個人民事再生にかかる費用やデメリットは?

弁護士相談

個人再生をすると、「借金を大幅に減額できる」「自宅を残すことができる」といったように、メリットだけが取り上げられがちですが、デメリットが全くないわけではありません。

個人再生を選択する場合には、メリットだけでなくデメリットも理解しておく必要があります。
もっとも、個人再生は、裁判所を通す必要がある分、手続きも複雑であるため、一般的には、弁護士などに依頼することが多いといえます。

そこで今回は、個人再生のデメリットと個人再生にかかる費用について解説します。

1 個人再生(民事再生)とはなに?

「個人再生(民事再生)」とは、債務整理の手続きのうちの一つであり、借金の「再生計画(返済計画)」を策定することを目的とした手続きです。
法人を対象とした手続きを「民事再生」といい、個人を対象とした手続きを「個人再生」といいます。

POINT
法人を対象とした手続きを「民事再生」
個人を対象とした手続きを「個人再生」という。

(1)法人を対象とした通常の民事再生

法人を対象とした通常の民事再生は、経済的に行き詰った企業について、再生計画(返済計画)を策定し、これに沿って債務を返済していくことにより、事業を再建することを目的としています。

策定した再生計画(返済計画)については、裁判所から認可を受ける必要があり、そのためには、債権者による多数の同意があることが条件となっています。

また、担保を取られていない債権者(無担保債権者)との間でしか債務を減額することはできません。

策定する再生計画(返済計画)は、事業収益を返済原資とするもの、スポンサーによる支援を返済原資とするもの、また、事業譲渡等による譲渡代金を返済原資とするものなど、いくつかのタイプがあります。

(2)個人を対象とした個人再生

個人を対象とした個人再生は、経済的に行き詰った個人について、再生計画(返済計画)を策定し、これに沿って借金を返済していくことにより、生活を再建することを目的としています。

策定した再生計画(返済計画)については、通常の民事訴訟と同様、裁判所から認可を受ける必要があります。
個人再生は、さらに以下の2つの手続きに分かれています。

①小規模個人再生
「小規模個人再生」とは、住宅ローンを除く借金の総額が5,000万円以下であることを条件として、将来にわたり継続して安定した収入を得る見込みのある個人が利用できる手続きです。

小規模個人再生では、裁判所から認可を受けた再生計画(返済計画)に従って、原則として3年間で借金を返済していくことになります。

また、先に見たとおり、再生計画(返済計画)について裁判所から認可を受ける必要があり、そのためには、一定割合の債権者の反対がないことが条件となります。

②給与所得者等再生
「給与所得者等再生」とは、小規模個人再生の利用条件を満たしていることに加え、収入の変動幅が小さい個人が利用できる手続です。

給与所得者等再生においても、再生計画(返済計画)に従って、原則3年間で借金を返済していくことになるのは、小規模個人再生の場合と同じです。

給与所得者等再生では、小規模個人再生における返済額よりも高額になることが一般的です。また、策定した再生計画(返済計画)について債権者から同意を得ることは条件となっていません。

もっとも、過去7年以内に自己破産をして免責許可決定を受けている場合等には、給与所得者等再生を利用することはできません。

(3)通常の民事再生と個人再生の相違点

通常の民事再生と個人再生とでは、主に、以下の点に大きな違いがあります。

①利用するための条件
企業が負っている債務額に条件が設けられていない通常の民事再生に比べ、個人再生では、住宅ローンを除く借金の総額が5000万円を超えないことが条件になります。

②手続きの運用
通常の民事再生を申し立てると、「監督委員」が必ず選任され、監督委員による監督の下、手続きが進められます。
他方で、個人再生を申し立てた場合、裁判所によっては、個人再生委員が選任される場合があります(東京では必ず選任されます)が、全国では選任されるとは限りません。

③費用
通常の民事再生では、監督委員への報酬として最低でも200万円が必要になります。
他方で、個人再生では、個人再生委員が選任された場合に限り、個人再生委員への報酬として最低15万円が必要になります。
このほか、弁護士費用や実費がかかることはいずれの手続きにおいても共通しますが、個人再生に比べて通常の民事再生では、負担すべき費用が高くなります。

2 個人再生にかかる費用は?

個人再生は、裁判所を通す必要がある分、手続きも複雑になっているため、弁護士などに依頼して申し立てることが一般的です。
この場合、債務者が負担する必要がある費用は、大別して申立手数料(実費)と弁護士費用の2つに分かれます。

(1)申立手数料(実費)

申立手数料(実費)は、裁判所によって多少の違いはあるものの、おおよそ以下のとおりとなっています。

①収入印紙
裁判所に提出する申立書には収入印紙を貼る必要があります。
収入印紙代は、10,000円程度となっています。

②郵便切手(郵券)
手続きが開始すると、郵送による書類のやり取りが発生します。
そのため、郵便切手約1,600円分を裁判所に予納する必要があります。

③官報掲載費
個人再生をすると、一定の情報(氏名や住所等)が官報に掲載されることになります。
そのため、官報掲載費として、12,000円程度を負担する必要があります。

④個人再生委員の報酬
個人再生委員が選任されるかどうかは、先に見たとおり、裁判所によって運用が異なっており、東京では必ず選任されることになっています。
個人再生委員が選任された場合、個人再生委員への報酬として、最低でも15万円が必要になります。

(2)弁護士費用

個人再生を弁護士に依頼する場合、弁護士費用が必要になりますが、以下のとおり、弁護士費用は主に3つの種類に分かれます。

①法律相談料
弁護士に相談する際にかかる費用を「法律相談料」といいます。
最近では、無料の事務所も増えてきていますが、相場は5,000円(税別)/30分となっています。
当事務所の場合、法律相談料は無料です。

②着手金
弁護士に依頼することになった場合に、まず始めに支払う費用を「着手金」といい、相場は、30万円~50万円(税別)となっています。

③報酬金
個人再生の手続きが終了した際に支払う費用を「報酬金」といいます。

個人再生の場合、裁判所による認可の有無を基準として報酬を定めている事務所が多いようです。相場は、裁判所から認可が下りた場合に限り、10万円~20万円(税別)となっています。

当事務所の場合、裁判所による認可の有無を問わず、報酬金は0円となっています。

以上のように、個人再生は手続きが複雑であるため、弁護士費用も高く設定されていることが一般的です。
そのため、弁護士費用を一括で支払うことが難しいという方もいらっしゃいます。

当事務所では、弁護士費用の分割払いについても相談をお受けしておりますので、遠慮なくご相談ください。

(3)司法書士が対応できる業務

個人再生は、弁護士だけでなく司法書士に依頼することもできます。しかし、弁護士とは異なり、司法書士が対応できる業務の範囲には以下のような制約があります。

弁護士は申立代理人になることができるのに対し、司法書士は申立代理人になることはできません

そのため、弁護士に依頼した場合は、手続き開始後に発生する裁判所等とのやり取りをすべて弁護士が対応してくれますが、司法書士に依頼した場合には、裁判所等とのやり取りをすべて債務者が自分で対応する必要があります。

以上のように、弁護士に依頼すると、およそすべてのことを弁護士が対応してくれますが、司法書士に依頼した場合、司法書士が対応できる業務は、主に申立書や再生計画(返済計画)といった書類の作成にとどまります。

3 個人再生のデメリットとは?

個人再生をすると、借金が大幅に減額されることに加えて、自宅を所有している場合には、自己破産のように自宅を処分されることなく、手元に残すことも可能です。

しかし、その反面、以下のようなデメリットもあります。

(1)ブラックリストに掲載される

個人再生をすると、信用情報機関にその情報(事故情報)が登録されることになります。
これが、いわゆる「ブラックリストに掲載される」ということを意味します。

ブラックリストに載ると、完済後およそ5年間は記録が残るため、この間に、ローンを組んだり、クレジットカードの発行を受けることが難しくなります。

(2)官報に掲載される

個人再生をすると、先に見たように、官報に掲載されることになります。
「官報」とは、国が定期的に発行する機関紙のことをいいますが、日頃から官報を購読しているのはごく一部の人に限られており、官報を見たことすらないという人の方が圧倒的に多いといえるでしょう。
そのため、個人再生をしたことが官報によりバレるという可能性は極めて低いといえ、その意味ではデメリットとまでは言えないかもしれません。

4 まとめ

個人再生は、弁護士などに依頼することが一般的になっていますが、手続きが複雑である分、弁護士費用も高めに設定されていることが多いです。
そのため、債務者の方からすれば、少しでも費用を抑えられる法律事務所に依頼したいと考えるのが自然でしょう。

当事務所に個人再生をご依頼頂いた場合、法律相談料に加え、報酬金は発生しません
着手金についても、支払方法等ご相談をお受けしております。
まずは、当事務所にご相談頂くことをお勧めします。

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