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任意整理をしようとする人の中には「特定の債権者を整理の対象から外したい」「特定の債権者のみを整理したい」といった要望を持っている人もいます。

しかし、他の債権者との関係で、特定の債権者のみ異なる扱いをすることはできるのでしょうか?

また、任意整理を始めてはみたものの、あまり借金が減額されず、「これでは月々の支払額が今までとあまり変わらない」といった事態も想定されます。

このような場合、任意整理をそのまま続けても、借金問題を効果的に解決することができないため、方針の切り替えを検討する必要があります。

しかし、簡単に方針を切り替えることはできるのでしょうか?

そこで今回は、一部の債権者との間でのみ任意整理をすることはできるのか?任意整理から個人再生に切り替えることは可能なのか?という点について解説していきたいと思います。

1 任意整理とは?

「任意整理」とは、個人再生や自己破産のように裁判所を利用することなく、債務者と債権者が借金の支払条件などについて任意で交渉する手続きのことをいいます。

債権者との間では、主に、将来利息のカット、支払方法(4年~5年の長期にわたって分割で支払うことが一般的です。)について交渉を行います。

具体的には、まず始めに、債権者により開示された債務者との取引履歴を基に、利息制限法所定の利率に引き直し計算をします。

その結果、利息を払い過ぎていれば、払い過ぎた分だけ借金を減額することができますが、「長い期間取引をしている」といった事情がない限りは、減額はほとんど見込めないといっていいでしょう。

そのため、主には、将来利息のカットや支払方法について交渉が行われるわけです。

交渉の結果、債務者と債権者との間に支払条件についての合意が成立すると、債務者は債権者との間で締結した和解書に記載されている支払条件のとおり、支払いを開始することになります。

2 任意整理を一部のみすることはできる?

個人再生や自己破産では、すべての債権者を平等に扱わなければならないというルール(=「債権者平等の原則」といいます。)が存在します。

たとえば、A社・B社の2社から借金をしている債務者が任意整理をする場合に、A社のみを任意整理の対象として、B社をその対象から外したとしましょう。

この場合、B社は任意整理の対象から外されているため、債務者は従来通り、B社に支払いを続けていくことになります。

しかし、A社は任意整理の対象となっているため、少なくとも従来より債務者に有利な支払条件でしか支払いを受けられないことになります。

この点、任意整理は、個人再生や自己破産のように裁判所を利用することなく任意で行える手続きであるため、このルールがそのまま任意整理にも適用されるというわけではありません。

たとえば、上の例において、B社がクレジットカード会社であった場合、B社を任意整理の対象に含めてしまうと、それ以降、B社のクレジットカードを利用できなくなります。そこで、債務者は、生活上クレジットカードを使えなくなるのは困るといった理由で、B社を任意整理の対象から外したうえで、A社のみを任意整理することが可能なのです。

任意整理はあくまで債権者との任意の話し合いを前提とした手続きですので、一部の債権者のみを対象として、借金を整理できます。

3 任意整理を取り消すことはできる?

弁護士に任意整理を依頼する際には、債務者と弁護士の間で委任契約を交わすことが通常です。ここでいう「委任契約」とは、債務者が弁護士に対し、自分の任意整理を依頼することを内容とする契約です。

債務者から任意整理の依頼を受けた弁護士は、各債権者に対し「受任通知」を送ります。

ここでいう「受任通知」とは、弁護士が、債務者による委任に基づき、債務者の代理人として債務整理事件に着手することを内容とする通知のことをいいます。

この通知により債務者に係る債務整理が開始され、受任通知を受け取った債権者は、債務者への直接の取り立てなどを停止し、債務者との取引履歴などを弁護士に開示することになります。

通常は、その後、借金の支払条件などについて債権者と直接交渉を始めることになりますが、この過程で、債務者の経済状態に変化が起きるなどして、任意整理をする必要性がなくなる場合があります。

このような場合には、以下で見るように、債務者は任意整理を取り消すことができます。

(1)債務者の経済状態が好転した場合

たとえば、個人事業主であるAさんが経営に行き詰まり、任意整理を依頼したものの、後に、経営状態が回復し、借金を返済していけるだけの売上を出せるようになった場合、任意整理をする必要性がなくなります。

このような場合には、Aさんは任意整理を取り消すことができます。

もっとも、弁護士が受任通知を送付すると、そのことが事故情報として信用情報機関に登録されることになります(いわゆる「ブラックリストに載る」というのは、このことを意味します。)。そのため、任意整理を取り消した後においても、その情報が残ったままとなる可能性があります。

信用情報機関に事故情報が登録されてしまうと、新規の借り入れやクレジットカードの会員申込みなどの審査に通りにくくなるといったデメリットがあります。

そうすると、Aさんとしては、任意整理を続けて、債権者との間で和解を成立させることの方が、将来利息をカットしてもらえる可能性もあり、自分のためになると考えられます。

Aさんにおいて、余裕のある返済原資を確保できるようであれば、債権者と合意した月々の支払額以上の額を返済していくことで、早期に借金を完済することも可能です。

(2)債務整理の方針を切り替える場合

任意整理を依頼したものの、あまり借金を減額することができなかった場合、無理に返済計画を立てて支払いを開始したとしても、途中で支払いができなくなってしまうと、債権者から借金の残りを一括で支払うよう請求される可能性があります。

このような事態になってしまっては、何のために任意整理をしたのか、わからなくなってしまいます。

そこで、このような場合には、任意整理を取り消したうえで、個人再生や自己破産に方針を切り替えることが考えられます。

(3)任意整理を取り消すことによる効果は?

先に見たように、弁護士に任意整理を依頼する際には、債務者と弁護士の間で委任契約を交わします。

そのため、任意整理を取り消すためには、弁護士との委任契約を解除する必要があります。

債務者は、弁護士との委任契約を解除することによって、任意整理を取り消すことになります。その結果、弁護士は債務者の代理人としての地位を失うため、その旨を各債権者に書面(=「辞任通知」といいます。)で通知します。

辞任通知を送付することにより、債務者は債権者との関係でも任意整理を取り消すことになります。

ここで、任意整理を取り消す効果として、注意しなければならない点が2点あります。

1点目として、債務者が債権者との関係で任意整理を取り消すと、債務者は弁護士に依頼する前の状態に戻ってしまいます。
そのため、債務者は再び債権者から直接支払いの催促などを受けることになります。

2点目として、弁護士との関係で任意整理を取り消したとしても、それまでに支払った弁護士費用(着手金の部分)が戻ってくる可能性は低いと考えておいた方がよいでしょう。

これは、少なくとも任意整理を取り消すまでに、弁護士には一定の業務が発生していることに加え、あくまで債務者の都合によって委任契約が解除されているためです。

もっとも、任意整理の取り消しが、方針の切り替えを理由としている場合には、弁護士を変えない限りは、引き続き、同じ弁護士が債務整理を行うことになります。
そのため、弁護士費用については、弁護士との協議によって調整されることになると考えられます。

最後に、信用情報機関との関係でも注意が必要です。

ここでいう「信用情報機関」とは、消費者金融クレジット会社、そして、銀行などが加盟する3つの機関のことを指します。

先に見たように、弁護士が各債権者に対し受任通知を送付すると、そのことが事故情報として信用情報機関に登録されます。そのため、任意整理を取り消した後においても、その情報が残ったままになる可能性があります。

信用情報機関に事故情報が登録されてしまうと、新規の借り入れやクレジットカードの会員申込みなどの審査に通りにくくなるため注意が必要です。

この場合、情報開示制度を利用することにより、自分の情報が登録されているかどうかを確認することができます。

4 任意整理から個人再生に切り替えることは可能?

任意整理を開始したものの、借金をほとんど減額できなかったというケースでは、そのまま任意整理を続けるかどうかを慎重に判断する必要があります。

そもそも、債務者が任意整理を開始したのは、月々の借金の支払いが困難になったことが原因です。にもかかわらず、借金をほとんど減額できなかった場合には、月々の借金の支払額をさほど減額できない可能性があり、そうなると、債務者にとって、抜本的な解決にはなりません。

そこで、任意整理に比べ、大幅に借金を減額できる見込みのある個人再生に方針を切り替えることが考えられます。

(1)個人再生とは?

「個人再生」とは、月々の借金の支払いが困難となった債務者が、裁判所に個人再生を申し立てることにより、自分が負担する借金を大幅に減額してもらい、減額後の借金をどのように返済していくかを計画(=「再生計画案」といいます。)するための手続きです。

策定した再生計画案(返済計画)について、裁判所から認可を受けることにより、債務者は、再生計画案(返済計画)の内容に従って、およそ3年~5年(原則3年)にわたり借金を返済していくことになります。

個人再生における大きなメリットは、任意整理と比べ、借金の大幅な減額が見込めるということにあります。

任意整理では、減額できるとしても、せいぜい将来利息のみにとどまることが多く、元本まで減額できるケースはほとんどありません。

その点、個人再生は、基本的に借金額の5分の1に相当する金額にまで借金を減額することが可能であり、債務者が負担する借金額によっては、最大で10分の1に相当する金額にまで借金を減額することが可能な手続きです。

とはいえ、個人再生は、任意整理とは異なり、裁判所を利用する手続きであるため、一個人が自分で対応するにはかなりハードルの高い手続きです。

たとえば、再生計画案(返済計画)を策定するためには一定の法的知識が求められますし、手続きの過程では個人再生委員(個人再生手続きを監督・指揮する立場にある弁護士で東京地方裁判所では必ず選任されることになっています。)とのやり取りが何度も発生することがあります。

そのため、個人再生を申し立てる場合には、弁護士に依頼することが一般的になっています。

(2)任意整理から個人再生への切り替え

任意整理を開始したものの、さほど借金が減額されず、効果的に借金問題を解決できない場合や任意整理により債権者と和解したものの、その後の支払いが困難になった場合には、個人再生に切り替えることが可能です。

もっとも、無条件に個人再生に切り替えられるわけではありません。

任意整理から個人再生へ切り替えるためには、債務者において、個人再生を利用するための条件を満たしていることが必要になります。

個人再生の手続きを利用するためにまず必要となる条件は、債務者において、継続的に安定した収入を得られる見込みがあることです。

この点、正社員として一定期間勤務しているような人は問題なくこの条件を満たしているといえますが、日雇いやアルバイトで収入に大きな波があるような人はこの条件を満たしていないと判断される可能性があります。

このほかにも、債務者が負担している借金の総額が5,000万円以下(住宅ローンは含まれません。)であることが条件となります。もっとも、任意整理を行う場合で借金の総額が5,000万円を超えているようなケースはさほど多くないと考えられるため、ほとんどの人はこの条件を満たしているといっていいでしょう。

このように、任意整理から個人再生への切り替えは可能であるものの、債務者において個人再生手続きを利用する条件を満たしていないと個人再生に切り替えることはできません。

5 任意整理から個人再生に切り替える際の注意点

任意整理から個人再生への切り替えは、以下の点を押さえたうえで、個人再生に切り替えても問題ないか、ということを判断することが大切です。

(1)保証人との関係

個人再生に切り替えると、少なくとも、再生計画案について裁判所から認可が下りるまでの間、債務者は債権者に対する支払いを停止します。

そのため、連帯保証人がついている借金が含まれる場合には、債権者から連帯保証人に請求がいく可能性があります。特に、自分の親族が連帯保証人になっているような場合には注意が必要です。

(2)自動車を保有している場合

ローンを組んで購入した自動車を保有している場合、ローン会社に自動車の所有権が留保されていることが一般的です。
そのため、ローンの支払いを終える前に、個人再生の手続きを採ると、ローン会社に自動車を引き上げられる可能性があります。

(3)官報に掲載されること

個人再生をすると、国が定期的に発行する「官報」に住所や氏名、個人再生をした旨などの情報が掲載されます。

もっとも、日頃から官報をチェックしているのは、ごく一部の者に限られますので、個人再生をしたことが官報からバレるといった心配はほとんどありません。

6 まとめ

任意整理を依頼しても、債務者のその後の事情などにより、任意整理を続けることに支障を来すケースがあります。

しかし、このような事態になったとしても、慌てる必要はありません。

債務整理には、任意整理のほかにも、個人再生や自己破産といった手続きがあるため、任意整理を取り消して他の手続きへ切り替えることも可能です。

債務者にとって最も適した手続きを選択しなければ、借金問題を抜本的に解決することはできないということです。
債務整理に失敗しないためにも、まずは、相談料無料の当事務所にご相談することをお勧めします。

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