるのが原則です。ただし、破産手続きの開始決定から原則として約3か月以内に相続が生じた場合は、破産財団に組み込まれるケースがあります。この点は手続きの進行状況や相続のタイミングによって異なるため、専門家への確認が欠かせません。

自己破産の最大のメリットは免責が認められれば借金の支払い義務がなくなる点ですが、一方で一定額以上の財産は処分対象になるため相続財産を受け取っても手元に残せないケースが多くなります。

借金の総額が多く返済の見込みが立たない場合は、自己破産のほうが現実的な解決策になり得ます。相続放棄を選べば、財産が破産財団に組み込まれるリスクを回避できます。ただし、プラスの財産も含めて一切の相続権を失うため、相続財産の内容によってはどちらが有利かを慎重に比較する必要があります。

個人再生か自己破産か、相続放棄を組み合わせるかどうかは、借金の総額・相続財産の内容・収入状況の3つを総合的に見て判断するのが基本です。

借金が多く返済の見込みが立たないなら自己破産が現実的なことも。3要素を総合して判断しましょうね。

個人再生と相続放棄に関するよくある質問

個人再生の手続き中に相続が絡む状況は、判断を急がなければならない場面が多く、何を優先すべきか迷いやすい問題です。

期限や手続きの順番、裁判所への報告義務など、見落とすと後の手続きに影響を及ぼす点も少なくありません。

このFAQでは、読者の方が実際に直面しやすい疑問に対して、状況を整理するための考え方をお伝えします。

専門家への相談前に、まず基本的な知識を確認する場としてお役立てください。

個人再生の手続き中に相続が発生したことを裁判所に報告しないとどうなりますか?

個人再生の手続き中に相続が発生した場合、裁判所への報告は義務であり、隠すことは手続き上の重大なリスクにつながります

個人再生の手続き中は財産状況に変動が生じた場合に裁判所へ報告する義務があり、相続によって財産を取得した場合も同様で報告を怠ることは手続き上の誠実義務違反とみなされる可能性があります。

発覚した場合には再生計画の不認可や手続きそのものの廃止につながるリスクがあり、相続財産の内容によっては再生計画の内容に影響が出る場合もありますが、いずれにせよ隠蔽よりも速やかに報告・相談する対応が求められます。

相続が発生した際は、まず担当の弁護士や司法書士に状況を伝え、適切な対応方針を確認することが重要です。

報告は義務です。隠すと不認可や廃止のリスクに。気づいたらすぐ担当者へ伝えてくださいね。

相続放棄の3ヶ月期限をすでに過ぎてしまった場合、どうすればよいですか?

3ヶ月の熟慮期間を過ぎた場合でも、熟慮期間の伸長申請という救済策があります

家庭裁判所に申立てを行うことで相続放棄の検討期間を延長してもらえる可能性がありますが、伸長が認められるかどうかは期限を過ぎた経緯や事情によって異なるため必ず認められるとは限りません。

また、期間経過後でも「相続財産の存在を知らなかった」などの特別な事情がある場合に限り、例外的に相続放棄が認められるケースもあります。

いずれの場合も対応が遅れるほど選択肢が狭まるおそれがあるため、できる限り早急に弁護士や司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。

過ぎても伸長申請や例外的に認められる道があります。遅れるほど不利なので早急に相談を。

個人再生を検討中(まだ申立て前)の段階で相続が発生した場合も、手続き後と同じように影響しますか?

個人再生の申立て前に相続が発生した場合、その財産は申立て時点で「自己の財産」として扱われるため、清算価値の計算に影響する可能性があります

申立て後に相続が発生するケースとは異なり、申立て前であれば相続財産はすでに手元にある資産として評価の対象になりえるため、清算価値への算入タイミングが変わり返済額の計算結果にも差が生じる場合があります。

相続放棄を検討する場合も、申立てとの前後関係や期限との兼ね合いによって対応が変わるため、状況に応じた判断が必要です。

相続放棄には原則として相続を知った日から3か月以内という期限があるため、個人再生の手続き準備と並行して進める場合は時間的な余裕に注意が必要です。

個人再生と相続放棄が絡む場合は、専門家への早めの相談を検討することをおすすめします。

申立て前の相続も清算価値に影響します。前後関係と期限を踏まえて早めに相談してくださいね。

相続放棄をしたあとで個人再生から自己破産に切り替えることはできますか?

個人再生から自己破産への切り替え自体は可能ですが、相続放棄が問題となるリスクがあるため注意が必要です。

手続きの途中で個人再生から自己破産に切り替えること自体は法律上認められていますが、自己破産に移行した場合、破産管財人が財産の調査を行う過程で過去に行った相続放棄を問題視する可能性があります。

相続放棄によって本来受け取れたはずの財産が債権者に渡らなかったと判断されると詐害行為として否認されるリスクがあり、否認された場合は相続財産が破産財団に組み込まれ手続きが複雑になる可能性があります。

相続放棄の時期や状況によってリスクの程度は異なるため、切り替えを検討する前に必ず弁護士などの専門家に相談し、自身のケースへの影響を確認することをおすすめします。

切り替えは可能ですが、相続放棄が否認される場合も。切り替え前に必ず影響を確認しましょうね。

親の借金を相続してしまった場合、個人再生と相続放棄のどちらを先に行うべきですか?

相続放棄の期限が優先されるため、まず3ヶ月以内の手続きを意識しながら動くことが重要です。

親の借金を相続してしまった場合、相続放棄には相続を知った日から3ヶ月以内という期限があるためまずこちらの期限を最優先に意識する必要があります。

個人再生の手続きは比較的時間をかけて進められますが、相続放棄の期限を過ぎると選択肢が大きく狭まってしまうため、相続放棄と個人再生を切り離して順番に考えるのではなく個人再生の担当者(弁護士や司法書士)に早めに相談しながら並行して動くことが現実的な対応です。

どちらの手続きが自分の状況に合っているかは資産・負債の内容によっても異なるため、専門家への相談を通じて方針を整理することをおすすめします。

相続放棄をすると、プラスの財産も含めてすべての相続権を失います。個人再生との組み合わせが適切かどうかは、個別の事情によって判断が異なります。
まずは3ヶ月の期限を最優先に。切り離さず、担当者と並行して動くのが現実的ですよ。

まとめ

個人再生の手続き中に相続が発生した場合、相続放棄が有利かどうかは相続財産の内容・借金の額・手続きの進捗状況によって結論が異なります

相続財産の大部分が借金などマイナス財産であれば相続放棄が合理的な選択肢になりますが、プラスの財産が相当程度ある場合は放棄によって返済原資を失い、かえって再生計画の実現が難しくなることがあります。

プラスの財産を相続すると「清算価値保障原則」により最低返済額が引き上げられる方向に働くため、相続が発生したら申立て前・後を問わず、速やかに担当弁護士・司法書士と裁判所へ報告することが不可欠です。

相続放棄には相続開始を知った日から原則3か月以内という期限があり個人再生中でも延長されないため、相続発生を知った時点で財産の全体像を把握し、期限を意識して早期に動くことが重要です。

相続が絡む場合は個人再生・自己破産・相続放棄の組み合わせによって結果が大きく変わるため、借金の総額・相続財産の内容・収入状況を総合的に見て判断する必要があります。

個人再生と相続が重なって判断に迷っている方や、相続放棄の3か月期限が迫っている方は、自己判断で動く前に借金問題と相続問題をあわせて相談できる弁護士の無料相談を活用することが、最も確実な第一歩になります

あまた法律事務所では、個人再生をはじめとする債務整理と相続が重なったご相談を承っております。

執筆・監修者、豊川祐行弁護士

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。

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