働いている人なら巻き込まれる可能性のある労働問題。
労働問題は不当解雇や強制退職、未払いの残業代だけではありません。
時代の流れとともに人との繋がり方が変化しており、今までは教育手段として行われていたことも、相手にとってはパワハラに当たることも増えてきました。
自分自身ではパワハラではないと思っていても、実際はパワハラ認定されるケースも多くなっています。被害者になるケースも知らないうちに加害者になるケースもあるのがパワハラ問題の特徴です。
どのよう状況がパワハラに該当するのか?
注意すべき重要なポイントも解説していますので参考にしてみてください。
パワハラとは?
パワハラとはパワーハラスメントの略語です。
職場でのパワハラの場合、パワーにあたるのが職務上の地位や人間関係での優位性になります。
保持しているパワーを使い、相手に対して精神的、肉体的な苦痛を与える行為が職場でのパワーハラスメントになります。
パワハラは上司から受けるだけではない
職場でのパワハラは上司から部下に対して行われる行為と思われがちですが、上司からだけではなく、同僚や部下から受けるときもあるのです。
確かに職務的に優位という立場であるのは、役職が上の上司ということになりますが、同じ役職であっても、勤続年の違いや、配置転換などで人間関係の面で優位に立つ場合があります。
役職上の上下に関わらず、職場内において発生する相手よりも優位な立場や力を利用して精神的、肉体的な苦痛を与える行為は全てパワハラとなります。
部下から受けたパワハラの実例
・過去にパワハラが認定された実例です。
Aさんは勤続10年目の係長です。
そんなAさんに転機が訪れます。昨年まで配置されていた札幌の営業所から、長野の支店に配置転換の命を受けて、役職も同じ係長として配属されたのですが、今までの職務とは違う部署への転勤のため、最初から仕事を覚えなければなりませんでした。
転勤先の部署のメンバーは、部下とは言え職務の経験や実績がある人が多く、自分よりも経験がなく、業務内容にも詳しくない人物が上司になることが面白くなかったようで、Aさんの指示にも従わず、勝手に仕事をする状態が続きました。
そのため「仕事のできない上司」というレッテルを貼られ、部下や同僚から無視されるようになったAさん。毎日与えられる強いプレッシャーによって精神的に追い込まれてしまい病院にかかってしまいました。
診察の結果Aさんは「うつ」の診断を受けてしまいます。
このように、職務が上である上司から受けるだけではなく、実績や経験などで優位に立つ同僚や部下から受けることを「逆パワハラ」と呼ぶこともあります。
パワハラに該当する行為とは?
自分では相手の為を思った良い行動でパワハラだと思っていない行為でも相手にとって精神的や肉体的な苦痛を与えることもあります。どのような行為がパワハラに該当するのか確認してみましょう。
パワハラに該当する行為
パワハラの中でもわかりやすいのが、相手に対して肉体的な苦痛を与えることです。「殴る」「蹴る」という激しい行為だけではなく、「胸を小突く」「頭を書類で叩く」といった行為もパワハラになります。
■精神的な苦痛を与える
度を超えた叱責や暴言、相手に対しての侮辱行為、脅迫などで精神的に追い込む行為は典型的なパワハラと言えるでしょう。精神的なパワハラでは、相手を鬱に追い込んでしまう例が多々見られます。
■人間関係の切り離し
職場内という限られた環境の中で仲間と共謀して無視したり、必要な情報を故意に教えてくれなかったり相手を職場から隔離するような行為もパワハラになります。職務に不慣れな新人に対して、わざと仕事のやり方を説明しないという行為も同様です。
■過大な要求をする
明らかに達成が不可能なノルマを押し付けたり、時間内ではこなせない仕事量を押し付けて仕事が終わるまで帰宅を許さなかったりする行為です。ノルマが達成できなかった場合に、激しい叱責や相手に対して苦痛を与える行為を行うケースも少なくありません。
■少なすぎる仕事の要求
過大な要求とは逆に、与えられる仕事が職場の他の人と比べて特に少なすぎる場合もパワハラになることがあります。体調が悪く仕事ができないなどという正当な理由がないのに、単調で簡単な仕事しかやらせてもらえないというケースです。
■プライベートの侵害
基本的に、職場と普段の生活は別のものと考えられています。程度にもよりますが、過度にプライベートを詮索したり踏みこんだりして、相手が正常な業務を行うことを妨げた場合はパワハラと見なされる可能性があります。
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パワハラを受けた場合の相談先はどこがいい?
パワハラの被害やトラブルにあった場合、どこに相談するのがいいのでしょうか?
労働組合
大きな企業であれば労働組合が存在していることも多く、最近はコンプライアンスの観点から、パワハラやセクハラについての相談も積極的に対応しているところが多いです。
勤めている会社に労働組合がない場合でも、個人で加入できる労働組合がありますので、参加した後にアドバイスを受けることができます。
組合に相談してアドバイスをもらうことはできますが、パワハラを受けた相手に対して法的な罰を与えたり、損害賠償を請求するのではなく、あくまでも会社に対してパワハラの根絶を働きかけるのが目的となります。
労働基準監督署に相談
パワハラは労働問題の一つになるので、労働基準監督署に申し立てを考える人もいると思いますが、労働基準監督署自体は、会社が法律を遵守しているかどうか監査する組織なので、パワハラ問題については直接対応をしてもらうことはできません。
労基署内には総合労働相談コーナーが設置されているので、そこで相談を受け付けています。相談では、社内で問題を解決するためのアドバイスなどを受けることができますが、それでも問題が解決できない場合には、会社側に労働局長から助言や指導が与えられます。
労働組合の場合と同様、パワハラを行った本人に対してではなく、会社側へ指導することになるので、助言や指導があった場合でも、会社がパワハラ対策に乗り出すかどうかわかりませんので、早期解決はあまり期待できないかもしれません。
社労士
社会保険労務士は労働問題の相談役です。
労働法とパワハラがどのように関係しているかと言うと、使用者は労働者に対して、労働の対価である賃金の支払いはもちろんのこと、その他にも労働者が安全に働ける環境を作るために、生命や健康等に配慮するという安全配慮義務を負っています。
パワハラにより、肉体的、精神的な苦痛を受けたため、正常な職務が遂行できない状態になった場合は、使用者が安全配慮義務を怠っており債務不履行に該当します。
社労士に相談した場合は、安全配慮義務違反の観点から、パワハラを解消するために企業に対して働きかけてもらうことができますが、企業がパワハラを認めない場合は、労働審判や民事訴訟などによって解決するしか手段がありません。
司法書士
弁護士と同じく司法書士事務所でも、パワハラ相談を受け付けています。社労士と違い、会社内での解決ができなかった場合は、民事訴訟で相手や会社に対して損害賠償や慰謝料を請求したり、刑事事件として告訴し、パワハラを行った相手に法的な罰を与えることができます。
弁護士と司法書士の違う点は、簡易裁判所での民事訴訟であれば司法書士でも申し立てを行うことができるけれども、労働審判の申し立てはできないということです。
労働問題の中でも、給与未払い問題などは申し立てから判決が出るまでの期間が短い労働審判や簡単な手続きで解決する場合も多いですが、パワハラの場合は労働審判で和解できずに、民事訴訟になってしまうことも多いです。
損害賠償や慰謝料の請求金額が140万円を超える場合も、司法書士が取り扱うことができなくなりますので、民事訴訟を考えている場合は、相手に対して請求する金額がいくらくらいになるかで弁護士に依頼するか司法書士に依頼するか検討するのがいいでしょう。
弁護士に相談
弁護士に解決を依頼する場合は、司法書士と同様に弁護士費用がかかります。費用を支払っ解決したい場合というのは、費用をかけてもいいから相手にパワハラ行為を認めさせたいという考えと、弁護士費用がかかっても、相手に損害賠償や慰謝料を請求することで、費用を賄えるという考えです。
パワハラ問題を依頼するには、弁護士費用として着手金と、成功報酬がかかります。
成功報酬は、訴訟の結果によって慰謝料や損害賠償を受け取れた時に弁護士に支払う報酬になりますが、着手金は依頼した時に支払うもので、訴訟の結果が満足なものでなくても返金されることはありません。
また、着手金は問題解決の難易度によって金額が変わってきますので、弁護士に依頼する場合は、無料相談を受け付けている弁護士事務所で、慰謝料や損害賠償でどのくらいの金額を請求できるのか?訴訟した時に勝てる見込みがあるかどうかなども確認する必要があります。
まとめ
労働問題の一つでありながら、パワハラの問題は同時に個人間の問題であるため、会社側に勧告したところで、交渉だけでは問題解決まで至らない場合も多々あります。
今までは個人間の相性の問題だとされて、様々な問題が発覚しても取り上げられないことも多かったようです。
パワハラの証拠準備できないから泣き寝入りしてしまう場合や、問題を表沙汰にすることで、自分が職場にいずらくなる恐れがあり我慢してしまう人も多いでしょう。
しかし、パワハラが原因で不安を抱えてしまい仕事ができなくなったり、鬱になって通院が必要になっているのであれば、相手に対して慰謝料を請求したり、適切な罰を与えたいという気持ちになるのは当然のことです。