JPナンバーとは
JPナンバー(日本電話番号検索)は、電話番号検索で日本最大の規模を誇るサイトです。電話番号で検索を行うと、どこの誰が使っている番号なのか発信元を調べることができます。
知らない番号からかかってきたとき、折り返しかけていいか迷ってしまい、利用した経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。電話番号ごとに、その番号からの電話を受けたユーザーからの口コミも見られるようになっており、おかしな番号と分かれば迷惑電話や悪質なセールスの被害に遭うリスクを未然に防いでくれます。
運営会社は非公開となっており、利用するために会員登録をする必要もありません。閲覧も無料で行えます。
また、電話番号のほかにも、住所や事業者名、業種などで検索することができ、会社名は知っているのに電話番号がわからないといったときにも利用できます。現在は、Google PlayにてAndroid用の公式アプリも提供されており、スマホでも利用が広がっています。
なかには不正確な口コミも
このように、電話に関するトラブル対策としてとても便利なJPナンバーですが、なかには問題といえる点もあります。それが口コミの正確性です。
JPナンバーでは、電話番号の情報をユーザーが書き込む口コミに頼っています。そのため、ユーザーからの口コミがない番号では、調べても詳細が分からない場合もあります。
JPナンバーへの電話番号登録はネット環境にある人であれば誰でも匿名で行えます。自分の名前やメールアドレスを入力する必要はなく、登録されても、相手方に通知などはありません。そのため、知らない間に、自分や自社の番号が登録されている可能性もあります。
利用案内には、重要なお知らせとして、口コミには実際には迷惑電話でないものが含まれている可能性があり、判断は自分自身で行うように書かれています。JPナンバー自体は内容に責任をもっておらず、すべての口コミが正確である保証はありません。
もちろん、多くのユーザーは自分のところにかかってきた迷惑電話や詐欺と思われる電話の情報共有・注意喚起を目的に書き込みを行っています。しかし、なかには嫌がらせを目的に嘘の情報や誹謗中傷を書き込む人もいます。
JPナンバーによる悪い影響
インターネット上にて口コミで嘘の情報が広まってしまうと、どのような実害があるのでしょうか。ここからは考えられる悪影響を紹介します。
電話番号に関する間違った情報が登録されることも
JPナンバーでは、嫌がらせや他人を陥れる目的で間違った情報が登録されることがあります。口コミのなかには「迷惑電話だった」「かかってきても出ない方がいい」「着信拒否にするのがオススメ」「詐欺電話」などの書き込みも見られます。
もちろん、真実なら問題はないのですが、もし嘘の情報が書き込まれていると、検索してきたユーザーがそれを見て、あなたの番号を迷惑電話だと思い込んでしまいます。
また、JPナンバーでは、相手の名前がわからない番号については事業者名が「勧誘」や「迷惑電話」になっていることがあります。こうしたワードで検索をかけることもでき、もし誰かがあなたの名前を迷惑電話にして登録すると、JPナンバーで検索したとき自分の番号が表示されることになります。
イメージダウンや業績に悪化につながることも
JPナンバーに自社の番号が悪い口コミとともに登録されてしまうと、悪質な勧誘ではなく、健全な営業電話やサービス案内を行っている会社でも、電話に出てもらいにくくなる可能性があります。
さらに、GoogleやYahooの検索でも上位表示されることが多く、悪いコメントが拡散して会社のイメージダウンにつながります。こうなると、営業が上手くいかず、会社の業績にも悪影響を与えかねませんし、求人を出しても応募する人が少なくなり、人材確保にも響きます。
JPナンバーの口コミ削除基準
JPナンバーの悪い口コミはそのまま放置すると、さまざまな悪影響を与える可能性があるため、気づいたらすみやかに削除することが望ましいといえます。では、JPナンバーの書き込み削除は可能なのでしょうか。
口コミの削除基準とは
利用案内に掲載されている口コミ削除の基準には以下のものがあり、ここに当てはまっていれば削除の対象になります。
・宣伝やスパム……口コミを宣伝に利用したり、評価を操作する目的で嘘の口コミを投稿したり、同一の口コミを複数の店舗や会社に投稿すること。別サイトへのリンク。
・利害に関する問題……偏見のある口コミ。
・個人情報……フルネームや住所など特定の個人を識別できる口コミ。
嫌がらせのために書かれた嘘の口コミであれば、「宣伝やスパム」「利害に関する問題」に当てはまっている可能性があり、削除ができると考えられます。
JPナンバーの書き込みを削除する方法
削除基準が分かったところで、次にJPナンバーでの書き込み削除の方法を説明します。JPナンバーでは、運営会社が勝手にふさわしくない書き込みを削除してくれることはありません。
運営にメールで削除を依頼する
口コミの削除基準ページには、削除を申請するための連絡先があり、ここからJPナンバーの運営に削除申請メールが送れます。メールの内容に関して特に指定のテンプレートなどはないようです。
どの点が削除対象になるのか、きちんと運営に伝わるよう以下の点をできるだけ簡潔に分かりやすく記載しましょう。
- 削除したい口コミの電話番号とURL
- 口コミが投稿された日時とユーザー名
- 口コミが削除基準のどの部分に違反しているか
実際に口コミの削除が成功した場合には、口コミが見られなくなり、表示ページの最下部に「〇件のクチコミ中〇件が依頼により削除されました」というメッセージが掲載されます。
ここで注意が必要なのが、削除申請を行うと、口コミを投稿した人にも、削除依頼によって口コミが消されたということが伝わってしまう点です。
JPナンバーの削除ができなかったときの対応
運営に削除を依頼しても、必ず口コミが削除されるとは限りません。もし削除が認められなかった場合は、不当な口コミを放置するしかないのでしょうか。
続いては、申請しても削除できなかった場合にとれる対処法を解説していきます。
削除できない場合は弁護士への相談を
削除依頼を送っても、JPナンバーに削除できないと判断されてしまうケースもあります。しかし、削除できないからといって何もしないでいると、悪い口コミが半永久的に残り、悪影響を与え続けることになります。
この場合、弁護士など法律の専門家に相談することをおすすめします。弁護士に依頼するメリットは、どうしてもJPナンバーが削除に応じてくれない場合、法的手続きによって口コミを削除できるようになることです。
弁護士に相談した後で、弁護士名義で削除依頼メールを送るのも1つの方法ですが、最初に削除してもらえなかった口コミは、今度も削除に応じてもらえない可能性が高いといえます。その場合は、裁判所に削除仮処分を申請して書き込みの削除を行います。
削除仮処分により口コミを削除する
運営が削除に応じてくれない場合には、裁判所に削除仮処分の手続きを行うことで口コミを削除できる場合があります。仮処分は民事保全法に基づいて裁判所が決定する暫定的な措置で、正式な判決と同様の効果をもち、裁判よりも早く結果が出るのが特徴です。
通常の裁判なら半年から1年ほどかかるのに対して、仮処分の場合は、1〜2か月で結果が出ます。裁判所に仮処分を申立て、あなたの主張が認められれば、仮処分命令が出され、口コミが削除されます。
著しい被害を受けた場合は犯人の特定や訴訟を
口コミの悪影響で自社の営業に支障が出たり、損失が発生した場合や会社のイメージダウンなど著しい被害を受けた場合、また、一度削除しても、しつこく悪い口コミを書き込まれ続ける場合などでは、犯人を特定し、訴訟を起こすことも検討する必要があるでしょう。
口コミ投稿者の特定は、プロバイダ責任制限法第4条に定められた発信者情報開示請求と呼ばれる制度で行えます。この制度では、サイト運営者およびプロバイダに情報開示を求めることで、犯人の氏名や住所など個人情報を知ることができます。
一般的に、加害者の特定には2度の開示請求を行う必要があります。
一度目は、口コミが書き込まれたサイトであるJPナンバーの運営会社への開示請求です。JPナンバーが保有している口コミ投稿者のIPアドレスとタイムスタンプの情報を開示してもらい、相手が利用しているプロバイダを特定します。
開示請求を行ったとき、相手が素直に応じてくれる場合は任意開示といわれ、裁判手続きなしで情報開示を受けることができます。しかし、多くのサイト運営者は任意での情報開示を拒否する傾向にあり、JPナンバーもおそらく任意開示は難しいとみられます。
そのため、ここでも裁判所に仮処分の申立を行います。開示仮処分にかかる期間は、1か月程度が目安です。
二度目の開示請求は口コミ投稿者が利用しているプロバイダ(経由プロバイダ)に対して開示請求を行い、相手の氏名や住所、電話番号など訴訟に必要とされる個人情報の開示を求めます。
加害者のプロバイダの特定は、JPナンバーから開示されたIPアドレスとタイムスタンプから可能です。開示請求を受けると、プロバイダは投稿者に対して、情報開示の認否を問う書面を送付します。ですが、加害者自身が自分の個人情報開示を許可する可能性は極めて低いでしょう。
さらに、プロバイダも顧客の個人情報を開示することには消極的です。そのため、ここでも任意開示を受けるのは難しいと考えられます。
今度も裁判手続きによる開示を求めることになりますが、プロバイダに対しては、仮処分ではなく、正式な裁判となります。開示請求訴訟にかかる期間は8か月から1年程度が目安です。
プロバイダへの開示請求で1点注意すべきなのが、アクセス記録の保存期間です。アクセスログは一定期間が経つと消されてしまい、削除されるとデータそのものがなくなるため、裁判に勝っても相手を特定するのが不可能になってしまいます。
アクセス記録の保存期間はプロバイダによって異なりますが、3か月から6か月が一般的で、裁判期間より短くなっています。そのため、放っておくと、裁判に勝っても判決が無意味になってしまう可能性が高いです。
そこで、プロバイダに開示請求を行うときは、同時に、裁判所にアクセス記録の保存を求める削除禁止仮処分の申立を行います。削除禁止仮処分の申立は通常、東京地裁に行い、2~3週間で決定が出ます。
相手の法的責任を追及する
犯人の特定後は、相手の法的責任を追及することが可能になります。営業に悪影響を与えたり、企業のイメージダウンにつながるような、目に余る悪質な書き込みに対しては、相手にもきちんと自分がしたことの責任をとってもらうべきだといえるでしょう。
法的責任には、民事責任と刑事責任の2種類があります。それぞれ別々に責任追及が可能なため、刑事と民事の両方から相手を訴えることも可能です。
刑事責任
警察に被害届や告訴状を提出し、告訴を行うことで加害者の刑事責任を追及できます。告訴により警察の捜査がはじまり、相手の行為が犯罪に当たると判断されれば、逮捕・起訴されることになります。
名誉毀損罪……何らかの事実に基づき、他人の名誉を傷つけた場合に適用される罪。3年以下の懲役または禁錮(刑務所等に収監されるが労働義務がない刑罰)もしくは50万円以下の罰金に処せられます。
侮辱罪……「バカ」「死ね」のように事実に基づかない単なる悪口に適用される罪。拘留(30日未満の収監)または科料(1万円未満の罰金刑)に処せられます。
信用毀損罪……嘘の情報により他人の信用を毀損した罪。業務に支障を来たした場合には業務妨害罪になる。3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる。
民事責任
名誉毀損等の行為は民法上の不法行為になり、損害賠償・慰謝料を請求することが可能です。一般的な慰謝料の相場は以下になります。
侮辱罪……1~10万円
信用毀損罪、業務妨害罪……1~50万円
これらはあくまでも相場であり、実際の金額は相手の口コミ内容や悪質さの度合いによっても異なります。詳細は弁護士にご相談ください。
まとめ
JPナンバーは知らない電話番号を調べられる、とても便利なサイトですが、なかには嫌がらせ目的の悪質な口コミも存在しています。悪い口コミをそのままにしていると、いつまでも口コミが残り続けることに。電話での営業やサービスの案内に悪影響を及ぼし、会社の業績悪化やイメージダウンにつながる恐れもあります。
もし、JPナンバーに悪い口コミが登録されて削除にも応じてもらえないときには、弁護士など法律の専門家に相談し、削除仮処分や開示請求、訴訟など対策をとるようにしてみてください。