交通事故により加害者、被害者との交渉がこじれてしまい、賠償金の請求などについて訴訟になってしまうことも少なくはありません。

訴訟を起こすと、訴えられた側だけでなく、訴訟を起こした側にも裁判の準備などの負担がかかり、また解決するまでには長い時間がかかってしまいます。

交通事故被害者の負担を減らし、訴訟を起こさずに、和解の斡旋を行い、迅速な解決を助けるために設立された公益財団法人が、交通事故紛争処理センターです。

この記事では交通事故紛争処理センターの業務や、利用する際の注意点などについて解説しています。

交通事故紛争処理センターで行う業務とは?

交通事故紛争処理センターではどのようなことを相談することができるのでしょうか?

センターが行なっている業務

・交通事故に関する法律相談
交通事故の被害者本人からの申し立てにより、センターの担当弁護士に和解・斡旋を前提とした相談をすることができます。

・和解・斡旋
申立人から和解の要請があった場合や、相談を受けた担当弁護士が和解の斡旋が必要だと判断した場合は、当事者双方からの話を聞き、和解のあっせんを行います。

・弁護士の紹介
交通事故関連に詳しいセンターの嘱託弁護士194名(平成31年現在)の中から、事故に関して相談ができる弁護士を紹介します。

・審査
和解が成立せずに、これ以上斡旋を行っても和解できる可能性が低い場合は、当事者の申し立てによって審査会を開催します。審査会では当事者双方の話を聞いてから、過去の判例を参考にして、公正中立な立場で裁定が出されます

センターが行なっていない業務

センターでは次のような内容の相談については受付をしていません。

・加害者側が自動車以外の場合の交通事故
自転車同士の事故や、自転車と歩行者の事故など、加害者が自動車以外を運転していて発生した交通事故については、相談することができません。

・申立人本人が契約している保険会社との紛争
自分が契約している保険会社や共済組合との間で、支払などについて紛争が起きている場合も、センターの業務対象外となります。

・自賠責保険の後遺症認定
自賠責保険による後遺症の等級認定に関わる紛争については、センターで相談を受けることができません。

・加害者の保険会社が不明の場合や、加害者が保険未加入の場合
加害者がどこの保険会社と契約しているのか不明の場合や、任意保険に加入していない場合は、業務の対象外となりますが、保険未加入であっても、センターでの和解斡旋について加害者側の同意があれば、和解斡旋を行うことがあります。

どんな人が対象?

自動車による交通事故被害者の全てが対象となりますが、前述したように、加害者の保険加入の状態などについては相談を受けることができない場合があります。

また、既に訴訟を起こしている場合、裁判が進行中の場合の案件についてもセンターの業務対象外となりますので、対象となる人は、保険会社の損害賠償金額に不満があるけれども、訴訟などに時間やお金をかけたくない人、現在、加害者との協議中で、二者間の協議がスムーズに進行できていない人になります。

また、後遺障害についての認定が進行中の場合、センターでは相談や和解あっせんなどの取り扱いができないため、既に後遺障害等級認定手続が終了しており、賠償金額が確定済みであることも利用条件の1つになります。

交通事故紛争処理センターに相談するメリット・デメリット

センターを利用することでどのようなメリットを受けることができるのでしょうか?また利用の際にデメリットが発生する可能性はあるのでしょうか?

交通事故紛争処理センターを利用するメリット

・基本的に無料
担当の弁護士による交通事故の相談や、加害者と被害者の二者間の和解協議のあっせんなどは基本的に無料で行ってもらえます。利用者が負担するのは通信費や交通費、証明書の発行代などの実費だけなので、費用に関してのメリットは大きいです。

・迅速な解決が期待できる
裁判によって解決する場合、訴訟を起こしてから1年以上の期間が必要になることが多いですが、交通事故紛争処理センターでは、申し立てをしてから概ね2~3ヵ月で解決するケースが多いです

・公正中立の立場での解決
担当弁護士は、被害者側でも加害者側でもなく、双方の言い分を聞いて、公正中立の立場で判断します。

交通事故紛争処理センターに相談するデメリット

・被害者の最高利益を計算してくれる場所ではなく双方の意見を聞いて調停する
交通事故紛争処理センターの担当弁護士は、公正中立な立場をとっています。そのため、申立人にとって、最高利益を計算して、賠償金額を算出するのではなく、双方の言い分を聞いてから、過去の判例を参考に賠償金額を導き出すので、賠償金額が申立人の満足いく金額ではない場合があります。

・ケースによっては利用できない
自動車以外の交通事故(歩行者と自転車、自転車同士)などの交通事故に関する相談や和解斡旋は取り扱いを行っていません。また、加害者が任意保険に加入していることが前提とされているので、加害者が保険未加入の場合、相談などは引き受けてもらえません。

・何度もセンターへ足を運ぶ必要がある。
被害者本人が申立人となって、センターを利用する場合、聞き取りや相談などのために、センターへ何度か足を運ぶ必要があります。センターは各都道府県にあるわけではなく、日本国内に11ヶ所設置されているため、センターがない都道府県にお住まいの方には負担が大きくなる可能性があります。

交通事故紛争処理センターを利用する場合の流れ

交通事故紛争処理センターを利用する際の流れは大きく4つのステップに分けることができます。

相談の予約

全国に11ヶ所のセンターが設置されておりますので、申立人の住所地、または交通事故が発生した地区の管轄のセンターへ電話で予約をします。

 

利用申込先 利用申込先
札幌支部 北海道
仙台支部 宮城県 青森県 岩手県 秋田県 山形県 福島県?
東京本部

さいたま支部

東京都 神奈川県 千葉県 山梨県 茨城県
埼玉県 群馬県 栃木県 長野県 新潟県 
名古屋支部

静岡支部

金沢相談室

愛知県 岐阜県 三重県
静岡県
石川県 富山県 福井県
大阪支部 大阪府 兵庫県 京都府 滋賀県 奈良県 和歌山県
広島支部 広島県 岡山県 山口県 鳥取県 島根県
高松支部 香川県 愛媛県 徳島県 高知県
福岡支部 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県

鹿児島県 沖縄県

※電話予約の受付は、祝祭日を除く月~金曜日の9時~17時までになります。

基本的には管轄のセンターでの予約になりますが、申立人と相手の間の双方が了承している場合は、居住地や事故発生地とは別のセンターでの予約が可能です。

法律相談

電話予約の際に、決定した日時に担当弁護士が相談を受けます。予約完了後に相談時に必要な書類など関係資料一覧が郵送されてきますので、資料を準備してセンターへ相談に向かいます。

担当の弁護士と相談を行い、次回以降の相談日や和解・あっせんの日取りを決定します。

和解・あっせん

通常、初回は申立人本人のみが出席し、担当弁護士が聞き取りを行います。2回目以降からは相手側の保険会社が出席し、和解斡旋を行う流れになります。

センターが提示した斡旋案に、申立人及び、加害者の双方が納得した場合は、和解が成立します。

審査会

担当弁護士による和解・斡旋に対して、申立人本人か、相手側のいずれかが不服を表明した場合は、上部の判断機関である審査会が双方の主張を聞き取り検討を行い、裁定案が出されます。

保険会社は原則的に、審査会の裁定案を尊重しなければならないため、相手側が結果に対して不服を申し立てることはできません、そのため裁定案に対して申立人本人が納得した場合、和解が成立し、加害者側の保険会社は裁定案に従わなければなりません。

裁定案に対して、申立人が納得できない場合は、裁定案を拒否して訴訟を起こすことが可能になります。

まとめ

交通事故紛争処理センターの利用は、弁護士費用などが基本的に無料になるため、経済的な負担はかなり小さくなります。

但し、本人が弁護士に依頼した場合は、弁護士は依頼人の最大利益を目標として動くのに対し、交通事故紛争処理の担当弁護士の基本は、中立公正な立場での解決を目指すことになるので、結果的に、和解案の賠償金額に不満が残る可能性があります。

また、どのくらいの賠償金額が正当なものなのか、自分では判断ができない人も多いでしょう。実際に、センターで相談する前に、どのくらいの賠償金額が受け取ることが可能なのか?などを、交通事故問題に強い弁護士事務所の無料相談などを利用して、予め自分で賠償金額の相場を知っておくことで、センターでの和解案が、自分にとって損なものなのかどうか判断することができると思います。

あまた法律事務所ではこれまで交通事故について様々な実績があり、適切な賠償が受けられるよう多くのお客様をサポートしてきました。

もし示談交渉の結果に不満がある場合には、示談書にサインをする前に、当事務所の無料相談を利用されることをおすすめします。

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