
個人再生や自己破産に比べると、任意整理の手続きは比較的簡単です。
とはいえ、実際に返済を開始するまでには、意外にも多くのステップを踏まなければなりません。

任意整理の手続の流れを大まかに紹介
後ほど詳しく見ていきますが、まずは、任意整理の手続きの流れについて、確認しておきましょう。任意整理は、弁護士や司法書士への相談から始まります。
- 弁護士への相談
- 受任契約
- 受任通知送付
- 取引履歴を開示を請求
- 引き直し計算
- 和解案作成と交渉を開始
- 合意書の作成
- 支払いの開始
- 完済
借金問題を解決するために、任意整理を含めた債務整理の中から、適切な手段を話し合いながら決めていきます。また、不安なこと、疑問に思っていることなども相談することができます。
初回面談において、主に、借り入れの額や借入先の情報、債務者の収支状況などの聴き取りが行われます。
大体で問題ありませんので、自分の借入状況は把握しておきましょう。
任意整理を依頼すると決まれば、委任契約を結び、任意整理の手続きが始まります。
委任契約を結ぶことにより、弁護士は正式に債務者の代理人に就任することになります。
依頼された弁護士は受任通知を債権者に送り、債務者に対し直接取り立てることを停止します。以降は、債務者の代理人である弁護士が債権者との交渉窓口になります。
また、借金返済も一旦ストップします。和解が決定し、支払いの開始までの間は借金の返済は一時的に止まります。
弁護士が債権者側に取引履歴の開示請求を行います。
一般的には2~3週間程度と言われていますが、2ヶ月~3ヶ月以上かかる場合もあります。
開示された取引履歴をもとに正確な借金額を計算します。
払いすぎた利息である過払い金が発生していないかも調査します。
利息を払いすぎている状態で過払い金が発生していることがわかれば、債権者に対して過払い金の返還を請求を行います。消費者金融以外にも、クレジットカード会社のキャッシング枠などが対象となる可能性があります。
引き直し計算で算出された借金額を依頼者の収入などと照らし合わせて、和解案を作成します。
原則3年の分割払いや利息のカットを盛り込んだ和解案を、各債権者に送付し、交渉します。
弁護士が債権者の納得を得て、和解内容が確定すると合意書を作成します。
依頼者が内容を了承し、合意書に調印します。
和解内容にもとづき、完済に向けて、返済を開始します。
和解内容通りの返済が完了すれば、任意整理の手続きは終了となります。
任意整理の大まかな流れは以上のとおりです。
過払い金は手元に入る?
過払い金の発生があり、過払い金請求で戻ってきたお金はどうなるのでしょう?
任意整理の途中で過払い金請求によって返還されたお金は主に借金の減額に充てられます。
例えば借入が100万円、過払い金が70万円あったとしたら、残りの借金が30万円に減額されます。
この場合は過払い金があったとしても借金と相殺されますので、手元にお金が入ってくることはありません。
逆に借入額が70万円、過払い金が100万円となり、過払い金が借入額をを上回れば残りの30万円が手元に入ることになります。
ただ、2007年頃以降は金融業者の金利見直しがあったため、過払い金の発生していないケースが多くなります。

任意整理をスムーズにするためのオススメ方法
任意整理をスムーズに進めるための方法として、弁護士との面談前に以下の書類を揃えておくことをお勧めします。
必要な書類を用意して面談をしよう
最低限必要なものとしては依頼するうえで必要な3つがあります。
- 本人確認書類
- 印鑑
- 借入先のカード類
運転免許証、保険証、パスポートなどの本人確認ができるものです。最近出てきたマイナンバーカードは扱いが難しいため、本人確認書類として使えるか、事前に尋ねておいたほうが良いでしょう。
シャチハタではなく印鑑が必要です。
クレジットカードやキャッシュカードなどの借入をしているカードが必要になります。
また、必要に応じて用意する書類もあります。
- 債権者一覧表
- 収入や支出の状況がわかるもの
- 預金通帳
- 財産に係る資料
借入先の情報や借入額をまとめたものです。弁護士は、債務者の借り入れ状況を把握するうえであるとスムーズに手続きが行えます。
どこからいくら借りているのかがわかる書類をなるべく集めて、まとめておきましょう。
収入がわかる給与明細書・源泉徴収票や支出がわかる公共料金の領収書などがあると、任意整理をできるかの判断を弁護士がしやすくなります。
使用している通帳で収入、支出を確認できます。
車や不動産といった財産を所有していて、不動産の全部事項証明書、車検証などが必要になる場合に準備できます。

必要に応じて準備する書類である債権者一覧表や収入や支出の状況がわかるもの、預金通帳、財産に係る資料などは、法律事務所によって違いがあるため、債務相談の予約を取る際に確認しておくことをオススメします。
分からないことは弁護士に聞いてみよう
任意整理の相談を受け付けている法律事務所は多いため、その中からどの事務所に依頼するのかを決めるのは簡単ではないかもしれません。そのような方には、考えるよりもぜひ一度法律事務所に相談してみてください。
債務整理の手続きはやることが多く、分かりづらく感じる方も多いかと思います。ひとつひとつの作業を進めていくうえでも疑問が出てくることでしょう。そんな時に、弁護士に依頼していれば適切なアドバイスをもらうことができます。
債務整理の検討や興味を持っている段階でも無料相談で借金の悩みについて答えてくれる事務所もありますので、まずは相談してみるというのも一つの手です。

弁護士に任意整理を依頼するメリット
任意整理は借金問題を解決する手段として効果があることはわかったかと思います。
ですが、「借金をしているのにお金を払って弁護士に依頼するなんて本末転倒ではないか?」と考えた方もいらっしゃるかと思います。
弁護士費用に見合った効果はあるのかを見ていきましょう。
- 費用が減額効果を上回ることはない
- 周りにバレにくい
- 分からないことを聞ける
- 和解交渉を任せられる
原則として、弁護士費用が任意整理の減額効果を上回ることはありません。
任意整理でのメリットが少ない場合は、自己破産や個人再生といったその他の債務整理を適切に提案してくれます。
手続きの流れから見て分かるように、受任後のやることとしては、ほぼ返済です。
多くの手続きを任せることができるため、バレづらいと言えるでしょう。
債務整理は多くの人に関係してくることですが、深い知識を持っている人はそう多くはいません。
安心して相談できる弁護士は、精神的な部分でも支えになってくれるはずです。
自分で業者と和解交渉を行おうとすると、条件があまり変わらなかったり、そもそも応じてもらえなかったりするケースがあります。
その点、弁護士に依頼する方が、有利な交渉ができる可能性は上がります。
このように任意整理を弁護士に依頼するメリットは多くあります。
任意整理のデメリット
反対に、任意整理のデメリットとはなんでしょうか?
任意整理は借金問題の解決に有効な手段ではあります。しかし、相応のデメリットもありますので確認しましょう。
信用情報機関に登録される
任意整理をすると、5年間、いわゆるブラックリスト状態となります。
信用情報機関に、債務整理を行ったことが記録されます。貸金業者は申し込みがあった際にこの信用情報を確認するため、審査が通らなくなります。
具体的には、5年の間は、ローンを組んだり、クレジットカードを利用したり、新たに借入をしたり、といったことができなくなります。
業者が応じてくれないケースもある
任意整理は業者との任意の和解交渉になります。
相手によっては、月々の返済額が思ったより減らなかったり、利息の免除が成立しなかったりすることも、もちろんあり得ます。
ただ、現実問題として、全く任意整理に応じないという業者は稀です。
これは任意整理に応じない場合、自己破産の可能性や貸金を回収するための手間が生じるからです。
訴訟手続きは中断できない
基本的に業者が訴訟の手続きを進めている場合は、任意整理でそれを止めることは難しいと言えます。
この場合、任意整理ではなく、個人再生や自己破産といった方法を検討することになります。
まとめ
任意整理は、比較的簡単な手続きであるといわれますが、それでも押さえておくべきポイントはいくつかあります。
あらかじめ資料を作成したり集めたりすることで、弁護士との面談がスムーズになり、いちはやく任意整理業務に着手してもらうことができます。
また、今回見てきた手続きの流れを理解していることで、進捗などを把握することができるため、安心感にも繋がります。
