任意整理とは、借金の利息を免除してもらい、元金のみの返済を続けて完済を目指す手続きのことです。
他の債務整理と比べて比較的手間が少ないことや、将来利息をカットして確実に元本を減らしていけること、介入する業者を選べることから、借金問題に悩んでいる人にとってありがたい手段となります。
しかし、誰でも任意整理を行うことができる訳ではなく、任意整理ができない場合もあります。
任意整理が「できない」場合は?
まず前提として、任意整理ができないとはどのようなケースを指すのでしょうか。
これは、費用が用意できなかったり、返済を続ける収入がなかったりといった金銭的に問題があるケースや、弁護士には依頼ができても債権者に任意整理を断られてしまい和解が難しいケースなどがあります。断られる場合は相応の原因が存在するので、その内容を把握することも大事と言えます。
金銭的な理由が原因で任意整理ができない
原因となる要素の一つには、金銭的な問題が存在します。まず最初に、お金のことについての原因部分を見ていきましょう。
借金を返済していく収入がない
任意整理を行うには、安定した収入があることが必須条件となります。利息を免除してもらって返済額が少なくなったとしても、毎月返済していくだけの費用が捻出できなければ、和解を締結させることができません。
収入は、任意整理が認められて決定される毎月の返済額と、生活していく分にかかる金額が最低限必要になります。
任意整理の費用が払えない
また、毎月の支払いの他に、任意整理を行うにあたって弁護士事務所へ支払う費用も必要になります。
極端に社数が多い場合などは任意整理の費用も大きくなります。
月々の返済でいっぱいいっぱいとなってしまい、弁護士の費用が用意できない、というケースがあります。
弁護士費用を用意する方法としては、借金の返済は和解交渉の間、一時的にストップしますので、その分を弁護士費用に回すことができます。
また、弁護士費用を分割での支払いに対応している事務所もあります。
借金の金利が低い
そして、任意整理をする意味がほとんど無いと判断された場合、依頼を断られることもあります。
例えば国の教育ローンや奨学金などのケースでは、もともと低い利率の契約になっている場合が多く、長期の分割払いで返済している場合があります。
任意整理をしても、減る利息分も少なく、毎月の返済額もさほど変わらないという結果になります。
そうすると、メリットも少なくなってしまい、デメリットがあることも考えると、任意整理に相応しくないと判断されてしまいます。
債権者との和解が難しいケース
次に、弁護士には依頼をすることができても、債権者に断られてしまう原因について説明していきます。
借入してからの返済実績が少ない
これまで借金の返済履歴が無い場合は、任意整理に応じてもらえないことがあります。これは、もし任意整理を行っても、返済が続かないと判断されてしまうことがあるためです。
任意整理は通常3年から5年程度の期間をかけて返済を続けるため、安定した収入の他にも、毎月継続的な支払いが続くかという部分も検討される点になります。
また、業者は利息=利益なので、返済がないまま任意整理に応じた場合、一切利益がないからです。
差し押さえなどの法的措置を取られている
借金を長期間滞納していて、既に法的な措置を取られてしまっている場合も任意整理をすることができません。
具体的には、支払督促の通知を受けてから2週間以上経過してしまい、給与を差し押さえられた場合、任意整理の交渉が上手いかずに決裂してしまう可能性があります。
差し押さえをされている場合では、債権者にとってはそのまま差し押さえを続けて残りの元金を回収した方がメリットがあると判断するため、任意整理には応じてくれない可能性が高くなります。
この場合は、任意整理ではなく、個人再生・自己破産などの法的手段での対抗を検討していきましょう。
会社の方針で決まっている
そして、そもそも任意整理を受けないという方針を始めから固めている業者も存在します。
交渉に一切応じない会社もあれば、利息のカットのみを認める業者など、それぞれの方針は会社によって異なります。安定した収入があり、他の条件が満たせている場合でも、業者の方針によっては交渉不可という着地になってしまうケースもあるのです。
ただ、交渉を一切受け付けないという業者は少ないというのが現状になりますので、まずは弁護士に相談してみましょう。
任意整理がしづらい状況
ここまでは、任意整理が「できない」という具体例をご紹介してきました。その他に、「できない」ということではなくても、任意整理をおすすめすることが困難な状況も存在します。
生活保護を受けている
生活保護を受けている場合であっても、任意整理ができないわけではありません。受給金の一部を借金の返済に充てることは、法律上問題ないとされています。しかし、生活保護を受けている状態では、そのお金を使って任意整理を行うことは妥当でないと判断されることが多いのも事実です。
特に昨今では、不正受給の問題などから役所側の対応も厳しくなっている傾向があり、借金の返済に生活保護のお金を使用していることが発覚した場合、生活保護が打ち切られてしまう可能性もあります。
保証人がいる借金を対象にする
任意整理は、自己破産や個人再生などの債務整理とは異なり、対象とする債務を選択して返済を続けていくことが可能です。そこで、保証人がついている借金を選択することも可能ではありますが、保証人がいる借金を対象にした場合、その後は保証人に請求がいってしまいます。
保証人は身近な人がなっている場合が多いと考えられますので、関係を考えて任意整理の対象から外すなど、注意しましょう。
任意整理ができない借金の対処法
全ての人が、どのような状況でも任意整理を行えるわけではないということをお伝えしてきました。
しかし、もし任意整理の検討が難しいという判断に至っても、借金問題を解決するための手段が無くなったわけではありません。「任意整理ができなくて借金がそのまま残ってしまっている、、」とお悩みの方にはどのような解決策があるのでしょうか。
他の債務整理を検討してみる
借金問題の解決は、任意整理が全てではありません。例えば、安定した収入が無いという理由から任意整理が不可となった場合でも、「支払い不能状態」であれば、自己破産の手続きができる可能性があります。
自己破産は抱えている借金の支払い義務を免除してくれる手続きなので、安定した収入や長期間の返済は必要ありません。
自己破産の他にも債務整理には特定調停や個人再生などの種類があり、適した条件や内容はさまざまなので、任意整理がNGでも他の手段を検討することは価値があるといえます。
複数の事務所に相談する
また、任意整理不可ということを弁護士に突き付けられてしまった場合でも、他の弁護士事務所であれば手続きが取れるケースもあります。これは、弁護士事務所と債権会社の関係性が原因になる場合です。
つまり、相談をした事務所と債権者との関係が良好ではなかったことが原因で交渉が決裂し、債務整理の手続きが進められなかったというケースも存在します。
この場合は、相談する事務所を変えることによって任意整理を進められる可能性があります。また、関係性が良好かどうかの他に、相談した弁護士の熱量によっても左右されることがあります。
あまり債務整理の問題に熱心でない事務所の場合は、事務所にとって大きな利益とならないケースは見送られてしまう可能性もあります。
まとめ
この記事では、任意整理ができない・しづらい場合の原因と、その対処法について解説してきました。
任意整理は、少額でも長期間にわたって返済を続けていく手続きになるので、安定した収入が見込めない場合は任意整理ができません。また、借金の返済実績が無かったり、法的な措置を既に取られてしまっている、業者の方針でNGが出てしまっている場合などでも手続きを行うことができないケースがあります。
しかし、任意整理不可と判断された人でも、別の債務整理を利用したり、複数の弁護士事務所に相談してみるという方法があります。
事務所によっては債権会社との相性が良くないということもありえるので、複数の事務所に相談してみて、その中から信頼できる担当者を探すことも重要です。
あまた法律事務所では、無料相談の受付を毎日行っています。そして、借金問題の解決にはこれまで数多くの実績があり、常にお客様に対し丁寧な対応を心がけてきました。
法律問題は、一人だけで適切な判断をすることが容易なことではないため、知識を持った弁護士が強い味方になるはずです。