加害者が高齢者の交通事故|その後どうなる?原因と防止策のまとめ

交通事故

2019年4月に池袋で暴走した高齢ドライバーの自動車が歩行者に突っ込み、母娘2人の命を奪い、多くの負傷者を出す事故が起こり、改めて高齢ドライバーの運転に対する防止策が見直されています。

高齢者の自主性に任せた免許返納だけでは、増加する高齢ドライバーの運転事故の対策としては不十分です。

この記事では、高齢ドライバーが事故を起こしてしまう原因は何か?これだけ事故が増加しているのに、未だに免許返納が進まない理由は何か?そして現在行われている事故防止対策についてまとめています。

高齢ドライバーの事故原因

2019年上半期に発生した交通死亡事故を分析すると、75歳以上の高齢ドライバーの事故原因の多くが操作ミスによるものだと結果が出ています。

【高齢ドライバーの死亡事故原因】
1位 操作ミス・ブレーキ踏み間違い 34%
2位 漫然運転 19%
3位 安全不確認 15%
4位 わき見運転 8%
5位 判断の誤り 7%
【死亡事故原因全体】
1位 安全不確認 30.7%
2位 わき見運転 15.6%
3位 動静不注視 11.3%
4位 漫然運転 8.6%
5位 操作ミス・ブレーキ踏み間違い 6.6%

高齢者の起こす事故だけが大きく取り上げられていますが、事故を起こすのは高齢者だけではありません、しかし上記の死亡事故原因のランキングを見ると、高齢ドライバーの起こす事故の原因で圧倒的に多いのが、ブレーキを踏み間違えるなどの操作ミスであることがわかります。

年齢とともに判断力が低下するので、ある程度の年齢に達したら自主的に免許を返納すべきという議論も起こっていますが、事故を起こすかもしれないというリスクを承知していながらも免許返納ができないという事情があるのも事実です。

免許返納

高齢者の交通事故の防止策として、効果が高いのは自主的に免許を返納することです。運転ができなくなるので、その後自身が交通事故の加害者になることはありません。

しかし、高齢になってもなかなか決断できない理由とは何か?そして、免許証を返納した後にはどんなメリットがあるのでしょうか?

運転免許証返納ができない理由

・免許証返納の必要性を感じていない
70代、80代になれば誰でも若い頃と比べたら、注意力や判断力などが低下しています。

車の運転に影響する注意力、判断力、身体の反応スピードの低下は、事故に繋がるリスクとなりますが、高齢者の多くが若い頃と比較して、能力の衰えを感じてはいるものの、運転に支障をきたすことではなく、まだ問題なく運転できると考えているので、自分は運転免許証を返納する必要がないと考えている人も多いようです。

実際に、行われた調査結果では、男性高齢ドライバーの7割、女性ドライバーの6割近くが自分の運転に自信を持っていると答えているという結果がでています。

・車がないと生活に支障をきたすから
首都圏や京阪圏などでは、公共交通機関が発達しているため、買い物や通院など、日常生活に必要な外出の際は、バスや地下鉄などを利用することが可能です。

地方都市では、ショッピングセンターなどが郊外へ移転していることが多く、バスや地下鉄の本数が少なかったりすることで、自分が車を運転しないと買い物や病院にも行けないといった事態になります。

・身分証明証がなくなってしまう
パスポートやマイナンバーカードを所有しておらず、身分を証明するものは運転免許証のみという高齢者の方も多くいらっしゃいます。免許証を返納してしまうと、自分の身分を証明する術がなくなってしまうということで、いつまでも免許を手放せない方がいらっしゃいます。

運転免許証を自主返納した後に、申請を行えば、免許証の代わりに身分証明として利用できる運転経歴証明証が受け取れるのですが、そのような情報を知らない高齢者がたくさんいるのが現状です。

POINT
運転免許証を自主返納した後に、申請を行えば、免許証の代わりに身分証明として利用できる運転経歴証明証が受け取れます

免許返納したときにはどんなメリットがあるか?

免許を返納することにより、その先、自分が交通事故の加害者となってしまうリスクはほぼなくなります。また、自治体によって内容は異なりますが、免許を返納することで特典をうけることができます。公共交通機関の割引券や、タクシーの無料チケット、ホテルやレストランの割引チケットなどが特典として配布されています。

高齢者の運転事故を防ぐ対策

高齢ドライバーの運転が原因となる事故を防ぐためにはどのような対策が取られているのでしょうか?

サポートカーの推進

サポートカーと言うのは、ブレーキアクセルの踏み間違いなどを防止する装置や、目前に障害物がある場合は自動的にブレーキがかかるといった複数の運転支援機能を備えた自動車のことです。

高齢者ドライバーの事故原因の中で圧倒的に多いのは、操作ミスによるものですから、サポートカーを運転することで、高齢者の運転事故を大幅に減少させることが期待されています。

自治体によっては、サポートカーの購入や運転支援装置の取り付けを行う場合、補助金を出しているところもあります。

POINT
自分の自治体で補助金等が出ていないかどうか、確認してみましょう。

限定免許制度

自動車運転免許証は、普通自動車運転免許とAT車に限っての運転を許可するAT限定自動車運転免許証があります。それに加えて、高齢者の場合はサポートカーだけに限定して運転を許可する免許証の発行が決定されています。

2020年以降の創設になりますが、政府としては早期の創設を目指し、早く高齢ドライバーの事故を防ぎたいというところです。

しかし、この限定免許制度には問題点もあります。高齢者の限定免許取得が義務ではなく、選択制であることです。

つまり、限定免許を選ぶかどうかは、運転する高齢者自身の意思によるものであり、限定免許を選択すれば、普通自動車を運転することが可能になります。

自ら限定免許を申請する高齢者がどのくらいいるのか?また、サポートカーなどの購入費用が捻出できない高齢者には、限定免許制度は意味がないのでは?と対策自体を疑問視する声も少なくありません。

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技術指導講習の実施

運転免許更新の際に、70歳以上の高齢ドライバーは高齢者運転講習を受講することが義務付けられています。また、75歳以上の高齢ドライバーについては、講習を受ける前に認知症などがないか予備検査を受ける必要があります。

高齢者運転標識の装着

70歳以上のドライバーで、加齢による運動機能の低下や判断能力の低下が、自身の運転に影響を及ぼす恐れがある場合、自身が運転する自動車の前後部分に、高齢者運転標識を装着するよう努めなければならないとされています。

この標識を装着した車の近くにいる自動車は、高齢ドライバーに配慮した運転に努めなければなりません。

しかし、標識装着も義務ではなく、あくまでも努力目標ということになりますので、全ての高齢ドライバーが取りつけているわけではありません。

運転経歴証明証の発行

運転免許証の自主返納に踏み切れない理由の一つに、免許を返納してしまった後に、身分を証明するものがなくなってしまうというものがあります。

免許証を自主返納した際に運転経歴証明証を申請して発行してもらうことで、今まで通り身分証明証を所持することができます。

もし身内の高齢ドライバーが事故の加害者になったらどうしたらいいか?

交通事故の加害者になってしまったとき、加害者本人が被害者に対して治療費や損害賠償などの慰謝料を支払うのは当然ですが、高齢ドライバーが交通事故を起こした場合、運転していた加害者だけでなく、身内にまで慰謝料などの請求が及ぶ場合があります。

運転者が認知症の疑いがある場合、車を運転できる状態にしておいたことで、監督責任を問われる可能性があるということです。

加害者本人の損害賠償については、加入している保険会社が交渉を行なってくれますが、身内への監督責任などの請求に関しては、任意保険も適用されません。

もしも、自分の親や配偶者が事故を起こしてしまったのであれば、当事者だけで交渉を行った場合、どれだけの金額を請求されるか全くわかりません。

事故を起こしたのは運転者の責任です。しかし、損害賠償や慰謝料の請求額については、あくまでも適正な金額を支払うべきではないでしょうか?

あまた法律事務所では、過去にも高齢ドライバーが加害者となってしまった事故を多数解決しています。

身内が事故の加害者となったときには、一人で悩むのではなく、無料で受付を行っている法律相談に連絡をとってアドバイスを受けてください。

まとめ

少子高齢化により、今後も高齢ドライバーは増加していくでしょう。いずれは、運転自動化などの技術が進歩し、高齢者でも安心して運転できる時代が来るとは思いますが、まだ先の話です。

自分の運転に自信がなくなってきた、身内の運転が心配と思われている方は、免許の自主返納を含めた対策を考えなければなりません。

事故はいつ起きるかわかりません。なるべく早く、今後の運転に対しての安全対策を家族で話し合ってみてください。

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