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通常の借金に比べると、奨学金住宅ローンには、あまり悪いイメージがないかもしれません。これは、奨学金や住宅ローンが、学業(通学)や住宅の購入を目的として使われるものであり、いずれにおいても、その利用者が多いという現状があるからではないでしょうか。

もっとも、「借金」という意味では、通常の借金と何ら変わりはなく、むしろ、通常の借金に比べ、奨学金や住宅ローンは、その支払期間が長期にわたることが一般的であるため、債務者には継続して安定した収入を得ることが求められます。

このように、通常の借金とは性質を異にする奨学金や住宅ローンですが、これらにも通常の借金と同じように過払い金が発生することはあるのでしょうか。
そこで今回は、奨学金と住宅ローンに過払い金が発生することはあるのか、という点について解説していきます。

1 過払い金とは?

「過払い金」とは、「払い過ぎた利息」のことをいい、具体的には、借金の貸付利率が利息制限法上の利率を超える場合に発生するものです。

現在では、利息制限法が定める上限を超える利率で貸し付けている貸金業者はほとんどないため、ここ数年内に取引を開始したような場合には、過払い金が発生しているということはありません。

しかし、貸金業法が改正された2010年より以前に取引を開始したような場合は、特に消費者金融などにおいては、利息制限法上の利率を超える利率で貸し付けていたため、過払い金が発生している可能性があります。

このように、過払い金が発生するためには、貸付利率が利息制限法上の利率を超えている必要があり、過払い金が発生している場合には、債務者は債権者に対し、過払い金の返還を請求できます(いわゆる「過払い金の返還請求」)。

もっとも、実際に、過払い金の返還を受けるためには、その前提として債権者との交渉が必要であるため、費用を考慮してもなお、弁護士に依頼する方が多くなっています。

2 過払い金の計算

過払い金について正確な金額を算出するためには、債務者と債権者の全取引が記載された「取引履歴」を取り寄せる必要があります。取引履歴には、全取引に係る取引日や借入額・支払額などが記載されています。

貸金業者は、債務者の求めに応じて取引履歴を開示する義務があるため、債務者は、電話や郵便などの方法により、債権者から取引履歴を取り寄せることができます。

過払い金額は、この取引履歴に基づき「引き直し計算」をすることで算出されます。

ここでいう「引き直し計算」とは、債権者との約定利率を利息制限法上の利率に引き直して計算することをいいます。借金額に応じて、適用する利率に違いはありますが、具体的には、15%~20%で引き直し計算をすることになります。
その結果、残元金がマイナスになっていれば、過払い金が発生していることになります。

以上のように、過払い金はあくまでその貸付利率が利息制限法を超えている場合に限り発生しうるものであって、貸付利率が利息制限法を超えていない場合には、そもそも過払い金は問題となりません。

3 奨学金のケース

奨学金制度は、経済的に苦しい学生の進路を可能にするための大切な制度です。

しかし、奨学金の多くは、後に利用者が返済していくことが予定されているところ、その支払いに苦しむ利用者が増え、利用者の人生設計を狂わす要因ともなり、社会問題にもなりました。

また、奨学金を利用する場合には、保証人をつけることが条件となっていることがほとんどであるため、奨学金の支払いが遅れると、保証人に請求されるケースもあり、最悪の場合、裁判を起こされることになります。

このように、奨学金制度は経済的に苦しい学生を救済するための制度である一方で、その支払いに苦しむ利用者を生んでしまい、時に利用者の人生をも狂わす制度であると評価することができます。

その意味では、通常の借金と何ら変わりがないということがいえそうですが、この奨学金についても、通常の借金と同じように過払い金が発生することはあるのでしょうか。

(1)奨学金と過払い金

先に見たように、過払い金は、貸付利率が利息制限法上の利率を超えている場合にはじめて発生しうるものです。

しかし、奨学金は、そもそもが利息制限法の範囲内で利率が設定されていることがほとんどであるため、過払い金が発生することはないといっていいでしょう。

(2)奨学金の支払いが難しくなった場合は?

奨学金が過払い金の対象にならない以上、支払いが難しくなった場合であっても、原則として、支払いを続けていくほかありません。

もっとも、多くの学生が利用している日本学生支援機構では、奨学金の支払いが困難な人に対し、一定の救済措置が採られています。

具体的には、「減額返還制度」と「返還期限猶予制度」により、奨学金の支払いが困難な人を救済する措置が採られています。

ここでいう「減額返還制度」とは、毎月の支払額を一定の割合で減額し、毎月の支払額の負担を軽くできるものです。現在は、2分の1または3分の1にまで減額することが可能になっています。

支払総額は変わらないものの、毎月の負担を軽くできるため、自分の状況に合った金額に減額することにより、支払いを続けていくことができます。

「返還期限猶予制度」とは、毎月の支払いを先延ばしにできるもので、最大で10年間支払いを先延ばしにすることが可能です。
一定期間、奨学金の支払額を捻出できないような事情がある場合には、返還期限猶予制度を利用することにより、奨学金の支払いを先延ばしにすることができます。

なお、これらの制度を利用するためには、奨学金の支払いが遅れていないことが条件となります。そのため、奨学金の支払いに不安を覚えている方は、支払いが遅れる前に、あらかじめ、いずれかの制度を利用することを検討することが大切です。

また、奨学金以外にも借金がある場合には、奨学金を含め、すべての借金を対象とした任意整理を検討することも選択肢の一つです。

もっとも、奨学金自体は、利率が低く設定されているため、支払額を減額することはできませんし、保証人を立てている場合には、保証人に請求される可能性があります。

そのため、任意整理をするにしても、可能であれば奨学金を整理の対象から外しておいた方が良いでしょう。奨学金以外の借金について、月々の支払額を減額できれば、奨学金の支払いを従来通り続けていくことができるかもしれません。

(3)学生ローンは?

奨学金に似た制度に「学生ローン」があります。
ここでいう「学生ローン」とは、学生を対象として貸付を行う消費者金融のことをいいます。学生を対象としている点では同じですが、学生ローンと奨学金はまったくの別物です。

奨学金では、利息制限法の範囲内で利率が設定されていることがほとんどですが、学生ローンは、貸金業法が改正されるまでは、利息制限法を超える利率で貸し付けることも少なくありませんでした。
そのため、特に貸金業法が改正された2010年以前に学生ローンを利用していた方は、過払い金が発生している可能性があります。

POINT
奨学金とは異なり、2010年以前に学生ローンを利用していた方は、過払い金が発生している可能性があります。

4 住宅ローンのケース

「住宅ローン」とは、金融機関から借り入れる住宅の購入資金のことをいい、その際には、住宅を担保として差し入れることが一般的です。
現在も多くの人が、自宅などを購入する場合には、この住宅ローンを組んでいます。

(1)住宅ローンと過払い金

住宅ローンについても、奨学金と同様、貸付利率が利息制限法上の利率を超えることはほとんどないため(利率は1%前後であることがほとんど)、過払い金が問題となることはありません

(2)住宅ローンの支払いが難しくなった場合は?

住宅ローンの支払いが遅れてしまうと、金融機関により担保として取られている住宅を競売にかけられてしまい、住宅を失うことにもなりかねません。

住宅ローンを支払えないからといって放置してしまうことは一番やってはいけません。

まずは、融資を受けた金融機関に現状を相談する必要があり、場合によっては、支払いをリスケしてもらえることもあります。

また、住宅ローンの他にも借金がある場合には、その借金を対象に任意整理を行えるかどうかを検討する必要があります。住宅ローンそのものを任意整理の対象に含めてしまうと、住宅を競売にかけられてしまいます。
そのため、その他の借金を対象に任意整理をすることで、月々の支払額を減額できるかどうかが大きなカギとなります。その他の借金について、月々の支払額を減額できれば、住宅ローンを従来通り、支払い続けていくことが可能になるかもしれません。

(3)過払い金の返還請求後に住宅ローンを組む場合は?

これまでとは少し視点が異なりますが、過払い金の返還を請求した後に、住宅ローンを組めるかどうかを心配される方が少なくないため、この点について見ていきます。

住宅ローンの申し込みがあると、金融機関は、申込者に融資をしていいかどうかを審査するために、信用情報機関にある登録情報を確認します。
ここでいう「信用情報機関」とは、銀行や消費者金融、クレジットカード会社などが加盟しており、主に、契約内容や支払状況などを管理している機関です。

債務整理が開始されると、その旨が事故情報として信用情報機関に登録されます(いわゆる「ブラックリストに載る」とはこのことを意味します。)。信用情報機関に申込者に係る事故情報が登録されている場合、融資の審査は通らないといっていいでしょう。

過払い金の返還請求の場合、既に完済している債権者に対するものであれば、信用情報機関には登録されないため、住宅ローンの審査に影響を及ぼすことはありません。

しかし、たとえば、過払い金を取り戻してもなお債務が残る場合には、信用情報機関に登録されることになるため、およそ完済後5年間は住宅ローンを組めなくなる可能性が高いです。

このように、過払い金の返還請求をする場合には、債務が残らないように注意する必要があり、そのための対応をあらかじめ取っておくことが大切です。

5 まとめ

奨学金や住宅ローンは、通常の借金とは異なり、設定されている利率が低く、利息制限法の範囲内であることがほとんどであるため、過払い金が問題となることはありません。
もっとも、奨学金や住宅ローンのケースでは、支払いが困難になった場合の対応が非常に大切になってきます。誤った対応をとってしまうと、裁判を起こされたり、自宅を競売にかけられる可能性があります。

とはいえ、ご自身で対応することに不安を覚えている方は、まずは、相談料無料の当事務所にご相談することをお勧めします。

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