インターネットで誹謗中傷の書き込みや投稿があったらどうする?加害者を罪に問える?

インターネットで誹謗中傷の書き込みや投稿があったらどうする?加害者を罪に問える?

あらゆる人がSNSで発信する中で、ネット上の誹謗中傷被害が深刻化しています。

悪質な投稿があっても「対処方法がわからない」「どこに相談するべきか?」などと悩む方もいらっしゃるかと思います。

本記事では、誹謗中傷の書き込みの対処法からどのような罪になるかまで解説します。


インターネットで誹謗中傷を受けたらまずどうする?

無視する

些細なことで反応をすると執拗に書き込みをしてくる可能性があります。

匿名性が高く、安易に悪口を投稿する傾向にあるので、あくまでも最初の段階ですが、無視して様子をみるのもひとつです。

総務省の情報通信政策レビュー 第11号2015年11月によると、誹謗中傷を行ったユーザーは全体の1.5%という調査結果もあり、一部の人たちが悪質な投稿を繰り返してることが推測されます。

また、こちらが正しいと思い、誹謗中傷を行うユーザーに指摘をしても、かえって悪質な投稿がエスカレートするかもしれません。

一時的な感情によるケースもあるので、様子を見てみましょう。

書き込みを保存する

SNSや掲示板等で誹謗中傷被害に遭った場合には、スクリーンショットで保存しておきましょう。弁護士に相談する際や次に解説する相談機関などに証拠を残しておくことが重要となります。

法務省の相談窓口選びフローチャートをチェック

被害を受けた際の相談窓口の選び方を、フローチャートで公開

悩みや不安を聞いてほしい

「まもろうよ こころ」(厚生労働省)
電話、メール、チャット、SNSなど、様々な媒体で不安に思っていること、悩んでいることを相談することができます。

解決策について相談したい

身の危険を感じる、犯人を処罰してほしい
最寄りの警察署や都道府県警察・本部のサイバー犯罪相談窓口

誹謗中傷は、サイバー犯罪の類別の1つとされています。

名誉毀損や侮辱、デマなどの悪質な投稿が続き、身の危険を感じるようであれば、最寄りの警察署や都道府県警察本部にあるサイバー犯罪相談窓口に相談してみるのもひとつです。

書き込んだ人に賠償等を求めたい

誹謗中傷を行った人に損害賠償等を求めたい場合は、法律事務所(弁護士)に相談してみましょう。弁護士に依頼すると様々な費用がかかります。

弁護士費用をカード払いや、分割で支払うことを認めてくれる法律事務所もありますので、弁護士費用の支払方法についても相談してみましょう。

解決策がわからない、書き込みを削除したい

違法・有害情報相談センター(総務省)
インターネット上に書き込まれた誹謗中傷など、違法または有害情報を適切に対応していただける相談センターです。どのような対処をしたらいいのかわからない場合に迅速に、様々なアドバイスを受けることができます。

インターネット人権相談受付窓口(法務省)
法務省の人権相談窓口では、プロバイダへの発信者情報開示請求などの助言や人権侵害について調査を行い、侵害行為に該当する場合であれば、法務局がプロバイダへの削除要請を行います

自分で削除依頼できない、自分の代わりに削除要請してほしい

誹謗中傷ホットライン(民間機関)

一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA)が運営しており、国内・国外にかかわらず、対象サイトに対して、削除等の対応を促す通知を行うサイトです。

「誹謗中傷にあたる」3つの判断基準の条件を満たす投稿に対し、運営サイトなどに削除の措置依頼を行います。しかし、すべての投稿の削除は約束できないとしています。

誹謗中傷ホットラインの利用は無料です。(連絡にかかる通信料等を除く)

運用開始(2020年6月29日に開設)から2ヶ月間の寄せられた相談件数がおよそ500件で、開設6ヶ月で、およそ1200件以上の連絡が寄せられています。

誹謗中傷の発信者は特定できる?

法的な手順を踏めば、匿名で誹謗中傷した相手の特定が可能な場合もあります。

送信防止措置

サイト専用のフォームなどで、任意に削除依頼をしても応じてもらえない場合は、プロバイダ責任制限法3条に基づく「送信防止措置」という方法もあります。

送信防止措置は、権利侵害を受けた本人や代理人となる弁護士に依頼することができます。法律事務ですので、弁護士以外の者が代理人になることはできません。

送信防止措置の請求
プロバイダ等に対して、「送信防止措置依頼書」を送ります。
送信防止措置依頼書の結果は、およそ1ヶ月程度かかります。

投稿サイトが海外サイトの場合、海外法人が日本の「プロバイダー責任制限法」に従う理由は現行法ではない→法改正の動きあり

誹謗中傷の投稿内容が海外サイトである場合、日本に支社や支店のない会社であれば、日本で商業登記は行っておりません。現地の「資格証明書」を発行するなど言葉や時間の手間もかかり、手続きも複雑ですので弁護士に依頼をすることになります。

 また、海外サイトは言葉や法律の違いもあり、削除依頼に応じてもらえない可能性もあります。

手続きが複雑とされる中、政府は「プロバイダ責任制限法」の改正案を2021年2月26日に閣議決定しました。1回の裁判手続きで発信者情報を開示できる制度を盛り込んでいます。

誹謗中傷した加害者はどんな罪に問われる?

ネット上の誹謗中傷は、様々な罪に問われる可能性があります。

名誉毀損罪(刑法230条)

公然と事実を摘示して、人の名誉を毀損する行為です。不特定多数に悪口やデマを広めると名誉毀損罪が成立する可能性があります。ここでいう「人」は団体や法人も含まれます。

法定刑は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金です。

名誉毀損は親告罪です。親告罪とは、被害者からの告訴がなければ公訴提起することができない罪です。

判例:被告が原告の顔写真と名前をなりすましアカウントを作成し、ネット掲示板で第三者を罵倒していた事例で、名誉毀損と肖像権侵害、慰謝料60万円の支払いが認められました。(大阪地裁平29.8.30

侮辱罪(刑法231条)

事実を摘示せず、公然と人を侮辱する行為です。「バカ」「アホ」「消えろ」などの抽象的な表現や「チビ」「デブ」など身体的特徴を中傷する内容まで様々です。

侮辱罪は親告罪です。法定刑は、拘留又は科料です。拘留は1日以上30日未満の期間、刑事施設に拘束する刑罰です。

科料とは、1000円以上1万円未満のお金を納付させる刑罰のことをいいます。

脅迫罪(刑法222条)

他人の生命・身体・自由・名誉・財産に対して、危害を加えると伝えて脅す行為です。危害を加えると脅す相手が、本人または本人の親族であるときに成立します。

親告罪ではないので、第三者が誹謗中傷などの投稿を通報した場合、警察の捜査対象になります。法定刑は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。脅迫罪には、未遂処罰規定はありません。

強要罪(刑法223条)

生命、身体、自由、名誉、財産に対して、相手に義務のない事をさせたり、権利行使をさせないようにしたりする行為です。例えば「〜しないと〜するぞ!」などと脅して、相手方がそれに従うと強要罪が成立するとされています。

法定刑は、法定刑は3年以下の懲役です。未遂罪でも法定刑は同じく3年以下の懲役です。

偽計業務妨害罪(刑法233条)

虚偽の噂を流し、または偽計を用いて人の業務を妨害する行為です。「あの店で〜された」などと、嘘の情報を流す書き込みをして、業務を妨害する行為が該当します。

法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。未遂処罰規定はありません。

信用毀損罪(刑法233条)

虚偽の噂を流し、他人の経済的信用を傷つける行為です。例えば「〜というお店で買った食べ物が腐っていた」「〜というお店の商品は全部偽物」などといったケースです。

法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。情報が真実である場合は、信用毀損罪が成立しません。

威力業務妨害罪(刑法234条)

威力を用いて他人の業務を妨害する行為です。SNSで脅迫的・攻撃的(爆破予告、殺害予告など)な投稿をした場合などに威力業務妨害罪が成立します。

法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。未遂処罰規定はありません。

インターネットやSNSで誹謗中傷されたらやるべき行動

削除依頼をする

サイト管理者やプロバイダ等へ削除を依頼する方法があります。サイト専用のフォームや掲示板の報告フォームなど、誹謗中傷に関する投稿について、削除を依頼してみるのもひとつです。

 しかし、こちらの削除依頼では、応じてもらえないことが多いです。
発信者情報開示請求

任意の削除依頼に応じてもらえない場合は、プロバイダ責任制限法4条に基づく「発信者情報開示請求」を行う方法があります。

アクセスログの保存期間がおよそ3~6ヶ月程度であるため、一般的にはこの期間内に「発信者情報開示の仮処分命令の申立て」を行います。(民法723条)

発信者情報開示の仮処分命令の申立て

仮処分命令の申立てでは、裁判所に対し発信者のIPアドレスやタイムスタンプ等の開示を暫定的な救済として求める方法です。民事保全法に規定されています。

仮処分命令の申立ての要件
・権利侵害の明白性
・保全の必要性

発信者情報開示の仮処分命令の申立てが認められれば、サイト管理者等にIPアドレスなどを開示してもらうことができます。

発信者情報開示請求訴訟

発信者情報開示請求訴訟(プロバイダ責任制限法4条)では、経由プロバイダを相手に発信者(住所、氏名、携帯の電話番号など)の開示を求めます。

民事上の慰謝料・損害賠償請求

開示請求がされると、発信者に対し不法行為(名誉毀損やプライバシー侵害など)に基づく損害賠償請求を行います。通常は内容証明郵便などで任意の請求を行います。

刑事的責任追及

悪質な投稿が繰り返されている場合には、警察に通報または刑事告訴を検討します。刑事告訴は、犯罪捜査機関や検察官に対し、犯罪の事実を申告し処罰を求めるものです。

まとめ

本記事では、インターネットで誹謗中傷の書き込みや投稿があればどのような行動を取るべきなのか?また誹謗中傷した加害者はどんな罪に問われるのか?などを具体的に解説しました。

個人で解決することは時間や労力がかかり、手続き面でもわからいことがたくさん出てくることが考えられます。いずれにしても、まずは法律の専門家である弁護士に相談してみることがひとつの方法です。


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