任意整理を弁護士に依頼すると自分でやるよりも手間を省けたり、より有利な条件で交渉を進めていくことができます。とはいえ、手続きをスムーズに進めていくためには、依頼した後も自分が対応すべきことをきちんと把握して、弁護士に協力する必要があります。
任意整理をするのであれば流れを知っておくことで作業時間を短くできます。また、弁護士に依頼することで、多くの人にとって、時間だけでなく精神的な負担を減らすことができるでしょう。
任意整理の手続きの流れと行うこと
任意整理では、主に、将来利息のカットや支払方法について、債権者と交渉をする必要があります。裁判所を通さない手続きですので、自身で対応することもできます。しかしながら、より有利な条件で交渉を進めていくことができる点や信頼性を考えて、弁護士に依頼することが一般的です。
弁護士との面談・委任
実際に、弁護士に任意整理を依頼する場合には、まず始めに、弁護士と面談をします。面談の結果、正式に弁護士に依頼する場合は、委任契約を交わすことになります。
1.弁護士がやること
初回面談において、弁護士が主に行うことは、借金の状況や収支状況等についての聴き取りです。また、本人に疑問や懸念があれば、それらを解消することに努めます。
そのうえで、弁護士は、本人から聴き取った情報や事情を基に解決方法を提案することになります。本人が納得したうえで弁護士に依頼することを決めたら、弁護士と相談者との間で委任契約が締結されます。
ここでいう「委任契約」とは、債務整理を弁護士に依頼することを内容とした契約のことです。
2.依頼者がやること
初回面談において、弁護士が知りたい情報は、借金の状況です。
具体的には、債権者名と借金額、取引期間などが、弁護士が知りたい情報となります。初回相談までにこれらの情報をまとめた「債権者一覧表」を用意していれば、当日の相談をスムーズに進めることができます。
債権者一覧表は、インターネットで検索すると書式が出てきます。
わからないところを無理に埋める必要はありませんが、最低限、借りている業者とおおよその金額は把握しておくと良いでしょう。
受任通知の送付と引き直し計算
委任契約を締結すると、弁護士は各債権者に受任通知を送付します。受任通知には、弁護士が債務者の代理人として債務整理業務を開始すること、全取引履歴の開示を請求する旨、本人に直接連絡を取ることを禁止する旨などが記載されます。
1.弁護士が行うこと
受任通知を送付すると、債権者により取引履歴が開示されます。取引履歴が開示されるまでには、平均して1ヶ月前後かかりますが、早ければ1~2週間程度、遅いと2ヶ月以上かかることもあります。
取引履歴には、債務者との間で取引された貸付と返済が金額とともに記載されており、弁護士は、この取引履歴を基に、引き直し計算を行います。
ここでいう「引き直し計算」とは、利息制限法による利率に引き直すことをいい、この計算により、過払い金の有無がわかるわけです。
引き直し計算の結果、借金は完済しており、そのうえで、過払い金が発生している場合には、弁護士は債権者に対して、過払い金の返還請求を行います。
2.依頼者が行うこと
この手続きの段階で必要なことはありません。
弁護士から債権者に受任通知が送られると、それ以降、債権者による催促はストップします。また、和解成立後、支払いが開始するまでの間、債務者は支払いを一時的に停止することになります。
和解が成立するまでには、平均して3~6ヶ月かかるため、依頼者はこの間に、弁護士費用を積み立てたり、生活を立て直したりすることが可能になります。
和解案の提示・和解交渉
引き直し計算を終えて、借金額が確定すると、弁護士は和解案を作成し、それを基に債権者と和解交渉を開始します。
1.弁護士が行うこと
弁護士は引き直し計算の結果を踏まえて和解案を作成し、それを債権者に提示します。
任意整理では、主に、将来利息のカットと支払方法の交渉となり、弁護士は、債権者の言い分も踏まえつつ、和解に向けて交渉を進めることになります。
2.依頼者が行うこと
この手続きの段階でやるべきことはありません。
債権者が利息のカットに応じないような場合には、交渉が長引くケースもあります。
もっとも、交渉が続いている間は、債務者は支払いをする必要がありませんので、この間に少しでも多くのお金を残すことが大切です。
そうすることで、実際に支払いが開始した後も、計画的に生活をしていくことが可能になるのです。
和解合意・返済開始
交渉の結果、債権者との間に支払条件等について合意が成立すれば、債務者は返済を開始することになります。
1.弁護士が行うこと
債権者との間に合意が成立すると、和解書を作成し、それぞれが記名・押印をします。
なお、和解書は、債権者側で作成する場合もありますし、弁護士が作成する場合もあります。
また、和解書には、債務者の代理人として弁護士が記名・押印することになります。
2.依頼者が行うこと
和解書の確認と返済をしていきます。
和解書の締結が終わると、債務者は、和解書記載の支払条件にしたがって返済を開始します。
この後は、基本的に完済を目指して返済していくことになります。
弁護士に依頼するメリット
催促のストップ
任意整理を依頼すると、弁護士は、自身が代理人として任意整理業務を行う旨の受任通知を債権者に送付します。
受任通知を受け取った債権者は、債務者に対する催促をストップします。それ以降は、弁護士が連絡・交渉の窓口となるため、業者から直接、借金返済の催促を受けることがなくなり、精神的な負担が減るでしょう。
周囲にバレづらい
任意整理をするにしても、周囲にバレずに手続きを進めたいと考える人が多いです。
自身で対応する場合には、債権者と電話で交渉する必要があるなど、状況によっては、家族や友人などにバレる可能性があります。
その点、弁護士に依頼すれば、債権者との交渉はすべて弁護士が対応してくれるため、周囲にバレる可能性は低くなります。
また、相談すれば弁護士は可能な限り、周囲にバレないよう配慮できます。
時間と手間の節約ができる
実績のある弁護士であれば、任意整理のポイントを熟知しているため、手続きと交渉をスムーズに進めることができます。
任意整理の流れで見たように、弁護士に任せることで依頼者は手間と時間を節約できます。
業者との交渉力
任意整理は、債権者との交渉が前提となる手続きです。
あくまで任意での交渉であるため、債権者が支払条件に納得しなかった場合には、任意整理で解決を図ることは難しくなります。任意整理で解決を図るためには、債権者と和解を成立させられるだけの交渉力が必要なのです。
その点、弁護士は交渉事には慣れていますので、状況に応じて、適切に交渉を進めることができます。
任意整理以外の適切な方法の提案
本人が任意整理を望んでいても、状況によっては、任意整理で解決することが難しい場合もあります。たとえば、収入に比べ借金があまりに多額であったり、収入そのものが安定していなかったりする場合には、任意整理以外の方法も念頭に置いて検討する必要があります。にもかかわらず、任意整理を強行してしまうと、最悪の場合、借金生活から脱出できない可能性があります。
その点、債務整理の実績がある弁護士であれば、債務者の状況や事情等を踏まえたうえで、適切な方法を提案できます。任意整理による解決が難しいと判断すれば、他の債務整理の方法を提案することができるのです。
完済までの注意点
任意整理では、支払期間が3~5年になることが一般的であるため、計画性をもって支払いを続けていくことが大切です。
まず第一に滞納をしないことです。
和解書では、一般的に、期限の利益喪失条項が設けられるため、支払いの滞納が2回分に達してしまうと、残額を一括で支払うよう請求される可能性があります。
このような事態になってしまうと、再度支払条件を変更してもらうことは難しいため、自己破産などの他の債務整理の方法を検討せざるを得なくなります。
次に、借金を完済するまでは、他社から借り入れをしてはいけないということです。
任意整理を行った後も、借金を整理する対象から外した債権者から、新たに借り入れができる場合があります。
しかし、他社から借り入れをしてしまうと、支払いが困難になってしまうおそれがあるので、借金を完済するまでは、原則として他社から借り入れをすべきではないといえます。
まとめ
任意整理を弁護士に依頼した場合には、引き直し計算や債権者との交渉、和解書の締結などをすべて弁護士が対応してくれます。
そのため、依頼者の方は、受任通知送付後支払いを停止している間に、できるだけ多くのお金を残すとともに、生活を立て直すことが必要です。
もちろん、ご自身でこれらのことをすべて対応することも可能ですが、交渉相手となるのは、貸金業者をはじめとするその道のプロであるため、業者が有利に交渉を進めてしまう可能性が高くなります。
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