2ちゃんねるとは
2ちゃんねるは、月間の利用者数が数百万を超えるインターネット上の巨大電子掲示板です。幅広いジャンルの情報を取り扱っており、普通では知ることができない裏話が聞けるため高い人気を誇っています。
一方で、誰でも匿名で発言できるため、無責任に他人を攻撃するような過激な発言も多く見受けられます。
2ちゃんねるの歴史
1999年に西村博之氏が個人用掲示板として「2ちゃんねる(2ch.net)」を立ち上げたことがきっかけに生まれました。
西村氏は、後にジム・ワトソンズという人物に運営権を譲渡しますが、この時点では実質的な運営権は西村氏のままでした。しかし、2014年にサーバー料金の債務不履行を理由に、ジム・ワトソンズは西村氏を含む旧運営陣をサーバーにアクセスできないようにしたことで、本格的に2ch.netの運営権を獲得します。
運営権が移行した際に、2ch.netは「5ch」に名称が変わりました。その後、西村氏は2ch.netとは、別に「2ちゃんねる(2ch.sc)」を開設しました。さらに、2ちゃんねるの書き込みをコピーして掲載するミラーサイトも現れており、これらのサイトは一般的に「まとめサイト」と呼ばれています。
このように、2ちゃんねるは大きく分けて「2ch.sc」「2ch.net(5ch)」「ミラーサイト・まとめサイト」の3種類があります。
2ちゃんねるでの誹謗中傷の事例
昨今、SNSや匿名掲示板での誹謗中傷が深刻化しており、芸能人が自殺するなどの悲しい事件も発生しています。ここからは、実際に2ちゃんねるで書き込まれた誹謗中傷の事例を一部紹介します。
1999年に起こった女子高生コンクリート詰め殺人事件の犯人がスマイリーキクチさんであるかのような書き込みが、2chに次々と投稿されました。
スマイリーキクチさんは、逮捕された少年と同世代で、同じ東京都足立区出身という理由だけにもかかわらず、「凶悪殺人の犯罪者、スマイリー鬼畜氏ね」「殺した過去を思い出せ、白状して楽になれよ」などの誹謗中傷を受け続けてきたのです。
その結果、中傷コメントをした1,000人以上もの犯人の身元が特定され、その中でも特に悪質な19人が検挙されました。
2010年、参院選比例代表に立候補し、落選した拓殖大学客員教授の藤井厳喜氏に対して、2chから誹謗中傷の書き込みがなされました。
4月20日〜21日の間に同掲示板の7つのスレッドで33回にわたって、「藤井は犯罪者。死ね」「3匹の娘はDQNビッチ性病持ち」などの悪質な中傷を書き込んだとして、北海道大学の4年生が名誉毀損の容疑で逮捕されました。
2ちゃんねるに書き込みの削除依頼をするときの注意点
「2ch.sc」は、定期的に「2ch.net(5ch)」の内容や情報をコピーしているため、「2ch.net(5ch)」で中傷コメントがされた場合は「2ch.sc」にも全く同じ投稿が残っている場合があります。
また、「2ch.sc」で中傷コメントを発見した場合においても、「2ch.net(5ch)」からコピーされているものであった場合があるため、このケースでも両方のサイトに投稿が残っている場合があります。さらに、2ちゃんねる内での悪質な投稿は多くのミラーサイトにコピーされています。
2ちゃんねる(2ch.sc)の書き込み削除基準やルール
2ch.scでは、利用規約に違反している場合や法律に違反している場合に限って削除対応を受け付けてくれます。注意点として、2ch.scは郵送や電話、個別メールなどでの削除対応をしておらず、削除を依頼する際は全てネットに公開されることが原則になります。
削除依頼する場合は、当サイトの「削除要請(入口)」ページの注意書きと「削除ガイドライン」を参考にして、削除対象になる書き込み内容をあらかじめ確認しておきましょう。
2ちゃんねる(2ch.sc)の書き込みを削除する方法
2ch.scの書き込みを削除する方法は「削除ガイドライン」で確認することができます。具体的な方法は以下の通りです。
削除依頼板を利用する
削除依頼板とは、不適切な内容を削除してもらいたいときに用いられる掲示板です。専用スレッドがある場合を除き、専用フォームに必要事項を書きこむことで、不適切な書き込みや記事の削除を依頼できます。
削除依頼板には「削除要請板」と「削除整理板」の2つがあります。
削除要請板では、「個人名・住所・所属」「電話番号」「メールアドレス」「情報価値が無く私事のみの情報」などの内容が含まれる場合や、裁判所からの削除命令を得ている場合に限って削除を依頼できます。それ以外の書き込みについては削除整理板で依頼します。
書き込みが削除されるかどうかは「削除人(削除屋)」と呼ばれるボランティアのユーザーによって判断されます。
専用スレッドで削除申請する
個人サイト・特定のメールアドレスに対する荒らし依頼、電話番号の記載(番号に読めるもの全て)、差別・蔑視発言(削除要請板のみ)に該当する書き込みは、各削除依頼板の専用フォームではなく専用のスレッドで削除依頼をします。
この際も、削除依頼は全てスレッド内で公開され、削除人によって削除の判断がなされます。スレッドで削除依頼する際は、それぞれのスレッド内の指示にしたがって必要事項を記入しましょう。
裁判所の仮処分申請を利用する
2ch.scの削除ガイドラインは、有名人や企業に対する書き込みについて削除基準を厳しく設定しています。それゆえに、法律に違反しているのに削除依頼しても書き込みが削除されないケースが生まれます。
このような場合は、裁判所に仮処分の申立てを行うことで対処します。仮処分が認められると、早ければ1ヶ月以内に裁判所からサイト側に削除命令を発してくれます。
注意点として、2ch.scはシンガポールの法人である「PACKET MONSTER INC,PTE.LTD」が運営元になります。一般的に、仮処分申請などの裁判手続を行う場合、相手方企業の法人登記を資格証明として裁判所に提出する必要がありますが、日本国内ではなく海外の法人の登記を取得する際の手続きは非常に複雑になります。
2ちゃんねる(2ch.net)の書き込み削除基準やルール
2ch.net(5ch)の書き込みの削除基準やルールは、「5ちゃんねる削除体制」や「削除ガイドライン」に記載されています。
2ch.net(5ch)では、権利侵害に当たる書き込みについて削除対応をおこなっています。具体的には、「名誉」「プライバシー」「平穏に生活する利益」などの法的利益を侵害する書き込みについて削除リクエストを送れます。
2ちゃんねる(2ch.net)の書き込みを削除する方法
2ch.net(5ch)の書き込みを削除する方法は「5ちゃんねる削除体制」と「削除要請(入口)」に記載されています。2ch.net(5ch)の書き込みを削除する方法は以下の通りです。
削除依頼メールを送る
2ch.net(5ch)では、2ch.scと異なって非公開のメール(meiyokison@5ch.net)による削除依頼が認められています。
権利侵害を主張する者は、メールの件名を「削除申し立て」とし、「URL」「レス番号」「削除理由」「理由を根拠付ける資料(任意)」「本人確認のための資料(免許証や社員証をスキャンしたもの)」を添付して削除依頼メールを送信します。
なお、自身の書き込みが削除された投稿者は、削除されてから7日以内に限って、削除に対する「異議申し立て」をすることができます。
専用の削除依頼フォームを利用する
個別メールの他にも、専用の削除依頼フォームを利用する方法があります。削除依頼フォームには、2ch.scと同様に「削除要請板」と「削除整理板」の2種類があります。
削除要請板は「個人名・住所・所属」「誹謗中傷」「私生活情報」「電話番号」「メールアドレス」「差別・蔑視」「荒らし依頼」が対象です。削除整理板は上記に当てはまらない書き込みが対象です。
裁判所の仮処分申請を利用する
権利侵害にあたる書き込みやスレッドが2ch.net(5ch)で削除されない場合、裁判所に仮処分申立てすることになります。
また、「5ちゃんねる削除体制」は「犯罪に関する情報及び法人に関する情報の場合は、原則として、裁判手続きによって仮処分を取得して、司法判断を待つことにする。」と記載しているため、犯罪・法人に関する情報については裁判所への仮処分申請が必要になります。
2ch.net(5ch)の運営元はフィリピン法人の「Loki Technology inc.」になります。2ch.scと同様に2ch.net(5ch)の運営元が海外にあるため、登記の入手などの手続きが非常に複雑になります。
また、手続きの方法も常に変化しているため、海外法人に対する削除依頼の経験がある弁護士に相談することを強くおすすめします。
2ch.net(5ch)が認めた弁護士によって削除請求する
2ch.net(5ch)は、「5ちゃんねるが認めた弁護士からの請求」について原則として削除対応を行うとしています。「5ちゃんねるが認めた弁護士」とは、2ch.net(5ch)が過去に受けた請求から、表現の自由を配慮したリーガルマインドを持っていると判断した弁護士を指します。
削除依頼メールが返ってこない場合や、仮処分申請のような裁判手続きを利用したくない場合は、過去に2ch.net(5ch)から削除請求が認められた弁護士に依頼することで、手早く書き込みを削除できるかもしれません。
2ちゃんねるのコピーサイトの書き込み削除基準やルール
2ちゃんねるのコピーサイトは「ログ速」「みみずん検索」「しま速」などのサイトが当てはまります。これらのサイトの書き込み削除基準は多種多様で、削除依頼の方法もサイトによって異なります。そのため、該当サイトの削除依頼方針をよく読んで対応しましょう。
2ちゃんねるの誹謗中傷に対する発信者の特定や訴訟について
誹謗中傷を含む発言をされたときは、民事訴訟や刑事告訴によって犯人を訴えることができます。ただし、2ちゃんねるはネット上に匿名で中傷コメントを書き込むことができますので、犯人を訴えるためにはまず犯人の身元を特定する必要があります。
犯人を特定する際には、プロバイダ責任制限法に規定されている「発信者情報開示請求」という制度を利用します。
発信者情報開示請求は、2ちゃんねるに対してIPアドレス・タイムスタンプの開示請求した後に、インターネットサービスプロバイダ(ISP)に対して発信者の氏名や住所などの個人情報の開示請求をする必要があります。
ここでは2ちゃんねるへの開示請求とインターネットサービスプロバイダ(ISP)に対する開示請求の方法を解説します。
2ちゃんねるに対する発信者情報開示請求
インターネットサービスプロバイダ(ISP)に投稿者の氏名や住所などを開示請求するためには、プロバイダが契約している発信者のIPアドレスを入手する必要があります。
サイト管理者に対して、投稿に使用されたIPアドレスの開示を求める必要があります。IPアドレスとは、2ちゃんねるなどの掲示板で書き込みをする際に、データの送信元を識別するために使用される番号です。
開示の方法として、裁判手続きを利用しない任意開示請求と裁判所への仮処分申立てがあります。任意開示請求は訴訟を起こす必要がないため便利な手続きに思えますが、個人情報保護の観点から2ちゃんねる側はほとんど対応しません。
そのため、裁判所に仮処分申立てをすることでIPアドレスの開示請求を行います。
仮処分申立ては、正式な裁判をする前に、裁判に勝訴したときと同様の状態を確保してもらう手続きであり、時間のかかる本裁判と異なって2週間〜2ヶ月程度で結論が出ます。
本裁判をすると、ログの保存期間が過ぎてインターネットサービスプロバイダに開示請求できなくなるといった不都合が生じますので、IPアドレスを入手したいときは仮処分申立てを利用しましょう。
注意点として、この仮処分申立ての相手方は2ちゃんねるの運営会社です。2ch.scも2ch.netも運営元が海外法人ですので、海外から登記を入手する必要があるなど、国内の会社に訴訟するときよりも手続きが大変になります。
プロバイダへの契約者情報開示請求
IPアドレスなどの接続情報が開示されると、投稿者が利用している携帯キャリアなどのインターネットサービスプロバイダ(ISP)を検索することができます。さらに、判明したISPに投稿者の契約者情報(氏名や住所など)を開示請求をすることで犯人の身元を特定することができます。
氏名や住所、電話番号などの契約者情報は、個人情報の中でも最も慎重に扱われるべき事項ですので、暫定的な手続きである仮処分申請で開示請求することはできません。開示請求する場合は通常の民事裁判をするのが必須となります。
特定した犯人を訴える
開示請求によって犯人の特定ができると、これまでは匿名であった発信者に対して損害賠償請求などの法的措置を取ることができます。
このように、2ちゃんねるは匿名で発言できますが、正しい手順を踏めば犯人に法的措置を取ることができます。ただし、2ch.scも2ch.netも海外法人ですので、一般の人が簡単に行える手続きではありません。
2ちゃんねるの誹謗中傷に困っているという方は、まずは弁護士などの専門家にアドバイスをもらうのがおすすめです。
まとめ
2ちゃんねるは、その成り立ちにより2ch.sc、2ch.net、コピーサイトの3種類のサイトに分かれています。
これらのサイトで誹謗中傷が書き込まれた場合、他のサイトに書き込みがコピーされてしまうおそれがあります。そのため、2ちゃんねるの誹謗中傷の書き込みは一刻も早く対応することで被害を最小限に止めることができます。
また、発信者を訴えたい場合は、発信者情報開示などの複雑な手続きを経る必要があります。これらの手続きを一般の方が行うのは難しいので、迷ったときは弁護士など専門家に依頼してすすめるのが有効です。