高齢者を狙った特殊詐欺の被害は、いまだに高水準で、いつどこで被害に巻き込まれてもおかしくない状況です。
そのため、家族や周囲の人が詐欺に関する理解を深めて、高齢者を守る姿勢が大切となります。
高齢者の特殊詐欺の被害は高水準
特殊詐欺とは、被害者に電話やメールなどを利用して対面することなく現金を騙し取る犯罪の総称をいいます。特殊詐欺のターゲットは主に高齢者です。
近頃は警視庁からの注意喚起などにより、被害件数は減少に転じたものの、依然として被害額は高水準となっています。
また、警視庁が発表している特殊詐欺認知・検挙状況は、把握できている被害件数のため、被害の相談をしていない被害者の数を含めると、実際の数字をはるかに上回ることが想定されます。
特殊詐欺認知・検挙状況
平成25年 | 平成26年 | 平成27年 | 平成28年 | 平成29年 | |
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認知件数 | 11,998件 | 13,392件 | 13,824件 | 14,154件 | 18,121件 |
被害総額 | 約489億円 | 約565億円 | 約482億円 | 約408億円 | 約395億円 |
検挙件数 | 3,419件 | 3,252件 | 4,112件 | 4,471件 | 4,644件 |
検挙人員 | 1,774人 | 1,985人 | 2,506人 | 2,369人 | 2,448人 |
(引用:警察庁 平成28年の特殊詐欺認知・検挙状況について)
高齢者を狙う特殊詐欺の種類と手口
高齢者を狙う特殊詐欺の種類は増えてきているため、詐欺防止のためにも、種類と手口について理解を深めておきましょう。
オレオレ詐欺
息子などを装い電話をかけて、会社における横領金等のさまざまな名目で、現金が至急必要であるかのように信じ込ませて、被害者に指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口による詐欺です。
[注意点]
・偽の息子以外の”第三者”も登場させる手口が増えている(上司役や弁護士役など)。
・相手の話を簡単に信用しないこと。
・犯人は遠く離れた自宅に現金を取りにくることもある。
架空請求詐欺
「インターネットサイト利用料金が未納なので、至急支払ってください」等の架空の事実を口実に金品を請求する文書を送付して、指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口の詐欺です。
[注意点]
・財産を差し押さえるなどと記載して不安を煽る。
・コンビニの端末機で番号を入力して発行される支払用紙を使用してレジで支払うように指示が入ることもある。
・少しでも不審に思ったら、警察や消費者ホットライン「188」に電話をかけて電話をする。
義援金を装う詐欺
実在する団体名の名称をかたり「災害支援基金へ協力をお願いします」というFAXを送付し、実在団体とは別の個人名の口座に振り込ませようとする手口の詐欺です。
[注意点]
・有名なボランティア団体や公的機関と似た、間違えやすい名前を名乗ってくる。
・義援金を振り込む前に、信用できる団体かを確認する。
・少しでも不審に思ったら、警察や消費者ホットライン「188」に電話をかけて電話をする。
還付金詐欺
市区町村の職員を装い、医療費の還付等に必要な手続きを装って、現金自動預払機(ATM)を操作させて口座間送金により振り込ませる手口による詐欺です。
[注意点]
・ATMで手続きを促してくる電話は詐欺と考える。
・還付金などの払戻しをATMで手続きすることはしない。
・市役所や区役所の職員がATMに誘導する場合は詐欺と考える。
仮想通貨に関する詐欺
インターネットを通じて電子的に取引される仮想通貨で「今購入すれば必ず値上げして、必ず儲けることができる」と上手い言葉で購入させる手口による詐欺です。
[注意点]
・国が価値を保障しているのは法定通貨(いつも使っているお金のことです)のみで、仮想通貨の価値は保証されていない。
・仮想通貨は価格が変動することがあり、急落することもある。
・仮想通貨を購入する場合は、金融庁や財務居への登録を受けた仮想通貨交換業者で購入する。
個人情報削除詐欺
全国の消費生活センターや国民生活センターなどの公的機関を装い電話をかけてきて「最近、不審な電話がかかってきていませんか?個人情報が流出しているかもしれません。こちらで代わりに個人情報を削除してあげます。」と誘導して、逆に個人情報を搾取する手口の詐欺です。
[注意点]
・「個人情報を削除してあげる」と持ちかけてくる電話には注意する。
・質問に回答すると複数の業者から電話がかかってくる「劇場型誘惑」に注意する。
・少しでも不審に感じたら、消費者ホットワイン「188」に電話する。
キャッシュカードの騙し取り
警察官を名乗り「お客さまの預金口座が犯罪に使用された可能性がある」と電話をかけて「カードを作り直す必要がある」と言葉巧みに暗証番号を聞き出す手口の詐欺です。
[注意点]
・警察官や銀行協会等の職員が暗証番号を聞くことはない。
・絶対に他人に暗証番号を教えないこと。
・金融庁や預金保険機構を騙る手口もあるため注意する。
収納代行利用型詐欺
「Webコンテンツ利用料で未納が発生しているため収納代行を利用してお支払ください」と架空請求をする手口の詐欺です。
[注意点]
・実際には未納料金の支払ではなくて、犯人の買い物代金の支払になるため疑うこと。
・仮想通貨購入用の口座へ、コンビニから入金させる手口もある。
・サイト料金未納などを理由にコンビニ払いが支持されたら警戒する。
電子ギフト券詐欺
「有料動画に未払いがあり、滞納状態になっています。財産差し押さえの期日が迫っているため、支給、アマゾンギフト券を購入して裏側のコード番号を教えてください。」と不安を煽り、電子ギフトを詐取する手口の詐欺です。
[注意点]
・身に覚えのない料金請求や連絡に慌てて返信をしないようにする。
・プリペイドカードや電子ギフト券の購入を支持された場合は詐欺である。
・プリペイドカード番号等を伝えた後に詐欺に気づいた場合は、早急にプリペイドカード会社へ連絡をする。詐欺業者が換金する前に番号を無効にできれば、被害を食い止めることができます。
現金送付型詐欺
家族になりすまして「支給現金が必要になったため、郵送で現金を送って欲しい」と相手を騙し、お金を盗む手口の詐欺です。
[注意点]
・「ゆうパック」や「レターパック」「宅配便」でお金を送ることはできない。
・電話で「お金を送って欲しい」と言われたら不審に思うこと。
改元に伴う詐欺
「令和に改元されたため、キャッシュカードの交換が必要です。職員が伺いますので、キャッシュカードを渡してください。」と銀行職員を装い、キャッシュカードを騙し取る手口の詐欺です。
[注意点]
・全国銀行協会や銀行員が暗証番号を聞くことはない。
・少しでもおかしいと思ったら、取引先の金融機関に確認する。
・カードの変更手続きは銀行窓口で行う。
高齢者を狙う特殊詐欺の防止対策
詐欺師や悪質業者は、さまざまな話題に合わせて高齢者を騙してきます。
高齢者の中には、他人を疑わずに素直に信用してしまう方も多くいます。また、詐欺被害に遭ったことに気がついても「子供たちには迷惑かけたくない」「周りに話すのは恥ずかしい」という理由で、誰にも相談しない方も多くいるのが現状です。
近頃は核家族化が進行してきており、高齢者の一人暮らしも増えています。詐欺師や悪質業者は、このような高齢者をターゲットに狙う傾向があるため、ご家族や周りの人が、日頃から高齢者の様子を気にかけて見守る必要があります。
高齢者の方と詐欺防止方法の相談を!
特殊詐欺の被害者の多くが高齢者の方です。そのため、普段から家族の中で詐欺に関する話題をして、注意を呼び掛けておきましょう。また、詐欺の被害を最小限に抑えるためには、素早い相談が何よりも大切です。
そのため、消費者生活センターや警察などの相談機関の連絡先も伝えておきましょう。
詐欺被害を他人事と考えない!
詐欺の被害は他人事ではありません。「自分は詐欺には騙されない」と思い込まずに、常に疑う心を持つようにしましょう。詐欺防止につながる心がけを忘れてはいけません。
・折り返し電話をする場合は、電話番号を電話帳やインターネットで確認する。
・心配してくれる家族や友人の言葉には耳を傾けて、冷静的に考える。
・日頃から留守番電話にしておき、相手を確認してから電話に出るようにする。
防サギグッズの購入も検討!
詐欺被害に巻き込まれないように、ご家族で使える防サギグッズを使用してみましょう。とくに電話機用録音機はおすすめです。犯人は、声が残ることを嫌がります。
そのため、留守番電話設定や録音機が付いている電話機は効果的です。実際に、ある自治体
では、高齢者の世帯に録音機を導入したことにより、被害はほぼゼロを実現しました。
このように防サギグッズの購入を検討してみることも、被害から身を守るための1つの方法です。
まとめ
この記事では、高齢者の被害が相次ぐ特殊詐欺について解説しました。特殊詐欺は細かくみると、さまざまな手口の詐欺があり、毎年、手口は巧妙化しています。
詐欺の被害に巻き込まれないように、詐欺に関する知識を深めて、家族内で詐欺対策を取り入れる姿勢が大切です。ぜひ、この記事を参考にしていただき、できることから対策をとってみてください。
もし被害に遭ってしまったら直ちに更なる被害の防止や被害回復をする必要があります。場合によっては訴訟も検討が必要ですし、警察とも連携していく必要があります。この場合、法律知識も必要になってきますので弁護士にご相談することをお勧めします。