「個人再生をしたら、家も車も預貯金も全部取られてしまうのでは?」
「自己破産と何が違うの?財産はどこまで残せる?」
ただし、保有財産の総額によっては「清算価値保障原則」が適用され、返済額に影響が出る場合があります。
住宅ローン特則の活用方法や、連帯保証人・職場への影響まで紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。
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この記事の目次
個人再生で失うものは原則ない——その理由と自己破産との違い
「個人再生をしたら、家も車も預貯金も全部取られてしまうのでは」と不安を感じている方は多いです。
しかし結論から言うと、個人再生は財産を処分しない手続きです。
個人再生は財産を手放さずに借金を減額できる手続きで、自己破産とは「財産の扱い方」が根本的に異なります。
個人再生を利用するには負債額・継続収入の要件を満たす必要があります。
個人再生は財産を処分せず借金を減額する手続き
個人再生とは、裁判所を通じて借金の総額を大幅に減額し、残った金額を原則3年間で分割返済する法的な手続きです。
財産を処分して債権者に配当する仕組みではないため、手続き中も手続き後も、原則として財産はそのまま手元に残ります。
減額できる借金の幅は、元本ベースで最大10分の1程度になるケースもあります。
日本弁護士連合会が公表している資料でも、個人再生の活用によって返済総額が大きく圧縮された事例が多数紹介されています。
ただし「原則として財産を失わない」という点には、一つ重要な前提があります。
それが「清算価値保障原則」と呼ばれるルールです。
これは、手続き後の返済総額が、もし自己破産をした場合に債権者が受け取れる金額(=保有財産の合計額)を下回ってはならないという原則です。
つまり、保有財産の評価額が高いほど、返済計画の最低ラインが上がる可能性があります。
預貯金が数十万円程度・不動産の資産価値がローン残高を大きく上回らない水準であれば、この原則が返済額に与える影響は限定的とされることが多いです。
土地・建物の評価額がローン残高を大幅に超えるケースや、まとまった預貯金・解約返戻金がある場合は、弁護士への確認が特に重要です。
いずれの場合も、財産を「取られる」わけではなく、あくまで返済計画の最低ラインに影響するだけです。
財産そのものは手元に残ります。
この点が、財産を処分する自己破産と個人再生の最も大きな違いです。

自己破産は財産を処分する——個人再生との根本的な違い
自己破産は、一定以上の価値がある財産を換価・処分し、その代金を債権者に配当したうえで残債を免除する手続きです。
個人再生とは「財産の扱い方」が根本から異なります。
- 個人再生:財産を手放さない、借金を減額して返済を続ける
- 自己破産:財産を処分する、残債は免除される(返済不要)
自己破産では「自由財産」と呼ばれる一定の財産(現金99万円以下など)は手元に残せますが、それ以外の財産——不動産・車・預貯金・生命保険の解約返戻金など——は原則として処分対象になります。
一方、個人再生では持ち家も車も預貯金も、基本的にそのまま保有し続けることができます。
ただし、財産の種類によって注意が必要な例外があります。
車にローンが残っている場合(所有権留保付きローン)は、ローン会社が車を引き揚げる権利を持っているため、個人再生をしても車を手放すことになるケースがあります。
また、住宅ローンが残っている自宅については、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」という制度を利用することで、家を手放さずにローンを継続しながら再生計画を進めることが可能です。
この特則を使うには、住宅ローンの対象となっている自宅であること・ローンが現在も継続中であることなど、一定の条件を満たす必要があります。
住宅ローンがすでに完済している自宅はこの特則の対象外となりますが、財産として手元に残すこと自体は可能です。
返済能力がまったくない場合は自己破産が適切な選択肢になりますが、一定の収入があり財産を守りたい場合は、個人再生の方が現実的な手続きと言えます。

個人再生を使える条件(負債額・継続収入の要件)
個人再生を利用するには、法律上いくつかの要件を満たす必要があります。
要件を外れると手続き自体が認められないため、事前に確認しておくことが重要です。
- 負債総額が5,000万円以下であること(住宅ローンを除く)
- 継続的な収入があること、または収入が見込まれること
負債の上限については、住宅ローンを除いた借金の合計が5,000万円を超える場合は個人再生を利用できません。
その場合は民事再生法の別の手続きや、自己破産を検討することになります。
収入要件については、給与所得者に限らず、自営業者・フリーランス・年金受給者なども対象になります。
収入の種類よりも「毎月一定額を継続して返済できるか」という点が重視されると考えると、自分に当てはまるかどうかのイメージがつかみやすいでしょう。
過去に個人再生や自己破産を利用した経歴がある場合、前回の手続きから一定の期間(個人再生の場合は概ね7年程度が目安)を経ていないと再利用できない制限があります。
自分が要件を満たしているかどうかは、弁護士や司法書士などの専門家に確認するのが確実です。
費用面が不安な場合は、法テラス(日本司法支援センター)が提供する無料法律相談や審査を通じた費用立替制度を利用できる場合があります。

個人再生で残せる財産の具体例
個人再生では、多くの財産を手元に残したまま手続きを進められます。
住宅ローン特則を使えば自宅を維持でき、ローンが残っていない車もおおむね100万円前後以下の評価額であれば手放さずに済むケースが多くあります。
生命保険の解約返戻金や退職金見込額は清算価値の計算に影響するものの、保険自体を解約する義務はありません。
財産を失うかどうかは「ローンの有無」と「清算価値との関係」によって判断が変わるため、財産の種類ごとに「残せるかどうか」の判断軸を整理します。
自宅——住宅ローン特則を使えば維持できる
住宅ローンが残っている自宅は、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用することで、手放さずに維持できます。
住宅ローンの返済は通常どおり続けながら、その他の借金だけを圧縮する仕組みです。
- 対象は「個人が居住する住宅」に限られる(投資用不動産には適用不可)
- 住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと
- 住宅ローンが住宅の取得のみを目的として借りられたものであること
「住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと」という条件は、見落とされやすいポイントです。
たとえば自宅を担保にリフォームローンや別の借入をしている場合、その借入に対して抵当権が設定されていることがあり、この条件に抵触する可能性があります。
自宅に複数の借入が関係している方は、登記簿謄本や借入契約書で抵当権の設定状況を確認しておくことをおすすめします。
この特則は個人再生に固有の制度で、自己破産にはありません。
自己破産では自宅を含む財産が処分対象になりますが、個人再生の住宅ローン特則を使えば自宅を守りながら借金を圧縮できます。
住宅ローンを抱えながら債務整理を検討している方にとって、個人再生を選ぶ最大の理由になることが多いです。
ただし、すでに住宅ローンの返済が大幅に滞っており、金融機関が競売手続きを進めている段階では、特則の適用が間に合わないケースもあります。
競売の申立てがなされる前、あるいは開始決定が出る前の段階であれば対応できる余地があるとされていますが、状況によって判断が異なるため、弁護士に早期に相談することが重要です。

ローン完済済みの車
車については、ローンが残っているかどうかによって扱いが大きく変わります。
ローンを完済している車は、基本的に手放す義務はありません。
ただし、車の評価額が清算価値の計算に算入されるため、評価額が高い場合は返済総額が増える方向に影響します。
一方、ローンが残っている車は注意が必要です。
多くの自動車ローンには「所有権留保」という条件が付いており、ローン完済まで車の所有権はディーラーや信販会社にあります。
この場合、個人再生を申し立てると信販会社が車を引き揚げることがあります。
所有権留保がついているかどうかは、車検証の所有者欄がディーラーや信販会社名になっているかどうか、またはローン契約書の条項を確認することで判断できます。
- 車の時価(中古車市場での評価額)を事前に把握する
- 評価額が高額な高級車・新車に近い車は、清算価値への影響が大きくなる
- 通勤や業務など生活・仕事に必要な車であることを、弁護士を通じて裁判所に説明できるよう、使用状況を整理しておく
評価額の算定方法は裁判所や担当弁護士によって異なる場合があるため、具体的な数字は専門家に確認するのが確実です。

生命保険の解約返戻金
生命保険に加入している場合、保険そのものを解約する義務はありません。
ただし、解約返戻金がある場合、その金額が財産として清算価値の計算に算入されます。
解約返戻金が高いほど最低限の返済総額が増える可能性がありますが、これは返済計画の金額に影響するだけで、保険を今すぐ解約しなければならないわけではありません。
自己破産では解約返戻金が一定額を超える保険は解約・換価の対象になることがありますが、個人再生では保険を維持したまま手続きを進めることが原則です。
- 現時点での解約返戻金の額を保険会社に確認する
- 複数の保険に加入している場合は、すべての返戻金を合算して申告する
- 返戻金が少額の掛け捨て型保険は、清算価値への影響がほとんどない
保険の種類や加入年数によって返戻金の額は大きく異なります。
申告漏れは手続きの信頼性に関わるため、正確に把握して弁護士に伝えることが重要です。

退職金見込額
在職中に個人再生を申し立てる場合、将来受け取る退職金の見込額も財産として評価されます。
退職金を実際に受け取るわけではありませんが、「現時点で退職した場合に受け取れる金額の一定割合」が清算価値に算入されます。
実務上は、退職金規程に基づいて算出した自己都合退職時の退職金見込額の4分の1程度を財産として計上するケースが多いとされています(裁判所や代理人によって扱いが異なる場合があります)。
たとえば退職金見込額が400万円の場合、清算価値への算入額は約100万円程度になる計算です。
この金額が返済総額の算定に加わりますが、退職金そのものを今すぐ手放すわけではありません。
- 勤続年数が短い場合や退職金制度がない職場では、算入額がゼロまたは少額になる
- 退職金規程の写しや給与明細の提出を求められることがある
- 将来の退職金が高額でも、実際に今すぐ手放すわけではない
退職金見込額が高い場合でも、それは返済総額の算定に影響するだけです。
手続き中も継続して働き続けることができます。

個人再生で財産を失うケースと清算価値保障原則
個人再生は「原則として財産を処分しない手続き」です。
自己破産では財産を換価・処分して債権者に配当しますが、個人再生では財産を手放さずに生活を維持しながら返済を続けられます。
ただし、例外的に財産を失うケースや、財産が多いことで返済額が増えるケースが存在します。
担保権が設定された財産は手続きと関係なく失う可能性があり、清算価値保障原則により保有財産が多いほど最低返済額が上がります。
担保権が設定されている財産(抵当権・所有権留保)
担保権が設定された財産は、個人再生の手続きとは別の法律関係で処理されるため、担保権者が権利を行使すれば財産を失います。
- 個人再生は「担保権の行使を止める手続き」ではない
- 住宅ローン以外の担保付き借入(自動車ローンなど)は、原則として担保権者に財産を引き揚げられる
- 住宅ローンのみ「住宅資金特別条項」を利用すれば自宅を守れる
担保権とは、債権者が貸付の保全として財産に設定する権利のことです。
代表的なものが不動産に設定される「抵当権」と、自動車ローンなどで多く見られる「所有権留保」です。
所有権留保とは、ローン完済まで自動車の所有権を販売会社やローン会社が持ち続ける契約のことで、支払いが止まれば車を引き揚げられます。
個人再生の手続きが開始されても、担保権者は別除権者として担保権を単独で行使できます。
住宅ローン以外の担保付き債務については、この別除権の行使を止める手段がないため、自動車ローンの残債がある車は手続き中に引き揚げられることが多いです。
一方、自宅の住宅ローンについては「住宅資金特別条項」を利用することで、ローンを引き続き支払いながら自宅を維持できます。
これは個人再生の大きな特徴のひとつです。

清算価値保障原則——財産が多いと弁済額が上がる仕組み
清算価値保障原則とは、個人再生の返済総額が「自己破産した場合に債権者が回収できる金額(清算価値)」を下回ってはならないというルールです。
- 保有財産の合計額が大きいほど、最低返済額が上がる
- 現金・預貯金が概ね99万円以下にとどまり、その他の財産も少額であれば、清算価値による制約をほとんど受けないことが多い
- 不動産・預貯金・保険解約返戻金・退職金見込み額なども清算価値の計算対象になる
個人再生では、返済総額の下限が2つの基準のうち高い方で決まります。
1つは「最低弁済額基準」(債務総額に応じた法定の最低額)、もう1つが「清算価値基準」です。
清算価値が最低弁済額を上回る場合、清算価値の方が返済総額の下限になります。
たとえば、住宅ローン条項を使って自宅を守る場合でも、不動産の純資産部分は清算価値に算入されるため、返済総額が増える可能性があります。
財産が多い人ほど、清算価値の影響を受けやすい点に注意が必要です。

財産が多い場合に個人再生が不利になるケース
清算価値が高くなると、個人再生の返済総額が自己破産より大幅に増える場合があります。
清算価値が高すぎると、返済総額が圧縮されず個人再生のメリットが薄れ、財産の種類・評価額によっては自己破産や任意整理の方が有利なケースもあります。
具体的には、不動産の純資産(時価から住宅ローン残高を差し引いた額)が大きい場合、その金額がそのまま清算価値に上乗せされます。
結果として最低返済額が高くなり、毎月の返済負担が重くなることがあります。
また、退職金については「近い将来の退職が見込まれる場合」に見込み額の一定割合が清算価値に含まれます。
勤続年数が長く退職金の積み上がりが大きい場合は、この影響を無視できません。
財産が多い場合に個人再生が不利かどうかは、財産の種類・評価額・債務総額の組み合わせによって変わります。
財産が少なく債務が多い場合は清算価値の影響をほとんど受けず個人再生が有利になりやすい一方、財産が多く債務がそれほど大きくない場合は返済総額の圧縮効果が小さくなることがあります。
「財産が多いから個人再生は向かない」と自己判断せず、弁護士に試算してもらうことが最も確実な判断方法です。

財産隠しが発覚した場合のリスク
財産隠しは、個人再生の手続き上もっとも深刻なリスクをもたらす行為です。
正直に財産を申告する限り、このリスクは関係ありません。
申告の範囲や方法に迷う場合は、自己判断せず弁護士に確認したうえで対応すれば問題ありません。
- 再生計画の認可が取り消され、返済猶予が無効になる
- 手続きの信用を損なう行為として裁判所の判断に影響し、将来の債務整理にも支障をきたす可能性がある
- 詐欺破産罪に問われる可能性がある(刑事罰)
個人再生では、申立て時に財産目録を裁判所へ提出します。
この目録に財産を意図的に記載しなかった場合、裁判所や債権者から調査が入ったときに発覚するリスクがあります。
金融機関の取引履歴・不動産登記・保険契約の照会など、調査手段は多岐にわたります。
財産隠しが発覚した場合、裁判所は再生計画の認可を取り消すことができます。
認可が取り消されると、それまでの返済が無駄になるだけでなく、残債務が一括で請求される状態に戻ります。
さらに、故意に財産を隠した行為は詐欺的行為として刑事責任を問われる可能性もあります。

財産以外で個人再生が生活に与える影響
個人再生の手続きが生活に与える影響は、財産の問題だけにとどまりません。
信用情報機関に事故情報が登録され一定期間はクレジットカードやローンの利用が制限され、家族の法的地位や財産に直接影響は及ばないものの連帯保証人になっている場合は別途対応が必要になります。
官報への掲載はあるものの、職場に自動的に通知される仕組みはありません。
信用情報(ブラックリスト)への登録期間
個人再生の手続きをすると、信用情報機関に事故情報が登録されます。
この状態が続く期間は、おおむね5年から7年程度とされており、個人再生の場合は一般的に5年程度とされることが多いですが、登録する機関や契約内容によって異なるため、手続き前に専門家へ確認することをおすすめします。
- CIC(クレジット・信販系)
- JICC(消費者金融系)
- 全国銀行個人信用情報センター(銀行・信用金庫系)
この期間中は、新規のクレジットカード発行・住宅ローン・マイカーローン・スマートフォンの分割払い契約などが審査に通りにくくなります。
既存のカードも更新時に利用停止となるケースがあります。
ただし、事故情報の登録期間が過ぎれば、信用情報は回復します。
「永久にローンが組めなくなる」わけではなく、一定期間の制限であることを理解しておくことが重要です。
日常の現金払いやデビットカードの利用には影響がないため、買い物や公共料金の支払いといった日々の生活そのものが送れなくなるわけではありません。

家族・配偶者への直接的な法的影響
個人再生は申立人本人の手続きであり、配偶者や家族の財産・信用情報に直接的な法的影響は及びません。
家族の財産は手続きの対象外です。
配偶者名義の預金・不動産・車なども、申立人の財産でなければ処分の対象にはなりません。
家族のクレジットカードや信用情報も、申立人とは別に管理されているため、影響を受けることはありません。
連帯保証人になっている家族がいない場合は、家族への法的な影響はほぼないと考えて差し支えありません。
ただし、生活実態として影響が生じる場面はあります。
家計を一本化している家庭では、申立人のカードが使えなくなることで、家族の日常的な支出の管理方法を見直す必要が生じます。
住宅ローンを申立人と配偶者が共同で組んでいる場合など、実態として家族の資産と連動している契約については、弁護士や司法書士などの専門家に個別に確認することをおすすめします。

連帯保証人になっている家族への影響
連帯保証人になっている家族がいる場合は、注意が必要です。
個人再生を申し立てると、債権者は申立人への請求が制限される一方で、連帯保証人に対しては引き続き請求を行うことができます。
- 申立人が個人再生で借金を圧縮しても、連帯保証人の保証債務はそのまま残る
- 債権者が連帯保証人に対して一括返済を求めてくる可能性がある
- 連帯保証人が返済できない場合、その人自身が債務整理を検討せざるを得なくなることもある
このリスクは、個人再生を選択する前に必ず確認しておくべき点です。
特に、親や配偶者が保証人になっているケースでは、手続き前に専門家と相談しながら、保証人への影響を含めた対応策を検討することが求められます。
連帯保証人への影響を軽視したまま手続きを進めると、保証人が突然の一括請求を受けるなど経済的な負担が生じ、家族関係にも影響が及ぶ可能性があります。

職場・会社にバレるリスクと官報掲載
個人再生の手続きをしても、職場や会社に自動的に通知される仕組みはありません。
勤務先への通知義務は存在せず、給与の差し押さえも原則として行われないため、会社に知られるリスクは限定的です。
ただし、官報への掲載は避けられません。
官報とは国が発行する公告紙であり、個人再生の認可決定が掲載されます。
とはいえ、官報を日常的にチェックしている一般の人はほとんどおらず、掲載されたからといって職場の同僚や上司、家族に自動的に知られる可能性は現実的には低いといえます。
- 証券会社・銀行・保険会社など、一部の金融機関に勤務している場合(社内規定で申告義務が課されているケースがある)
- 会社が信用調査を定期的に実施している場合
- 職場の同僚や上司が連帯保証人になっている場合
上記の例外ケースに当てはまらない会社員であれば、手続きが職場に発覚する可能性は低く、仕事を続けながら手続きを進めることが可能です。
これらの状況に該当する場合は、事前に専門家へ相談し、リスクの範囲を確認しておくことをおすすめします。

個人再生後の返済生活のイメージ
個人再生を検討するとき、「手続き後に毎月いくら払うのか」「何年で生活が落ち着くのか」は、誰もが気になる現実的な疑問です。
借金の総額が最大5分の1程度まで圧縮され、返済期間は原則3年(事情があれば最長5年)、手続き中も通常の生活費は確保できます。
自己破産と異なり原則として財産の処分は求められません。
借金が最大5分の1に減額される仕組み
個人再生の最大の特徴は、借金の元本そのものを大幅に圧縮できる点です。
減額後の残債を分割払いするため、毎月の返済負担は手続き前と比べて大きく軽減されます。
また、個人再生は自己破産と異なり、手続きにあたって財産を処分することが原則として求められません。
自宅・車・預貯金などの財産は、基本的にそのまま手元に残した状態で手続きを進められます。
ただし、保有する財産の合計額(清算価値)が返済額の下限に影響するという仕組みがあり、財産が多い場合は返済額が増える場合があります。
減額の幅は借金の総額によって異なり、おおまかに以下のような段階的な基準が設けられています。
| 借金総額 | 最低弁済額の目安 |
|---|---|
| 100万円未満 | 原則として全額が最低弁済額 |
| 100万円以上500万円未満 | 100万円が最低弁済額の目安 |
| 500万円以上1,500万円未満 | 総額の5分の1程度が目安 |
| 1,500万円以上3,000万円以下 | 300万円が最低弁済額の目安 |
たとえば500万円の借金があった場合、最低弁済額は概ね100万円前後になる計算です。
これを3年(36回)で返済すると、毎月の返済額は3万円前後という水準になります。
手続き前に毎月10万円以上を返済していた方にとっては、生活が大きく変わる数字です。

返済期間は原則3年・最長5年
個人再生の返済期間は、原則として認可決定から3年(36回払い)と定められています。
病気や失業など、やむを得ない事情がある場合に限り、裁判所の判断で最長5年(60回払い)まで延長が認められることがあります。
3年という期間は、一般的なローンの返済期間と比べると短めに感じるかもしれません。
しかし元本が大幅に圧縮されているため、毎月の支払い額は現実的な水準に収まるケースが多いです。
返済が始まるタイミングは、裁判所から再生計画の認可が下りた後です。
申立てから認可まで、おおよそ半年前後かかることが多く、その間は債権者への返済が一時的に止まります。
この期間に生活を立て直す準備ができるという点も、手続きの実務的なメリットのひとつです。
なお、住宅ローンが残っている自宅については「住宅ローン特則」という制度を利用できる場合があります。
この特則を使うと、住宅ローンの返済を継続しながら他の借金だけを圧縮できるため、自宅を手放さずに手続きを進められる可能性があります。

手続き中の生活費への影響
個人再生の手続き中も、日常の生活費は通常どおり使えます。
自己破産のように財産が処分されるわけではないため、預金口座が凍結されたり、給与が差し押さえられたりすることはありません。
- クレジットカードが利用停止になる(信用情報機関への登録期間は5〜10年前後)
- 新規のローンやカードの審査が通りにくくなる
- 保証人付きのローンがある場合、保証人に請求が届く可能性がある
日々の買い物や公共料金の支払い、家賃などは現金・デビットカード・口座振替で対応できるため、生活そのものが止まるわけではありません。
家族が別の口座を持っている場合、その口座への影響もありません。
また、家族名義の財産(配偶者名義の不動産や口座など)は、個人再生の対象にはなりません。
手続き中の家計管理として実務的に重要なのは、弁護士費用や裁判所への予納金の準備です。
分割払いに対応している事務所も多いため、依頼前に複数の事務所に確認しておくと安心です。

個人再生と自己破産、どちらが自分に向いているか
個人再生は、原則として財産を手放さずに借金を減額できる手続きです。
「手続きをしたらすべてを失うのではないか」という不安を持つ方も多いですが、財産の処分を求められる自己破産とは仕組みが異なります。
財産を残せるかどうかは両手続きで大きく異なり、費用・期間・信用情報への影響にもそれぞれ特徴があります。
収入の有無・財産の状況・職業上の制限など、向き不向きを左右する条件があります。
財産処分の有無——最大の違い
個人再生は財産を手放さずに済む手続きであり、自己破産は一定額を超える財産を処分して債権者に配当する手続きです。
この点が両者の最大の違いです。
自己破産では、自由財産(現金約20万円以下、差押禁止財産など)を除いた財産は原則として処分の対象になります。
住宅ローンが残っている自宅はもちろん、解約返戻金が一定額を超える生命保険、時価が一定水準を超える自動車なども換価されます。
一方、個人再生では財産の処分は求められず、住宅ローン特則を利用すれば自宅を維持したまま手続きを進めることも可能です。
- 預貯金:個人再生では手元に残せるが、その評価額が最低返済額の算定に影響
- 自動車:個人再生では原則として手元に残せる(ローン残債がある場合は別途確認が必要)
- 自宅:住宅ローン特則の要件を満たせば維持できる
ただし、個人再生にも「清算価値保障原則」があります。
これは「保有財産の評価額の合計を下回る返済計画は認められない」という仕組みで、財産の評価額が高いほど最低返済額が引き上げられます。
財産を手元に残しながら返済額を圧縮できる一方、保有財産の評価額によっては返済総額が増える場合もあることを理解しておく必要があります。

費用・期間・信用情報への影響の比較
費用・手続き期間・信用情報への影響は、どちらの手続きを選ぶかを判断するうえで実務的に重要な比較軸です。
まず費用については、個人再生は弁護士費用・裁判所費用を合わせると自己破産より高くなる傾向があります。
個人再生には「個人再生委員」への費用が発生するケースがあり、また再生計画案の作成など手続きが複雑なため、専門家報酬も相対的に高くなりやすいです。
自己破産は、同時廃止(財産なし・免責まで一括処理)で進む場合は費用を抑えやすい傾向があります。
目安として、個人再生の弁護士費用は数十万円程度、自己破産は同時廃止であれば比較的低く抑えられることが多いとされていますが、事務所や事案の複雑さによって異なるため、相談時に確認することをおすすめします。
手続き期間については、どちらも申立てから手続き終了まで数か月から1年前後かかるケースが多く、案件の複雑さや裁判所の混雑状況によって変わります。
個人再生では再生計画の認可後に3〜5年の返済期間が続くため、「手続きの終了」と「完済」は別のタイミングになります。
信用情報への影響(いわゆる事故情報の登録)は、個人再生・自己破産ともに発生します。
登録期間は信用情報機関によって異なり、おおむね5年から10年程度とされることが多いですが、詳細は各機関の基準によります。
いずれも一定期間はローンやクレジットカードの新規契約が難しくなる点は共通しており、この点において両手続きに大きな差はないと考えておくのが適切です。

個人再生が向いているケース・自己破産が向いているケース
どちらが向いているかは、収入の有無・財産の状況・職業上の制限の三つを軸に判断するのが実務上の基本です。
- 安定した収入があり、圧縮後の債務を返済できる見込みがある
- 自宅を手放したくない(住宅ローン特則の利用を希望している)
- 自己破産すると職業・資格に支障が出る(士業・警備員・保険外交員など)
自己破産では免責が確定するまでの間、一部の職業・資格に制限がかかる場合があります。
対象となりやすい職業の例としては、弁護士・司法書士などの士業、警備員、生命保険の外交員などが挙げられます。
自分の職業が該当するかどうかは、必ず弁護士に確認してください。
個人再生にはそのような職業制限がないため、仕事を続けながら手続きを進められる点が大きなメリットです。
- 継続的な収入がなく、個人再生の返済要件を満たせない
- 財産がほとんどなく、処分されるものが少ない
- 債務総額が大きく、個人再生での圧縮後も返済が現実的でない
自己破産は免責が認められれば債務がゼロになるため、返済能力が見込めない場合には現実的な選択肢です。
ただし、免責不許可事由(ギャンブルによる借入れ、財産隠匿など)に該当する場合は免責が認められないこともあるため、過去の借入れ経緯は弁護士に正直に伝えることが重要です。

不安が残るなら弁護士への無料相談が最短ルート
ここまで読んでも「自分の財産は大丈夫なのか」という不安が消えない場合、弁護士への無料相談が最も確実な解消方法です。
個人再生では原則として財産を失うことはありませんが、保有財産の合計額(清算価値)が一定の基準を超える場合には、その分だけ返済額に影響が出る仕組みになっています。
自宅を守りながら借金を減額できる可能性がある一方、状況によって結果は異なるため、自分のケースで何が当てはまるかを個別に確認することが重要です。
無料相談で確認できること・できないこと
無料相談では、保有している財産の一覧を伝えることで、以下の内容を確認できます。
- 清算価値の概算:保有財産の合計をもとに、最低限の返済額の基準となる金額の見通し
- 最低弁済額の目安:借金総額のうち、実際に返済が必要になる金額の目安
- 手続きの選択肢:小規模個人再生か給与所得者等再生か、どちらが自分の状況に合うか
自動車ローンが残っている場合のリスクや、持ち家への影響についても、この段階で整理できます。
一方、不動産の評価額は査定が必要なため、相談時点では「おおよそこの範囲」という見通しにとどまることがあります。
それでも、手続きを進めるかどうかの方向性を判断するうえでは十分な情報が得られます。
- 借金の総額と主な債権者の名前
- 毎月の収入(給与明細や源泉徴収票があれば理想的)
- 保有している財産の概要(預貯金・車・不動産など)
- ローンが残っている財産の残債額
これらを大まかにメモしておくだけで、相談の質が大きく上がります。
相談先としては、法テラス(日本司法支援センター)や各地の弁護士会が設けている法律相談窓口が代表的です。
収入が一定水準以下の場合には費用の立替制度が利用できることもあるため、費用面で不安がある場合は問い合わせ時に確認してみてください。

相談を後回しにするほど選択肢が狭まる
債務問題は、時間が経つほど状況が悪化しやすい性質があります。
滞納が続けば遅延損害金が積み上がり、差し押さえが実行されれば手続きの選択肢が一気に狭まることがあります。
差し押さえが開始された後に個人再生を申し立てようとすると、手続き上の制約が生じたり、対応できる範囲が限られたりする場合があるためです。
「もう少し情報を集めてから」と先延ばしにすることで、個人再生など本来なら利用できた手続きが使いにくくなるケースも実際に存在します。
無料相談は「決断」ではなく、情報収集の場です。
弁護士に話を聞いてもらうだけで、自分の状況が客観的に整理され、不安の正体が明確になります。
「自宅や車への影響が心配していたよりも小さかった」と分かるケースも、相談者の中には一定数います。
自分がそのケースに当てはまるかどうかは、保有財産の種類やローンの有無によって変わります。
まずは専門家に確認することが、判断の出発点です。

個人再生でよくある質問|失うものと残せるものを正しく理解するために
個人再生を検討するとき、「何を失うのか」「家族への影響はどうなるのか」といった不安は、多くの方が感じるものです。
手続きの仕組みを正確に知らないまま判断を迷っているケースも少なくありません。
個人再生に関してよく寄せられる疑問に対して、一つひとつ丁寧にお答えしています。
正しい情報をもとに、冷静に選択肢を検討するための参考にしてください。
個人再生をすると自宅は必ず失いますか?
住宅ローン特則を利用すれば、個人再生後も自宅を手放さずに済む場合があります。
個人再生には住宅ローン特則という制度があり、これを利用することで自宅を維持しながら手続きを進めることができます。
住宅ローン以外の借金を圧縮しつつ、住宅ローンの返済は従来どおり継続するという仕組みです。
ただし、住宅ローン特則を利用するには一定の条件を満たす必要があり、すべての方が適用を受けられるわけではありません。

車は個人再生後も乗り続けられますか?
ローンが完済済みの車は原則として手元に残せますが、ローン返済中の車は引き揚げられるケースが多いです。
個人再生の手続きでは、ローンが完済済みの車であれば、原則として所有権は本人にあるため、そのまま乗り続けられる可能性があります。
一方、ローン返済中の車には「所有権留保」という条件が付いていることが多く、この場合は信販会社やディーラーが所有権を持っているため、手続き中に車を引き揚げられるケースが少なくありません。
所有権留保の有無はローン契約書の内容によって異なるため、手続き前に弁護士や司法書士に契約内容を確認してもらうことが重要です。

家族が連帯保証人になっている場合、個人再生をすると家族に請求が行きますか?
個人再生をしても、連帯保証人である家族への請求は免除されません。
個人再生による債務の減額・免除はあくまで申請した本人に対してのみ効果があり、連帯保証人の責任はそのまま残ります。
そのため、家族が連帯保証人になっている借金については、債権者から家族に対して返済請求が行われる可能性があります。
家族が突然の請求を受けて困惑しないよう、個人再生の手続きを始める前に、家族へ状況を丁寧に説明しておくことが重要です。

資産が多い場合、個人再生はできませんか?
資産が多くても個人再生は利用できますが、弁済額が高くなる可能性があります。
個人再生は、資産が多い場合でも手続き自体を利用することは可能です。
ただし、清算価値保障原則により、保有する資産の総額を下回らない金額を弁済する必要があるため、資産が多いほど返済額が高くなる傾向があります。
そのため、資産額と借金額のバランスによっては、個人再生よりも自己破産のほうが返済負担を抑えられるケースもあります。

個人再生の手続き中に収入が途絶えたらどうなりますか?
個人再生の認可には継続的な収入が必要なため、手続き中に収入が途絶えた場合は手続きの継続が難しくなります。
個人再生は、返済能力があることを前提とした手続きです。
そのため、継続的な収入の存在が認可の重要な要件となっており、手続き中に無職・収入なしの状態になると、裁判所から認可を受けられなくなる可能性があります。
収入の途絶えが一時的なものであれば、再就職の見通しを示すことで対応できる場合もありますが、見通しが立たない場合は手続きの継続自体が困難になることがあります。

手続き後にブラックリストに載る期間はどのくらいですか?
個人再生後の信用情報への登録期間は、原則5〜7年程度が目安です。
この期間中は、クレジットカードの新規作成や住宅ローン・カーローンなどの新規借入が難しくなります。
いわゆる「ブラックリスト」とは、信用情報機関に事故情報として登録された状態を指し、金融機関がこの情報を審査時に参照するためです。
登録期間が経過すると情報は削除され、その後は通常どおり審査を受けられる状態に戻ります。

まとめ
個人再生は「原則として財産を処分しない」手続きで、自宅・車・預貯金などの資産を手元に残したまま借金を最大5分の1程度まで減額できるのが最大の特徴です。
住宅ローン特則を使えば自宅を維持しながら手続きを進められ、ローン完済済みの車も基本的に残せます。
生命保険の解約返戻金や退職金見込額は清算価値の計算に算入されますが、保険を解約したり退職金を今すぐ手放したりする必要はありません。
例外として、自動車ローンの所有権留保がある車は引き揚げられる可能性があり、保有財産が多い場合は「清算価値保障原則」によって最低返済額が引き上げられる仕組みもあります。
信用情報には5〜7年程度事故情報が登録され、連帯保証人がいる借金は家族に請求が及ぶ点に注意が必要ですが、家族の財産・信用情報そのものに直接の影響はなく、官報掲載があっても職場発覚の可能性は限定的です。
返済期間は原則3年・最長5年、手続き中も日常の生活費は通常どおり使えます。
自己破産との最大の違いは「財産処分の有無」で、収入があり財産を守りたい方は個人再生、収入見込みがなく返済困難な方は自己破産が基本軸になります。
「財産がどうなるか」の最終判断は、借金額・収入・財産の組み合わせで人それぞれです。無料相談では清算価値の概算・最低弁済額の目安・手続きの選択肢を具体的に確認でき、相談したからといって依頼義務もありません。差し押さえが始まる前に動くほど選択肢が広がるので、不安を抱えたままにせず一度専門家に話を聞いてもらうことが、最短かつ最も確実な解消方法です。
あまた法律事務所では、個人再生をはじめとする債務整理に関するご相談を承っております。

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。
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