ネット上の権利侵害に対して投稿者の情報開示を求める発信者情報開示請求にかかる意見照会書は、相手がプロバイダに対して発信者情報開示請求を行った場合に、プロバイダから投稿者に対して送られてくるものです。
- どのプロバイダから発信者情報開示請求にかかる意見照会書が届くかで深刻度が違うこと
- 発信者情報開示請求にかかる意見照会書に回答する場合としない場合でその後の展開が異なってくること
について解説します。
発信者情報開示請求が届くのはどんなときか
自宅に開示請求にかかる意見照会書が届くのはどんな場合なのか、これを送付してきたプロバイダによる違いとともに解説します。
コンテンツプロバイダからの場合
発信者情報開示請求にかかる意見照会書はコンテンツプロバイダと経由プロバイダから届く場合の2種類があります。
ポータルサイトやニュースサイト、掲示板やSNSなどネット上で様々なコンテンツを提供しているプロバイダをコンテンツプロバイダといいます。
誹謗中傷などネット上で権利侵害が起きた場合、相手はまず、コンテンツプロバイダの運営者に対して発信者の情報開示を求めることになります。
しかし、通常、コンテンツプロバイダは投稿者の名前や住所などの情報をもっていないため、請求者は、各パソコンやスマホに割り当てられているIPアドレスの開示を求め、それをもとに経由プロバイダを特定し、経由プロバイダへの発信者情報開示請求を行うことになります。
そのため、コンテンツプロバイダから発信者情報開示請求にかかる意見照会書がきた場合というのは、請求者が経由プロバイダへ請求を行うための前段階の時期であることが多いと考えられます。
経由プロバイダからの場合
コンテンツプロバイダがIPアドレスを開示した場合、請求者は経由プロバイダ(インターネットプロバイダなど)に対して開示請求をすることになります。
ネット回線を実際にインターネットへと繋いでいる事業者を経由プロバイダといいます。最近はスマートフォンからのアクセスが増えたため、携帯会社が経由プロバイダになるケースも増えてきました。
経由プロバイダは、あなたの氏名や住所といった個人情報をもっているため、経由プロバイダから発信者情報開示請求にかかる意見照会書が届いた段階というのは、手続きがより進んだ状態にあるといえます。
届いた場合の対応
実際に発信者情報開示請求にかかる意見照会書が自宅に届いてしまった場合、どのような対応をとればいいのでしょうか。
回答する場合としない場合に分けて説明していきます。
回答する場合
発信者情報開示請求に係る意見照会書には、情報開示を承諾するかどうかを回答するための回答書が同封されており、自宅に届いてから14日以内に返答する必要があります。
「同意する」を選べばあなたの個人情報が相手に開示されるため、情報を晒したくない場合は「同意しない」を選ぶことになります。
回答書には、開示を拒む理由や自分の正当性を示す根拠などが必要になります。プロバイダでは、あなたの回答をもとに相手の要求に応じるかどうかの最終的な判断が行われますし、訴訟になった場合は、裁判の資料にもなるものですので慎重な回答が求められます。
投稿者に関する開示請求では、条件がある程度厳格に定められているため、同意しなければ基本的に情報が開示されることはないといっていいでしょう。
ただ、開示請求を行う時点で相手は投稿の削除や謝罪を望んでいるのはもちろんですが、損害賠償の請求なども視野に入れている場合がほとんどです。たとえあなたが拒否しても、プロバイダに開示を求める訴訟を起こす可能性があります。
任意開示請求の場合、発信者の同意が得られなければ、プロバイダは情報開示に応じない場合がほとんどですが、裁判手続きで相手側が勝訴した場合はほぼ例外なく情報を開示します。
回答しない場合
発信者情報開示請求に対して、回答せずに無視することもできます。
いきなり書面が届いてしまった場合、どう対応すればいいのかわからずに、放置してしまう方もいるかもしれません。しかし、回答せずにいると、期限の14日を過ぎた時点であなたの情報が開示されてしまう可能性が高くなるため危険な選択であるといえます。
理由を記載することとあわせて「同意しない」と回答すれば、あなたの書き込みが理由のあるものと認められるかもしれませんし、同意しなかったからといってあとあと大きく不利になることはありません。
回答する場合は弁護士に相談したほうがよい
あなたのところに発信者情報開示請求が届いた場合、相手は民事での損害賠償や慰謝料の請求をもちろん、刑事告訴も検討している可能性があります。
請求があったからといって必ず相手の言い分が通るわけではありませんし、回答書であなたの投稿が間違ったものでないことを主張すれば回避できる場合もあります。
しかし、対応を誤れば、将来自分の立場を不利にすることにもなりかねません。
回答する場合でも自分で判断するのでなく、法律の専門家に相談し、回答書の書き方や今後の対応などについてきちんとアドバイスをもらったほうがいいでしょう。状況が悪化するのを防ぎ、万一の時にも訴訟や示談などに対応してもらえます。