破産宣告を受けた後はどのような影響がある?かかる期間や費用は?

自己破産破産宣告という言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、どういう意味や内容なのか、そもそも知っている方は少ないのではないでしょうか。
破産宣告を受けるためには一定の条件を満たすことが必要であり、破産宣告されると法的な効力が発生します。

この記事では、自己破産の条件やその効力、また、かかる期間や費用などについてまとめたものを解説していきます。

破産宣告(破産手続開始決定)とは?

破産宣告とは、債務者について自己破産の手続きを開始する旨を決定する事を指します。
現在の破産法では破産宣告という名称ではなく、破産手続開始決定と呼ばれています。

※本記事では破産宣告の文言で統一します。

破産宣告を受けるための主な条件は、債務者が支払不能であることが挙げられますが、まずここでは破産宣告がそもそもどういうものかをご説明していきます。

破産宣告(破産手続開始決定)は免責と同じ意味ではない?

破産宣告は簡単に言うと、裁判所が破産者の破産手続開始の決定をすることです。
しかし、これによって借金の支払いが免除されること、すなわち、免責が許可されるわけではありません。
つまり、破産宣告と、借金の支払いが免除される免責は意味が異なります。

POINT
破産宣告と、借金の支払いが免除される免責は意味が異なる。

破産宣告(破産手続開始決定)の条件

この破産宣告を受けるためには、以下の3つの条件を満たしていることが必要になります。

破産宣告を受ける3つの条件
・破産手続開始原因があること
・破産障害事由がないこと
・破産手続開始の申立てが適法であること

条件の1つ目は、破産手続開始原因があることです。

これは支払不能と債務超過のことを指します。支払不能とは、債務者の返済能力の欠乏のために弁済期の到来した債務を一般的かつ継続的に返済することができないと判断される客観的状態のことです。

これには、一部の債権者だけに返済できない場合や、一時的な資金不足によって返済できない場合は含まれません。

また、債務超過とは、債務者のプラス財産よりも、マイナスの財産の方が上回っている状態にあることを言います。個人が破産するという場合で考えると、支払不能が破産手続開始原因になります。

条件の2つ目は、破産障害事由がないことです。
この破産障害事由とは、破産手続開始原因等の存在が認められても、裁判所が破産手続開始決定をなしえない事由をいいます。例えば、破産宣告とはまた別の倒産処理手続きが既に着手されている場合は破産障害事由にあたります。

条件の3つ目は、破産手続開始の申立てが適法であることです。
適法性は、申立てをした人に申立権があるかどうか、破産者に破産能力があるかどうかなどによって判断されます。
破産手続開始の申立権は、相続財産破産や信託財産破産の場合を除き、債権者と債務者に与えられています。

また、破産能力における「能力」とは、ここでは「資格」という意味を指します。つまり、破産能力とは破産手続開始決定を受けることができる資格、破産者になることができる資格という意味になります。

このように、破産宣告を受ける為には、基本的に以上のような3つの条件を満たしていることが必要になります。

破産宣告(破産手続開始決定)の効力とは

上記のような条件を満たし、破産宣告を受けた場合は、実際にどのような効力が発生するのでしょうか。
ここでは、破産宣告がされることで考えられる主な4つの効力についてご説明していきます。

通信の秘密制限

破産管財人が選任された場合、管財人が破産者の財産状態や取引関係を把握するために、破産者宛の郵便物や信書便物が管財人に配達されるようになります。

財産の管理と権利が管財人へ渡る

破産管財人が選任された場合、破産財団に属する財産の管理処分権は、破産者から剥奪されて破産管財人に専属することになります。
破産財団とは、破産手続開始時における破産者の一切の財産で自由財産を除くものをいいます。

従って、破産手続が開始されると自由財産以外の破産者の財産はすべて破産管財人が管理、処分することになり、破産者自身が自由に管理や処分をすることができなくなります。

居住地が制限される

居住地を離れることに制限がかかる場合があります。
管財事件として取り扱われた場合では、破産管財人は破産者の財産を現金に替えるなどして債権者に配当をすることになります。そのため、破産管財人は破産者の資産がその段階でどの程度あるのか把握しておく必要があります。また、不明点が発生した場合は、その内容について破産者に説明請求を行うこともあります。

そして、破産者はこの求めに答えなければいけない義務があります。

このような義務を滞りなく行うには、破産者の居住地を認識しておくことが重要です。そのため、裁判所からの許可がない限り、破産者は引越しなどの居住地変更等をすることは認められていません。

職業の制限がかかる

自己破産の申立てをすれば、その申立人は破産者となります。

破産手続中、破産者には資格制限が課せられます。そのため、該当する職種に就いている場合には、一時的にその資格や職種の仕事ができなくなります。
例えば、制限がかかる職業として、弁護士・司法書士・行政書士・などの士業、生命保険募集人、警備員などが一例として挙げられます。

破産宣告(破産手続開始決定)をした後の影響は?

それでは、実際に破産宣告をした後はどのような変化が表れるのでしょうか。

自己破産の手続については、資産や借金などの状況によって異なりますが、通常、申立から約4ヵ月~半年程度の期間で手続きが終了します。
ここでは、手続きを行うことにより発生する生活などへの影響についてご説明します。

免責許可が決定すれば支払義務が法的になくなる

返済しなくてはいけない借金がなくなるということが、自己破産の大きな魅力です。

破産宣告後、免責許可が決定した場合、対象になった借金は法律上の返済義務が消滅します。しかし、借金自体が消滅するというわけではありません。

免責とは、財産を換価分配した後になお残った借金の返済義務が法律上免除になることを指すので、返済をしなくても法的には請求されない借金は残るという形式になります。

このように、法律上は返済義務が無くなった負債のことを、自然債務といいます。

免責が認められない債権もある

個人での自己破産を行う場合、原則的には「免責を前提とする」という考えに基づいて手続きが行われます。しかし、いかなる場合でも免責許可が下りるわけではありません。

破産法の中では、免責を与えないとする「免責不許可事由」という事情を定めています。
免責不許可事由に該当する場合は、主に以下の3点が挙げられます。

①債権者の権利を不当に侵害した場合
免責不許可となる要因の一つに、債権者の権利を不当に侵害したということがあります。
つまり、債権者にかかる迷惑の程度が大き過ぎる場合や悪質すぎる際は、免責が認められずに不許可になるケースがあるということです。
例えばこれは、不当に高い金利での借入れなどの不当な債務負担や、株などの投機的投資行為も含め、ギャンブルや射幸行為によって多額の借金が発生した場合などが挙げられます。

②破産者としての義務に違反した場合
破産者には、誠意をもって手続きに協力する義務があります。
最近の裁判所では、そのような義務をきちんと全うしているかどうかということを重視している場合もあります。
従って、浪費やギャンブルが原因ではない場合など、そもそもの借金自体に問題がないケースであっても、手続に協力的でない態度が見られる際は、免責不許可となる場合があります。

③免責の濫用は許されない
簡単に言うと、際限なく免責が許可されるというわけではないということです。
破産免責されることによって破産者の借金が免除になるということは、一方では債権者の権利が犠牲になってしまうということでもあります。
従って、誠意をもって生活を立て直すという意思があると判断できない場合は、破産免責を与えるべきではないという決断が下されます。

以上のような理由から、全ての破産免責が許可されるということではなく、免責されない場合も存在します。

クレジットカードは利用できなくなる

自己破産の手続きを行うと契約中のクレジットカードの利用は継続できなくなります。

弁護士に自己破産の依頼を正式に要請すると、弁護士は債務整理の依頼を受けたことを知らせる通知を債権者に送ります。

この通知を受け取ったクレジットカード会社は、契約に基づいて強制解約を行います。従って、この時点で契約していたクレジットカードは全て利用できなくなります。

破産宣告(破産手続開始決定)の期間と費用

それでは、破産宣告の手続きを行うにはどれくらいの期間と費用がかかるのでしょうか。

自己破産の手続には資産や借金等の状況によって複数の手続きが用意されており、それぞれ内容が異なります。

ここでは、同時廃止事件と管財事件の手続きにおける、必要費用や期間についてご説明していきます。

同時廃止事件

この同時廃止とは、自己破産をこれから行う人に、高額と判断される財産(33万円以上の現金や、価値が20万円以上の資産)がないということに加え、免責に関しても破産管財人が調査をする必要のない場合に、破産手続開始決定と同時に破産手続を終了して、免責手続のみを行うという比較的簡単な手続です。

同時廃止の場合、申立てから約3~4ヵ月ほどで手続きが終了します。

同時廃止でかかる費用は、弁護士・司法書士の報酬と、予納金と呼ばれる裁判所へ納める費用です。

予納金の内訳は、東京地裁の場合は、手数料が1500円、官報公告費が1万1859円、郵券が4200円です。それぞれの費用は裁判所によって異なりますが、おおよそ2,3万円以内で収まることが多くなります。

同時廃止でかかる費用
弁護士・司法書士の報酬と、予納金と呼ばれる裁判所へ納める費用が必要です。

管財事件(少額管財含む)

この管財事件とは、債務者の財産をある程度は債権者に分配できる場合などに適応される手続きのことです。
分配される際は、裁判所から選出された管財人が公平性を保ちながら、債務者の財産を換金して債権者に分配します。
管財事件の場合、申立てから半年程度で手続きが終了します。

管財事件でかかる費用は、裁判所・管財人への費用で約22万円~となります。
※費用に関してのまとめ記事はこちらをご覧ください。
https://amata-lawoffice.com/management-case-due-to-self-bankruptcy/

自己破産は弁護士へ相談を

破産宣告後に免責許可が決定すれば、返済しなくても法的に請求されることのない借金が残るという形になり、法律上、借金の返済義務が消滅します。
しかし、例外なく全てのケースにおいて免責を受けられるわけではなく、免責されない債権もあります。

また、破産宣告を行った後は、一部の資格や職業が制限される可能性や、無断での引越し等が許されないなどの注意点もあります。
必要となる期間や費用も様々で、債務の額や借入れの経緯などによっても手続きが異なるため、自己破産を検討している場合は知識を持った弁護士に相談するのが得策です。

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