詐欺は初犯でも大きな罪!刑法で定められた執行猶予や懲役刑とは?

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詐欺罪には、罰金刑が存在せずに懲役刑のみとなります。

執行猶予付きの判決となれば有罪であることに変わりはありませんが直ちに刑務所に収容されることはありません。一方、執行猶予が付かない判決(いわゆる「実刑」)になった場合は、刑務所に収容されます。罰金刑がないので、他の財産に関する罪(例えば窃盗罪)と比較しても、詐欺罪の法定刑はとても重たいのです。

ここでは、実際に有罪・無罪になった裁判例を参考にして、詐欺罪について分かりやすく解説していきます。ぜひ、参考にしてみてください。

詐欺罪が成立するタイミング

詐欺罪は、欺罔行為により、被害者から加害者へ財産が移転した時点で既遂となります。(不動産の場合は、現実に占有が移転するか登記がされた場合に既遂となります。)

欺罔行為とは、ざっくりいうと、相手方が真実を知っていれば財産を渡さないような重要な事実を偽ることです。ただし、嘘が全て欺罔行為ではなく、財産をだまし取ることにむけられたことでなければいけません。

ただし、積極的に虚偽の事実を告げることだけが詐欺罪になるとは限りません。例えば、お店でお釣りを多く受け受け取り、その場で気がついたにも関わらず黙って立ち去ることは「不作為(ふさくい)」の詐欺罪に該当する可能性があります。不作為とは、なすべき義務があるのにしなかったことをいいます。お釣りの事例では、その場で気づいたら店員(お店)に多い分のお釣りを返す義務があるのに、返さなかったということになります。

また、財産をだまし取ることに向けて相手を欺く行為をした時点で未遂罪が成立することが大きな特徴です(刑法250条、246条)。たとえば、振り込め詐欺で被害者がお金を振り込む前に気づいた場合でも、詐欺罪の未遂罪が成立します。

着手時期

加害者が被害者の財産を騙し取る意思を持って、欺罔行為を開始した時点のことをいいます。その欺く行為によって、被害者が錯誤(認識と事実が一致しない状態のこと)に陥ったかどうかは問われません。
被害者が嘘だと見抜ければ、詐欺罪の未遂となります。

犯罪の成立段階

被害者から加害者へ財産の移転がされた段階のことをいいます。既遂時期は、占有移転時のことです。

未遂

欺罔行為をしたものの、嘘と見抜くなどによって、財産移転しなかった場合に未遂となります。

詐欺罪の時効について

詐欺罪の時効は、➀刑の時効(刑法31条)と➁公訴時効(刑事訴訟法250条)に分けることができます。

➀刑の時効とは、裁判が確定した後に刑の執行がされないまま期間が経過したら刑の執行が免除されるという規定です。
➁公訴時効とは、犯罪を終了後、一定期間が経過することにより、公訴権(検察官が被疑者を起訴することです)が消滅し、その後起訴されなくなる制度です。

起訴したとしても、裁判所は免訴判決で手続きが打ち切りとなります。
ところで、時効と聞くと民事の時効を思い浮かべる人の方が多いのではないでしょうか。民事の時効は上記とは異なり、一定期間経過すると相手方に返金請求や損害賠償請求ができなくなることをいいます。
下の表では参考までに民事の時効も掲載します。

~詐欺罪を例に~

刑の時効公訴時効民事の時効(消滅時効)
※参考
分類刑事刑事民事
意味裁判確定後、一定期間刑が執行されないと言い渡された刑が免除になる制度犯罪終了後、一定期間経過すると、検察官の公訴権が消滅する制度一定期間経過すると、相手方に対する損害賠償請求権などが消滅する制度
期間言い渡された刑に応じて5年~20年7年1年~10年など法律の規定による

詐欺罪の量刑相場と基準

ここでは、詐欺罪の量刑相場などについて分かりやすく解説します。

初犯の場合の量刑相場

そもそも量刑相場があってないようなものです。
そのため、以下の記事はあくまでも参考程度にとどめてください。
量刑は、➀犯罪態様や➁被告人(メディアでいうところの「○○被告」と同じ意味です)の事情などに左右されます。

刑事処分が決まる基準

刑事処分を左右する基準には、次のようなものが挙げられます。

➀の事情として
・詐欺行為の手口
・被害額の大きさ
・犯罪の動機
・計画性
・共犯の場合は被告人の役割
➁被告人自身の事情
・過去の犯罪歴
・生活状況
・被害者との示談の成立がしているのか、否か
・被害額の弁済が住んでいるのか
・加害者側の反省の程度
・再度犯罪をしないための具体的な計画
・家族など周囲のサポート
・被害者感情
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余罪がある場合の量刑相場

裁判で余罪も審理することになった場合、裁判が長期化することがあります。
量刑は、単純に合算するのではなく刑法という法律で決まっています。単純な合算はしませんが全て有罪となれば、刑は重くなるのが通常です。

初犯の場合に執行猶予はつくのか

巷では初犯では執行猶予判決になると言われることがあるようです。確かに、初犯の人とそうではない人を比較すると、初犯の人の方が執行猶予付き判決になることが多いと思われます。しかしながら、上記のとおり量刑は様々事情で変わるので一概にいうことはできません。

たとえば、組織的な犯行で、被害額が莫大な金額である場合は執行猶予がつかなくなるでしょう。その反面、犯行が悪質なものではなくて、被害金も少額、被害者側と示談が成立している場合は執行猶予が付く可能性が高くなります。

詐欺罪を犯した場合のリスク

詐欺罪を犯した場合は、懲役刑が科せられる他に、さまざまなリスクがあり不利益を被ることがあります。

逮捕から起訴まで身柄拘束される

まず、考えられるのは逮捕から起訴まで長期間に渡り、身柄拘束されてしまうことです。状況によっても変わりますが、通常は逮捕されてから3日間は身体拘束されることが多いです。その後は、検察官から裁判所に対して「勾留請求」がされることが多いです。勾留請求が裁判所に許可されると、さらに10日間拘束されます。事案にもよりますが検察官は捜査をするにあたり更に勾留を延長するやむを得ない事情があれば、更に10日間延長することができます。

再延長まで含めると逮捕から最長で23日間身体拘束されてしまいます。余罪があれば、余罪の罪で身体拘束されることもありますので、数か月身体拘束されることもあります。 身柄拘束期間は弁護士であればいつでも時間制限なく、しかも警察官の立ち合い無くして接見(面会)することできます。また、ご家族やご友人も面会することができます(こちらは時間指定や制限時間があります。警察官も同席します)。

ところが、面会人を通じて証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれがある場合、共犯がいる場合には、裁判所は弁護士以外の者との接見を禁止することができます(刑事訴訟法81条)。接見が禁止になると、弁護士を通じて話しをするほかなくなってしまいます。

初犯の詐欺罪で執行猶予を獲得するためのポイント

詐欺罪が成立して執行猶予がつかない場合は、懲役刑が科せられてしまうので注意が必要です。ここでは、初犯で執行猶予を獲得するためのポイントについて解説します。

被害者との示談が重要

被害者に誠意を持って謝罪をして、示談を成立させた場合は、刑事処分にも有利に働きます。示談を成立させることによって、不起訴の獲得を得られたり、執行猶予が付いたりする可能性が高いです。

詐欺罪の示談金の相場

被害者と加害者側で示談が成立する場合は、示談金が必要となる場合があります。示談金の相場は量刑と同じくあってないようなものですが、可能な限り全額賠償に近づけることが望ましいでしょう。

示談が成立しない場合の対処法

示談が成立しないからという理由だけで執行猶予が付かないということにはなりません。しかし、示談が成立した場合のような減刑効果も得られないことを把握しておきましょう。

詐欺罪の判例事例

詐欺罪で恐ろしいのは、組織的な犯行に加担してしまうことです。近頃は、高額なアルバイト代金が欲しい大学生などが、受け子になってしまうケースも少なくありません。学生などは、詐欺グループであることを知らずに、犯罪に手を染めてしまうこともあるため、極めて危険です。

このような受け子の詐欺罪の判例事例は、さまざまなので、どのような場合に有罪となり、どのような場合に無罪となるのか判例事例を踏まえて覚えておきましょう。

特殊詐欺の受け子に逆転有罪(最高裁)

特殊詐欺事件の被害金を宅配便で受け取った詐欺罪に問われて、2審で無罪になっていた受け子が、上告審判決で2審東京高裁判決を破棄し、逆転有罪となりました。この逆転有罪の判決は、特殊詐欺事件の摘発を目指す捜査局や全国の裁判所の司法判断にも大きな影響が与えられると言われています。

判決によると、被告人はマンションの郵便受けから、宅配便の不在連絡票を受け取りました。その不在連絡票に記載されていた暗証番号を使用して、宅配ボックスから荷物を受け取り、回収役に渡しました。

被告人は「親からの荷物を取ってくるように知り合いから頼まれたため、宅配ボックスの荷物を知り合いに渡した」と主張していたが、明らかになっている事実から「被告人は詐欺であるのを知っていた」と推認し、詐欺罪の成立を認定しました。
(引用元:産経新聞)

被害金運搬の男性に無罪判決(熊本地裁)

荷物中身が特殊詐欺の被害金だと知りながら運搬していたとして、盗品等運搬罪に問われた男性に無罪判決が言い渡された。この被告人は、3回ほど被害金を運搬していたのです。 一見すると、詐欺に加担をしていると思われるが、被告人の運搬業務に報酬が支払われていることもなく、犯罪に関与していると気づいている要素も乏しかったという指摘から、無罪が言い渡されました。
(引用元:毎日新聞)

まとめ

詐欺罪は罰金刑が無いので、執行猶予が付されなかった場合には実刑判決となり刑務所に行くことになります。
高額収入だけに注目して、アルバイトのような軽い気持ちで仕事をしていたところ、詐欺グループであったということもあります。

詐欺グループの背後には反社会的勢力(暴力団)もいることもあり、一度グループに入ってしまうと容易に抜け出せず泥沼にはまってしまうということもあります。甘い勧誘にはのらないようにしましょう。

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