個人再生だけでなく債務整理はそれぞれどのような内容なのかを把握することが重要です。
中には別の手段を取った方が効率的になる場合もあるため、利点や注意点はしっかり確認しておくことをおすすめします。
個人再生とは
個人再生とは、債務の額に応じて債務の大幅な減額が見込める債務整理手続きの一つです。
再生計画案を立てて裁判所からの認可を得ることができれば、債務者はその再生計画案に沿った内容に従って借金の返済を続けていくことになります。
個人再生の手続きは「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」という手続きに分かれており、これらは利用する条件が異なります。
小規模個人再生が向いている人
小規模個人再生は、再生計画案に対して不同意が議決権者総数の半分に満たず、かつ、その議決権の額が議決権者の議決権の総額の1/2を超えないという条件が再生計画案の認可要件となっています。
- 債権者に反対される可能性が低い
という方であれば、基本的には小規模個人再生が適していると言えます。
給与所得者等再生が向いている人
給与所得者等再生は、小規模個人再生の場合よりも「収入の安定性」という部分を厳しく審査されますが、その一方で債権者の意向に影響されないという特徴があります。
- 個人再生をするときに債権者の反対が予想される
- 扶養家族が多い
- 配偶者が扶養の範囲内で仕事をしている
- 依頼主の収入がそれほど多くなく、毎月の余剰金があまり出ていない
という方は、給与所得者等再生を選ぶことにメリットがあると言えます。
もっとも、給与所得者等再生は小規模個人再生に比べて返済額が高額となるケースが多く見られるため、給与所得者等再生を選択する人は少数です。
- 扶養家族がいない
- 一人暮らしである
- 依頼主の収入がある程度多い
という場合は給与所得者等再生が向いていないので、小規模個人再生の手続きを進めるケースもあります。
以下では個人再生のメリットとデメリットに触れていきますが、これらは「小規模個人再生」、「給与所得者等再生」に共通して当てはまる話です。
個人再生のメリットとは?
漠然と借金が減るというイメージを持つ方もいると思いますが、具体的にはどのような利点があるのでしょうか。
債務額の大きな減額が見込める
まず一つ目は、債務額を大幅に減額できる可能性があるということです。
具体的には以下のように、借金が大幅に減額されます。
- 借金が100万円に満たない場合→全額
- 借金が100万円~500万円以下の場合→100万円
- 借金が500万円~1,500万円以下の場合→その5分の1の金額
- 借金が1,500万円~3,000万円以下の場合→300万円
- 借金が3,000万円~5,000万円以下の場合→その10分の1の金額
自宅を残すことが可能
財産の中で持ち家を残すことが可能という部分も、個人再生の特徴です。
例えば自己破産の手続きでは持ち家は基本的に処分の対象になってしまいますが、個人再生ではこの問題を回避することができます。
住宅ローン特則と呼ばれる住宅資金特別条項を利用した再生計画案が認可されると、住宅ローンを除くその他の借金が大幅に減額されるため、毎月の返済金額を減らすことができます。
よって、住宅ローンをこれまで通り支払って家を残していくことが可能になるのです。
以上のように、個人再生は大幅に借金を減額できる可能性があることと、住宅は残しながら返済を続けることができる点が、メリットになると言えます。
個人再生のデメリットとは?
それでは反対に、個人再生を検討するうえで、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。ここでは大きく3つをご紹介します。
保証人にも影響がでてしまう
保証人に少なからず影響を及ぼしてしまうことがデメリットになりえます。
個人再生の手続きを開始するとその事実が保証人にも通知されることになるので、保証人にバレずに手続きを進めるということはできません。
債権者は、債務者に変わって保証人に対し、残っている借金の全額を返済するよう、一括請求をすることになります。
ただし、個人再生は債務者が決められた額を返済しますので、個人再生で免除された部分を保証人が支払うことになります。
資料の準備や対応など、手続きが煩雑
個人再生は、任意整理と違って裁判所を通す必要のある手続きになります。申立後再生計画案(返済計画)の認可が下りるまでの手続きは、非常に複雑です。
例えば、申立てをする際に必要となる資料には、預貯金口座に係る一定期間の取引履歴や給与明細、保険や税金に関する資料などが挙げられます。
住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用する場合は、これらの資料に加えて、住宅に係る登記簿謄本や住宅ローンの契約書なども準備する必要があり、手間が増えるのです。
また、個人再生の申し立てを行うと、裁判所によって個人再生委員が選任されるという場合があります(東京地方裁判所の場合は、必ず選任されることになります)。
この「個人再生委員」とは、個人再生の手続において,債務者の財産・収入の状況の調査および再生債権の評価に関し裁判所を補助し,または,再生債務者が適正な再生計画案を作成するために必要な勧告をする者です。弁護士がなることがほとんどです。
裁判所によって個人再生委員が選任された場合、再生計画案について裁判所から認可を受けるまでの間は、適宜個人再生委員とやり取りをしながら手続きを行う形になります。
ブラックリストに載る
個人再生だけではなく債務整理は全てのケースにおいてですが、債務整理の手続きを行うと、信用情報機関に事故情報が登録された状態になってしまいます。これがいわゆる、ブラックリストに載るということです。
官報に掲載される
個人再生においては、官報へ掲載されてしまうということもデメリットになりえる点の一つです。官報とは政府が発行して国立印刷局が印刷を行う機関紙のことで、氏名や住所、裁判所名などが掲載されることになります。
この官報に掲載されることを拒否したり、内容の変更や消去を求めたりすることはできません。
どのような人が個人再生をするべきなのか
債務整理はそれぞれ適している人が異なるので、自分に適した選択をすることが重要ですが、その判断には法律の専門的な知識が必要です。
特に、個人再生のケースで考えると、「任意整理よりもさらに債務の額を減らしたい」「財産を処分することは問題ないが、家は残しておきたい」「自己破産以外の方法でどうにか返済していきたい」などのケースに当てはまる人が適している可能性があります。